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2011年7月 5日 (火)

なにを「ご理解いただきたい」のか?

 五十年近くこの国で生きてきておれが学んだことのひとつに、「理解」という言葉を主にどのように用いるかで、日本人はおおまかに二種類に分類できるということがある。

 たとえば、「ご理解いただきたい」と口にする場合、日本人の多数派は、「私はこんなにがんばっていて、私にもいろいろ事情があるのだから、事実関係は二の次にして、私の立場に身を置き、あたかも私になったかのように、私の気持ちをわかって私を許してほしい」という意味で言っている。とくに日本の政治家は、十中八九、こういう意味で「理解」を使う。

 だが、日本人の少数派(おれ自身はこちらに属するようだ)が「ご理解いただきたい」と言う場合、「2足す2は4であり、三角形の内角の和は180度であり、エネルギーは質量と光速の自乗との積で表され、虚数単位と円周率の積を指数としネイピア数を底とした冪乗に1を足すと0に等しくなる云々……という事実を把握してほしい」という意味である。

 この二種類の人々はいずれも、「理解」という言葉を自分たちが使っている意味以外で使う人種がいるなどとは夢にも思っていないのが常である。だから、「ここはぜひご理解いただきたい」「だって、2足す2は4じゃないですか」などといった不毛な会話(?)がえんえんと繰り広げられたりするのである。これはもう、ほとんど異星人同士の会話であって、互いに理解(?)し合えることなどまずない。おれは、この根本的な世界把握の様式の相違が、日本人が本来持つ能力の発揮を、大いに妨げていると思っている。

 おれ個人は、「私の気持ちをわかってほしい」などという意味で「理解」という言葉を使うのは、努めて廃していったほうがよいと思う。それは「理解」などではなく、むしろ「情解」とでも呼ぶほうが適当なのではあるまいか? ほかにもっといい言葉があるかもしれないけど。

 「日本人同士なのだから日本語が通じるのはあたりまえだ」といった思い込みをまず疑おう。「“理解”という言葉は、こういう意味で使おう」という共通の了解にまず立脚しよう。子供たちには、「それは君の気持ちや希望や推測なのか、それとも検証された事実なのか」をきちんと分けて認識するように叩き込もう。

 「理解」すら、みなが同じようには理解していないのだ。


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コメント

多くの国民にとっての不利益を、政治家自身やそのごく近い仲間達しか理解できないような御託でもって理屈付けされて「ご理解をいただきたい」などど偉そうに言われても、到底理解はできませんよね。
で、言った本人はそれで“国民の了解を得た”と決め付けてしまうところが、また性質の悪いところです。

投稿: closevia | 2011年7月 5日 (火) 21時23分

デジタル大辞泉より
り‐かい【理解】
1 物事の道理や筋道が正しくわかること。意味・内容をのみこむこと。「―が早い」
2 他人の気持ちや立場を察すること。「彼の苦境を―する」
3 「了解2」に同じ。

「私の気持ちをわかってほしい」と言う意味で「理解」という言葉を使うのは間違っていません。「理解」に限らず言葉は文脈、状況によって意味が変わります。べつに日本語に限ったことではありません。新手の言葉狩りでしょうか。

投稿: にゃん | 2011年7月 6日 (水) 13時37分

>closeviaさん

 まったく昨今の政治家は言葉が軽すぎて愕然とします。


>にゃんさん
>「私の気持ちをわかってほしい」と言う意味で「理解」という言葉を使うのは間違っていません

 ええ、べつにまちがってはいませんよ。だからそう言っているじゃないですか。まちがっているのではなくて、私はその用法が単に“嫌い”なのです。今後、日本人のためには、撲滅していったほうがよい、醜い用法だと思っています。「新手の言葉狩り」などというこそこそしたものではなく、正々堂々と真正面から、「この用法は日本語から滅ぼそう」と提案しているのです。

 それから、あなたのような読解力に不自由な人にしばしば“辞書バカ”というのがいるのですが、辞書にはべつに「正しい」ことが載っているわけではありません。「実際、そのように使われている」ことが載っているだけです。たとえば、「理解する」という言葉を、「屁をこいて空を飛ぶ」という意味で使う人が多くなれば、辞書には「理解」の意味として、「屁をこいて空を飛ぶこと」と早晩載ります。ただ、それだけのことで、正しいとかまちがっているとかいう話ではないのです。

 あ、あなたがもし外国人だった場合はごめんなさい。一応、私はブログを日本語で書いているからには、日本語の平均的な読解力をお持ちの方々のみを相手にしています。

投稿: 冬樹蛉 | 2011年7月 7日 (木) 01時55分

日本に住んでいる以上「私の気持ちをわかってほしい」という意味で理解を求められる場合は多々ありますが、そういう事を言う人は大概において容認できない内容の話を投げかけて来る事が多いように感じます。
そしてその内容を否定する意味でわざと理解出来ないと返すと、まるでこちらが理解力の足りない馬鹿であるかのように殊更詳細に私事を話し始めたりして辟易とするという経験もままあることだと思います。

このような使い方の撲滅を目指すのであれば「(あなたの気持ちは)理解できるが容認はできない」などのように言葉を重ねて理解することと容認することは別である事を相手に分からせるしか無んじゃないかと思います。

「ご理解をいただきたい」とか言う政治家の謝罪会見なんかにもこう言いたいですよね。
「言いたいことはよぉーく理解したが、てめえは許さねぇ」って。

投稿: 超時空漫才 | 2011年7月 7日 (木) 05時25分

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