斑猫との再会
こいつはいったいなにか、おわかりになるだろうか? いまの若い人なら、実物を見たことがある人はもはや少数派だろう。知らない人には大きさすら見当もつかないかもしれない。およそ二、三センチの小さな昆虫だ。
「斑猫」である。なに、読めませんか? いかんなあ、筒井康隆はちゃんと読んでおかなくちゃ。「ハンミョウ」だ。おれも今日、山でひさびさに見たのである。
ふと、子供のころに住んでいたあたりに無性に行きたくなり(と言っても、地下鉄で数駅だが)、ただただそのあたりを散歩して、四十年以上の時の流れを感じてきた。むかしハンミョウがたくさんいた山道をおれは知っており、そのそばの寺に行ってみると、なんと、こいつがいたのだ。人間、五十も近くなると、「むかし、このへんにはこんな虫がいたなあ」などと懐かしく思い出す場所は、たいてい見る影もなく様変わりしているものだが、またこのへんでハンミョウにめぐりあえるとは、うれしいかぎりだ。
できるだけ寄って撮りたいのはやまやまなんだが、ハンミョウというやつは、ものすごく振動に敏感である。人間の足音を感じるや否や、ふわっと飛んで、一、二メートル先に、ふわっと止まる。そのさまから、「ミチオシエ」という別名があるくらいだ。
だものだから、愛機 RICOH R10 必殺の1cmマクロも、ハンミョウ相手では役に立たない。一センチまで迫るどころか、息を殺してじわじわ間を詰めても、一メートルくらいまで寄るのが精一杯だ。
汗だくになりながら、しばしハンミョウと格闘。振動を感知されないよう、一メートル前後から望遠で極力寄る。
前翅がじつに美しい。ピンぼけしているかのように見えるんだが、これは、捕まえて手の中で間近で見たとしても、このように見える。ゼリーで覆われているかのように奥行きのある不思議な感じだ。
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コメント
奇麗ですね。仮面ライダーアマゾンの「ハンミョウ獣人」を思い出しました。
投稿: 90125 | 2011年8月17日 (水) 21時17分
>90125さん
こんなカード( http://blog-imgs-27.fc2.com/k/o/s/kossabp5/SN340346.jpg )をいま持ってたら、けっこういい値がつくかも。それにしても、アマゾンの怪人は虫でも獣人なんすよねー。
投稿: 冬樹蛉 | 2011年8月17日 (水) 21時23分