尖閣映像を漏らした主任航海士は、正しく懲戒免職にしてあげなくてはいけない
▼ビデオ流出 「逮捕しないで」海保に電話やメール相次ぐ (asahi.com)
http://www.asahi.com/national/update/1110/OSK201011100082.html
ビデオ映像の流出問題をめぐり、第5管区海上保安本部には10日、午後2時までに約300件の電話やメールが届いた。神戸海上保安部にも同日午後7時までに約120件の電話と約240通のメールがあったという。
5管と神戸海保の関係者によると、「(流出への関与を告白した海上保安官は)間違ったことはしていない」「逮捕はしないでほしい」「(流出行為の)犯人捜しをやめてほしい」といった保安官を激励する内容がほとんどで、批判や抗議は少ないという。
おれもいままでこのブログで、自分のことを棚にあげてずいぶんと世の嘆かわしきことどもについてぼやいてきたが、これはもう、近来稀に見る嘆かわしさである。というか、このところ起きたどんな事件よりも、「日本という国は、ほんとうにやばいのではないか」と背筋が寒くなった報道である。
「間違ったことはしていない」――って、しとるわい! 海上保安官は国家公務員じゃ! 職務上知り得た秘密を勝手に公開していいはずがなかろう。明々白々たる国家公務員法違反だ。それは、阿呆な政府が最初から公開すべきものを秘密にしたということとは、まったく関係がない大罪である。これがどれくらい度し難い犯罪かというと、国民が選挙で選んだ人々よりも、たかが試験に受かっただけの公僕風情のほうが、より本質的に“正義”を行う能力があるし、そうしてもよいのだと勘ちがいしている点において、民主主義をその根幹から否定する大罪である。
「逮捕はしないでほしい」――って、アホか、犯罪者なのだから、逮捕されてもしかたがない。ましてや当該の犯罪者は、国家公務員の職務上の権限で知り得た、ほかのどんな秘密をさらに公開するかわかったものではない状況である。それはあなたの個人情報であるかもしれないし、国益を著しく損じる防衛上の機密かもしれん。“おれの正義”がなにものにも優先するという思想の持ち主であることは容易に推測されるからには、一刻も早く身柄を拘束すべきだ。
「犯人捜しをやめてほしい」――めでたいやつだ。将来、おれがあんたの大事な人を殺したり、財産を奪ったりしたときにも、同じように警察に嘆願してもらいたいものである。
そりゃあ、国家公務員が、そのときどきの阿呆な政府のやることに不満を抱くこともあろう。だが、それは国家公務員という職業に当然伴なう不満である。それが厭なら、国家公務員になどならねばいいだけの話だ。国家公務員として禄を食み、その名誉に浴して生きてきたのであれば、その不満を抱えつつも、公僕としてあるべき行動を取るのが当然のことである。
おれがもし、なにかのまちがいで国家公務員であって、今回のいわゆる“尖閣映像”を入手できる立場にあったとしたら、おれはきっと以下のように行動する。
(1)実名と職業・立場をあきらかにし YouTube に投稿する。
(2)投稿した旨を Twitter でツイートする。
(3)映像の情報が充分にゆきわたり、まず隠蔽が不可能な状態になったことを確認してから、職場への辞表を投函する。
(4)最寄の警察署に出頭し自首、自分のしたことをつぶさに包み隠さず報告し、捜査の手間を省く。
(5)予定どおり辞表は受理されず、自分が懲戒免職になることを従容として受け止め、懲戒免職してくれたことに「ありがとうございました」と頭を下げる。
これが、おのれの信ずる義によって法を冒そうとする国家公務員の正しい行動だろう。国家公務員の身分であることで得られるおいしいとこ取りをしつつ、正義の味方ごっこをしようとするのは、ただ意地汚いだけであり、義士の行動ではない。国家公務員が義憤によってその身分にあるまじきことを行なおうとする場合は、叛逆者、国賊のそしりをあまんじて、否、すすんで受けてこそ、その行動には価値があると言えよう。
今回情報を漏洩した主任航海士はきちんと逮捕し、懲戒免職にすべきである。こうした思想の持ち主を、二度と国家公務員にしてはならない。かえすがえすも残念なのは、この主任航海士が、みずからの職を賭して最初から堂々と実名で犯罪を行わなかったことである。おれはやはり、田母神俊雄元航空幕僚長を批判したのとまったく同じ考えかたで、この主任航海士を批判せざるを得ない――「しかし、田母神氏もあんまり褒められたもんじゃない。そんなふうに思いつつ面従腹背を続け空自のトップにまで昇りつめるというのは、サムライとして潔くないのではないか? 退職金が欲しかったからだとしか思われない。あなたがほんとうのサムライならば、とっとと自衛隊を辞めて、そのような言論活動を以て、世間に自分の思想をぶつけるのが本筋であったはずだ。退職ギリギリになって、鬱憤を晴らすかのように開き直るのは、サムライらしくない。あんたも卑しい」
でもまあ、いつかどこかで、罪を償って社会復帰したこの元主任航海士に会うようなことがあれば、おれはひとこと言ってやりたいな――「あのときは、よくやってくれた」
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