花嫁の余命
このところ、『余命1ヶ月の花嫁』って映画の宣伝をやたら目にする。さっきも目にした。そこでふと疑問が湧いた──ふつうの花嫁の余命はどれくらいなのか?
二十八歳最初の日に結婚し、八十六歳最後の日に死ぬ女性がいるとすると、彼女が花嫁になった日の余命は七〇八か月である。月で数えると意外と少ない。「いや、多すぎる」とツッコんでいる人は、なにかいろいろフクザツな事情を抱えてらっしゃるのであろう。
もっとも、これは“彼女が花嫁になった日の余命”であって、“花嫁としての余命”ではない。厳密に考えれば、“花嫁”と呼ばれるのは結婚式当日だけであり、慣用的に拡大解釈しても“結婚してまもないうち”が“花嫁としての余命”ということになる。そもそも花嫁は自分のことを花嫁などとは呼ばないものだから、花嫁が花嫁と呼ばれる期間は、ひとえに周囲の評価によるわけである。きわめて曖昧だ。まあ、おれの感覚では、せいぜい新婚旅行中くらいが花嫁なんじゃないかという気がするけれども。
とはいえ、結婚後百か月経とうが二百か月経とうが、「私は花嫁だ」といけしゃあしゃあと主張する“花嫁”がいた場合、自己申告を周囲の評価で否定するのもいかがなものかと思う。本人が“結婚してまもない”と感じているのであれば、“主観的には花嫁”であることを否定されるいわれはない。
ともあれ、結婚式に臨む花婿は、「こいつが八十六まで生きるとすると、余命何か月の花嫁ということになるだろう?」と計算してみるのも一興ではあるまいか。まあ、多くの場合、花婿のほうが先にくたばるわけだが……。
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