カテゴリー「DVDの紹介」の7件の記事

2008年6月 5日 (木)

『DVD&図解 見てわかるDNAのしくみ』(工藤光子・中村桂子/ブルーバックス 講談社)

 うう~む。こ、これはすごい。もっと早く買っておけばよかった。

 ブルーバックスはブルーバックスなんであるが、本のほうはDVDのダイジェストみたいなもので、まず、いきなりDVDを観るのがいいと思う。それから本に目を通せばいい。これで千六百八十円は安い。ミニサイズのDVDが三枚付いていて(これは“付録”ではない。こっちがメインである)、最初多少DVDが取り出しにくいものの、それだけDVDをがっちり保護する厚紙を綴じ込んだ作りで、ふつうの新書となんら変わることなく、そのまんま安心して本棚に収納できる。

 おれもいままでいろんな科学書や科学雑誌や科学番組で、DNAのいろんな図解やアニメやCGを観てきたが、これほどの躍動感に打たれたものは初めてだ。DVDを観て呆然としてから、本書の「メーキング編」を読んで合点がいった。タイトルに「図解」とあるが、これはそんじょそこらの“説明のための映像”ではない。むしろ、“映像による動く模型”とでも呼ぶのがふさわしい。著者(というか、製作者というか)らは、さまざまな論文を確認し、針金のモールや紙粘土と格闘しつつ、納得のゆく“動くDNA”の手応えを得るために、手で触れられるDNAや酵素の模型を構築しながら、このCG作品をものにしたのだ。「表現すると見えてくるものがあるということをこれまで以上に強く確信」したという。さもありなん。これは、『超時空要塞マクロス』『マクロスF』などでおなじみのメカニックデザイナー&監督・河森正治の方法論そのままである。河森は、絵ならなんでもできてしまうからといって、どう見ても動きそうにない、飛びそうにないメカをデザインすることを潔しとしない。手を動かして、手で触れられる模型を作りながら、映像のためのメカをデザインしてゆく。そうした作業の中から、動きに説得力と躍動感がある、あのバルキリーなどが生み出されたわけである。「SFは絵だねえ」という野田昌宏宇宙大元帥のお言葉もあるが、二十一世紀的には、もはや「SFは模型だねえ」というのが妥当なのかもしれない。最終的なアウトプットが絵や文章の作品であっても、実際に模型を作ったうえで描く・書くくらいのこだわりが、圧倒的な説得力を生むのかもしれない。

 腰巻で福岡伸一も絶賛しているが、いわゆる“岡崎フラグメント”の生成の繰り返しによってラギング鎖側のDNAが複製されてゆくようすなど、いままで観たことのないダイナミックな映像である。ああ、こんなのが高校生のころにあったなら、おれは道を踏み誤って(あるいは、道を踏み誤り損ねて)いたかもしれないなあ。

 先日、郵便受けにどこかの教会の信者勧誘用小冊子が入っていた。おれを知る人はご存じのように、おれは宗教心のカケラもない人間であるが、どんな手を使っておるのかなあと興味本位に読んでみると、もはや使い古された“眼のような精妙な器官が進化などでできたはずがない。誰かが設計したのだ。ダーウィンだって困っていた”という例の論を中心に話を展開していたので、「けっ」と苦笑してゴミ箱に放り込んだ。えーと、この進化論への反論(?)そのものをご存じない方は、『イリーガル・エイリアン』(ロバート・J・ソウヤー)でもお読みください。

 きっと、この教会の人がこのDNAのDVDを観たら、「ほら、こんな精妙な仕組みがひとりでにできあがったはずがない。神秘を感じるでしょう?」などと勧誘してくるにちがいないが、残念でした、おれはこういうものに“神秘”などカケラも感じない。むしろ、“神秘”などというわけのわからないものが関与していないことにこそ、“驚異”を感じる。妙な言いかたかもしれないが、そこに“謎”はあっても“神秘”など介入する余地もないほどの“ミもフタもない精妙さ”があることに、一種の神秘を感じないでもないけどな。もっとも、おれはそれを“神秘”などとは呼ばないが……。そう、それは、ただただ純粋な“驚異”であり、“感動”であるだけである。

 こんなにお手軽ですごいものが出ているのだから、高校・大学の先生方は、ぜひ活用してほしいね。授業や講義で使えなくても、せめて推薦図書くらいには入れておいてほしい。何十人か何百人かに一人の学生が、“生命の驚異”(“神秘”じゃないよ、しつこいけど)に打たれて道を踏み外して(あるいは、道を見つけて)くれるなら、千六百八十円など安いものだろう。

 こりゃ、現代のSFファンは必読(ちゅうか、必見)の作品でしょう。やっぱり映像のインパクトはすごいわ。わかった気になっていただけのことを呆然と再発見し、「おれは浅はかだった」と打ちひしがれちゃいましたね。



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2008年1月 7日 (月)

“梶芽衣子さそり”を揃える

 ふだんあんまりリアルワールドのビデオ屋とかには行かないもんだから知らなかったのだが、東映ビデオが「期間限定プライスオフ!」で、厳選30タイトルを先月から廉価で出しているとは! 嬉しいね、東映、やってくれるじゃん! 梶芽衣子の《女囚さそり》シリーズ四本が、アマゾンで一本二千三百三十一円って、うそー! 従来版の半額くらいではないか。正月はなぜか《女囚さそり》が観たくなるおれのこと、これは買いだ、いまこそ買いだとポチっとやっちゃいましたね。梶さそりが四本で一万円を切るとは、とんだお年玉だ。揃えちゃいましたよ。これ以上安くなることは、ちょっとないんじゃないかな。梶芽衣子のさそりがコンビニで千円そこそこで並べられているなんて光景は、ちょっと想像しにくい。いやあ、これでいつでも梶さそりが観られるわい。タランティーノに教えてやりたいね、向こうでいくらで売ってるかは知らんが。

 《女囚さそり》シリーズ以外には、《昭和残侠伝》シリーズ・9作、《緋牡丹博徒》シリーズ・8作、『柳生一族の陰謀』『大菩薩峠』ほか時代劇・9作がキャンペーン対象とのこと。いやあ、なにはともあれ、梶さそりを全部手元に置けたのは嬉しいね。

 八代目さそりは、水野美紀が演るってことはずいぶん前から話題になってるが、これも期待したいねー。いやあ、おれ、水野美紀は好きだからね。彼女のクールな美貌と引き締まった肉体とアクションは端倪すべからざるものがある。水野さそりのDVDが出たら買っちゃうだろうね、たぶん。なんでこんなに《女囚さそり》が好きなのか、自分でもよくわからんのだが、とにかくいいもんはいい!


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2007年10月10日 (水)

『しょこたん☆かばー×2 ~アニソンに愛を込めて!!~(DVD付)』(中川翔子/ソニーミュージックエンタテインメント)

 第一弾にいたく感心したので、おじさんはやっぱり買ってしまいましたよ。

 さーて、第二弾は、「1/2」(『るろうに剣心』)、「輪舞 -REVOLUTION」(『少女革命ウテナ』)、「Catch You Catch Me」(『カードキャプターさくら』)、「テレポーテーション-恋の未確認」(『エスパー魔美』)、「ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~」(『機動戦士ガンダムF91』)の五本でお送りしまちゅ。第一弾は比較的メジャーなアニソンで勝負したこともあってか、第二弾はえらくマニアックなラインナップである。いーじゃん、いーじゃん、すげーじゃん! 残念ながら、おれが投票した(したんだよ)「わぴこ元気予報!」(『きんぎょ注意報!』)は入らなかったけどな。第三弾に期待しよう。

 「1/2」は、はっきり言って、川本真琴より歌はうまい。おれは川本真琴も好きなんだが、川本の場合は、あのワン・アンド・オンリーの個性と特異な声で魅了しているのであって、「どっちが歌がうまいか」と問われれば、おれはしょこたんに軍配を上げる。「どっちが好きか」と問われれば、川本版「1/2」のほうが好きだけどね。いやしかし、歌手としてのしょこたんをおれは充分評価しているつもりだったが、まだ甘く見ていたようだ。すまん、しょこたん。

  「Catch You Catch Me」なんかも、どう聴いてもめちゃくちゃ難しい曲なのに、日向めぐみに迫る歌唱力を発揮している。むしろ、広瀬香美テイストをうまく活かしているのはしょこたんのほうかもしれない。 「ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~」も森口博子よりうまい……なんてことはさすがにないが、かなりいい線は行っていると思う。

 しょこたん、おそるべし。このコは、単なるオタクタレントでは終わらないだろう。ギガント感嘆。



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2007年5月12日 (土)

『しょこたん☆かばー ~アニソンに恋をして。~』(中川翔子/ソニーミュージックエンタテインメント)

 先日注文したのが届いたお(^ω^) ギザ、ウレシス(←だからおっさん、お前、いくつだよ?)。

 それはともかく、じっくり聴いてみると、これはそのときかぎりの“企画モノ”の域を超えていて、はなはだ感心した。長きにわたって愛聴するに足る出来栄えである。本人が好きでやってるほど強いことはない。考えてもみたまえ(急にエラそう)。「ロマンティックあげるよ」(『ドラゴンボール』)、「乙女のポリシー」(『美少女戦士セーラームーンR』)、「BIN・KANルージュ」(『魔法の天使クリィミーマミ』)、「残酷な天使のテーゼ」(『新世紀エヴァンゲリオン』)、「青春」(『タッチ』)といったラインナップを、中川翔子はそれこそ子供のころから何百回、何千回と聴き込み唄い込んでいるにちがいなく、自分の持ち歌よりもはるかに時間をかけて磨き上げてきているはずなのである。カバーとしての完成度が高いのは当然のことだ。

 中川翔子の歌声は、一、二秒聴けば誰だかわかるといった個性的なものではない。が、彼女のアニソンは、けっして没個性的ではない。強いて言えば、“脱個性”的なのだった。器用に声色を使い分けて原曲のイメージを損なわないようにしているのだが、単なる“ものまね芸”などではない。「どうだ、似てるだろう」とばかりに、似せることに意識を置いているのではなく、原曲への愛ゆえに巧まずして似てしまっているという感じが伝わってきて好もしい。その“愛しかた”にこそ、ほかの誰でもない中川翔子の個性が紛れもなく立ち上がっているのだ。企画モノから駒が出たとでも言おうか、愛のある企画モノの大成功例ですな。

 そのむかし、近所にいる“ふつうのコ”をふつうでない状況に巻き込んでアイドル化していた時代があった。いまは、“ふつうじゃないコ”がごくふつうに好きなものを愛でているさまがアイドル化されるのだろう。そんな中川翔子は、いわば“アルファ・プロシューマー・タレント”とでも言うべき存在として、いよいよ相転移にさしかかった現代の消費社会を体現している。まさに、こういう企画で輝くために生まれてきたような才能だ。この、遅れてきた八○年代アイドルは、遅れてきたからこそ、時代に足を取られることなくその風に乗り、強かな無垢を武器に、ごくふつうに羽ばたいている。不思議なコだ。少女よ、神話になれ!

 アニソンがとてもアニソンらしかった時代の宝石を、古いオルゴールから取り出してケータイストラップにしてしまう、ふつうじゃないコのふつうさが眩しい一枚。「ロマンティックあげるよ」のPVメイキングを収めたDVD付き。

 そうそう、しょこたん、第二弾をやるんなら、おじさんは「わぴこ元気予報!」(『きんぎょ注意報!』)希望!



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2007年5月 9日 (水)

好きこそものの上手なれ、親の因果が子に報い……

中川翔子が「ロマンティックあげるよ」 - Yahoo!動画でムービー配信開始 (マイコミジャーナル)
http://journal.mycom.co.jp/news/2007/05/08/011/index.html

ヤフーは、Yahoo!動画にて"しょこたん"こと中川翔子がアニメ『ドラゴンボール』のエンディングテーマ「ロマンティックあげるよ」を歌う動画の配信を開始した。ビデオクリップ撮影時のオフショットも視聴することができるという。配信期間は6月1日まで。
Yahoo!動画では、後世に残したい楽曲を中川翔子がカバーする新企画「しょこたん☆かばー」を開始。今回は「アニメ編」として「ロマンティックあげるよ」のフル配信を決定した。

 いやあ、しょこたん、カワユスなー。カワユスよー。

 ……すまん、おれ、中川勝彦と同じ年の生まれだけどな。

 こんな娘がホシスなー。ホシスよー。もっとも、こんなギザカワイイ娘がおったら、絶対、門限は七時だ。七時だと言ったら七時だ。親子で徹夜アニソンカラオケをしてボックスを五時に追い出されても、充分門限には間に合うだろう。

 で、思わず注文しちゃったよ。うわあ、いい歳をしてなんだおまえはとおのれを罵りながらも、ポチっとやっちゃいましたなー。『しょこたん☆かばー ~アニソンに恋をして。~』。アマゾンにはなぜか全曲書いてないんだが、「ロマンティックあげるよ」「乙女のポリシー」「BIN・KANルージュ」「残酷な天使のテーゼ」「青春」の五曲入りミニアルバム。「残酷な天使のテーゼ」は常識として、「乙女のポリシー」を入れるところが、いい選曲だなあ。あれは名曲だよね。

 なんか、このミニアルバム自体、おおかた『溜池Now』のアニソン企画で水を得た魚のように活きいきとアニソンを唄う中川翔子を見たスタッフが、「いーじゃんいーじゃんすげーじゃん」みたいなノリで企画したんじゃなかろうかと想像するのだがどうか。もしそうだとすると、USENとしては、トンビに油揚げをさらわれたような感じじゃないのかなあ?

 そうなのよ、存外に素直で伸びのびとした歌唱で、当然のことながら、プライベートで相当アニソンを唄い込んでいるんだろう、充分な水準なのだ。

 CD+DVDが届くのが楽しみだなあ。ああ、今年の秋には、おれは四捨五入して五○になっちゃうんだけどな。ま、三つ子の魂ということでよろしく。ええもんはええわい。なあ、そこのおっちゃん、おばちゃん?



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2006年11月26日 (日)

『BLOOD+ COMPLETE BEST』(アニプレックス)

 『BLOOD+』というアニメをとりあえず横に置いておくとしてもだ、盛んにテレビCMでやってるとおり、高橋瞳元ちとせHYDE中島美嘉UVERworldアンジェラ・アキジンK(ケイ) という錚々たる才能のコンピレーションがこの値段だと考えれば、たいへんお値打ち感のある買いものである。『BLOOD+』なんて知らない人でも買いでしょ。ハードウェアのほうではいろいろナニなアレで斜陽感が拭えないソニーだが、なあに、いまの世の中、コンテンツを握ってるやつはどう転んでも強いのである。もう、ANIPLEX の思うツボ、こうやって喜んで乗せられて買ってしまうやつがここにいる。事実、これだけ豪華なものをこの価格で出せる企業グループはそうそうないだろう。オープニングやエンディングの曲が次々変わってゆくものだから、最近の傾向からすると、アニメの放映が終わったあとにこういうコンピレーションが出るだろうなと、ぼんやり予測してはいたけどね。これはこれで、もはや現代のマーケティングとしては確立されたやりかたであって、あざといとも思わなくなったよ、おれは。

 で、『BLOOD+』なんだが、個人的にはたいへん好きである。やっぱり吸血鬼はいい。最初のころは、あまりにもとろとろと進む話に首を傾げたが、完結してみると、結局おれはこの作品が大好きだったのだということがよくわかった。おれが吸血鬼を好むのは、たぶん、日陰者が背負う悲哀みたいなものに美を見い出すからではないかと思うのだが、『BLOOD+』では、日陰者の吸血鬼ですらない人工の吸血鬼「シフ」という連中が出てきて、こいつらがじつに哀しくていいのだよなあ。日陰者のパチもんとして生まれてきて、運命と闘い、運命を受け容れるいいやつらなんて、じつにカッコいいじゃあありませんか。いやまあ、御託を並べてはいるが、結局のところは、日本刀振りまわす少女が好きだということに尽きて、オリジナルのコンセプトにずっとハマっているだけなのかもしれないのだけれどね。

 さすが“土6”アニメだけあって、オープニングやエンディングにやたら気合いが入っているなあとは思っていたんだが、テーマソングのコンピレーションCDに、クレジット抜きの映像と音楽が全部こうしておまけDVDで付いてくるとはね。これは安い。高いけど安い。オープニングとエンディングは、それぞれ四つずつあり、二番めと三番めのオープニングは、単独の映像作品としても十二分に見応えがあって、アニメをまったく知らない人でも楽しめると思う。おれは、ちょっとアール・ヌーヴォーっぽいテイストの二番めのオープニングがとくに好きだ。

 なんだかんだ言って、振り返ってみると、この作品はひとえに元ちとせに救われていると思いますなあ。ああいう終わらせかたをしたのもとてもよくわかるし、最後の最後は、やっぱり元ちとせの「語り継ぐこと」で締めたのも、無理のないところでしょう。これからほぼ永遠の時を“断続的”に生きてゆくであろう音無小夜にとっては、この『BLOOD+』の時代も、その生のほんの断片にすぎないわけだけれども、ほんの断片だからこそ、それはまたとてもいとおしく、せつないのであるのよなあ。

 このあと、やがて目覚める小夜をめぐる近未来SFとして(?)、『BLOOD++』だか『BLOOD#』だかが語られることになるかどうかはわからないが、おれはまたどこかで小夜が日本刀振りまわすとこを観たいね。



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2006年5月14日 (日)

『ソイレント・グリーン 特別版』(監督:リチャード・フライシャー/出演:チャールトン・ヘストン、エドワード・G・ロビンソン/ワーナー・ホーム・ビデオ)

 おれたち以上の年代のSFファン・映画ファンにとっては、ほとんど基礎教養となっている有名な古典だから、人と話しているときなど、ついついネタばらしという意識すらなく話題にしたりするのだが(「ロミオとジュリエットって最後は死んじゃうんだって」をネタばらしとは言わんでしょう?)、三十三年前の作品ともなると、古すぎて知らない若い人も増えているだろうと思うので、やっぱりこういう場所ではネタばらしをしないでおこう。一応、ミステリ仕立ての映画だから、観たことがない人に気を遣うのだ。『アクロイド殺し』でも『オリエント急行殺人事件』でも、不特定多数向けの媒体ではネタばらししちゃいかんのかなあと悩んじゃうことありますよね。万人が共有する知識などというものがなくなってきた時代において、どのくらい人口に膾炙すればネタばらししてもいいものなのだろうねえ? 「ねえ、あの赤穂浪士の討ち入りって、どうなるのかなあー。“成功”すると思う?」って話を聞いてからというもの、ほんとに悩ましく思っている。
 
 それはともかく、こいつを観るのは中学一、二年のとき以来だけど、いま観てもなかなか面白いね。この作品が提起している問題(人口問題と倫理的問題)は、製作当時からまったく変わらずわれわれの前に存在するからだ。人口問題などは、むしろずっと深刻になっている。少年時代にテレビで観て記憶に残らなかった細かいところが、いま大人の眼で観るとよくわかるから面白いということもあるし、字幕なしで観ても差し支えない程度には英語がわかるようになっているからということもある。単に懐かしいというのも、もちろんある。

 ハリイ・ハリスンの『人間がいっぱい』がこの映画の原作なのだが、知ってる人は知ってるように、相当ちがう話である。人口問題に正面から切り込んだ姿勢やベースになる設定は共通している。まあ、すでに古本でしか手に入らないし、よほどのSFファンであれば読んでみても損はないという程度の作品。

 映画としても格別出来がいいわけではない。でも、おれは個人的には思い入れがあるのである。忘れもしない、これはおれが生まれて初めて涙を流した映画なのだ。観た方は、「あれのどこで泣くんだ?」とお思いになるかもしれないが、泣いちゃったものはしようがない。ほれ、あの安楽死センターで『田園』が流れるところですよ。失われた過去の地球の美しい自然の光景を観ながら死にゆくエドワード・G・ロビンソンと、それを前に涙するチャールトン・ヘストンの名演に打たれたのだ。このDVDに「音声特典」として付いているリチャード・フライシャー監督の解説によると、このシーンにはチャールトン・ヘストン自身がたいへん感動しており、また、エドワード・G・ロビンソンの最後の映画出演(なんと、百一本め!)であるということもあって、ヘストンは“ほんとうの涙”を流していたのだそうだ。物語の中で彼が演じる主人公の、哀しみとないまぜになった感動と、去りゆく老俳優を見送る現実の彼の感慨とが重なり合った涙であったわけである。そりゃ知らなかったなあ。こういうことを知れただけでも、いまさらの古典を買って観た甲斐はあったというものだ。

 「売切れ御免! スーパー・ハリウッド・プライス 1枚¥980(税込)」などという帯が付いている「特別版」なので、廉価版の例に漏れず、なんの解説冊子も付いていない、ディスクだけのシンプルな商品だが、映像特典として「メイキング(約10分)」「エドワード・G・ロビンソン101作 記念映像(約5分)」「オリジナル劇場予告編」が、音声特典としては「監督リチャード・フライシャー他による音声解説」(“他”ってのは、ヒロイン格で出演したリー・テイラー・ヤング)が付いている。これで九百八十円なら充分すぎるほどだ。

 ちなみに、廉価版でないバージョンもまだ並行して売られているわけだが、「特別版」の三倍以上の価格なんだから、これはまあコレクター向けでしょうね。



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