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2011年3月20日 (日)

君たちにはまことに申しわけない

 二、三日前、近所を歩いていて、キャピキャピと談笑しながら歩いている女子中学生らしき四、五人とすれちがったとき、自分でもわけのわからない激しい感情が突然襲ってきて、思わず嗚咽を漏らしそうになってびっくりした。なんか、この子たちが不憫だ、この子たちに申しわけないという気持ちが突然襲ってきたように思う。

 おれ個人はずっと原発には反対だが、原発をやめさせるためになにができたわけでもない。いったいこの廃棄物をどうするつもりだ、いつか事故が起こったらこの小さな島国はどうなるのだ、と心の隅で思いつつ、平気で電気を大量に使いまくり、“原発中毒”にさせられた生活から脱却することができなかった。田代まさしや清水健太郎や酒井法子をエラそうに責められん。おれたちは、原発中毒なんだ。

 まあ、そうだな、いま三十歳以上くらいの日本人は、充分に原発中毒社会を楽しんできたろう。賛成派だろうが反対派だろうが、そうだろう。反対派っつっても、電気を遮断して手回し発電機で暮らしていたわけじゃないだろう?

 だからもう、おれたち年寄りはいいんだよ。おれなんざ、さんざん食品添加物を食ってきて、半年前にやめたけど、二十四年間も煙草を吸ってきたわけで、いまさらマイクロシーベルト単位の少々の放射能なんぞを怖れるのは滑稽というものだ。どのみち、原発事故があろうがなかろうが、日本人の二人に一人は癌になり、三人に一人は癌で死ぬのだ。その率が少々高くなるだけさ。おれたちはいいよ。

 だけど、あのキャピキャピ女子中学生たちには、ほんとうにすまない。君たちには、いまの社会に責任はない。選挙権すらないのだ。原発中毒の怠慢で無能なおれたちが、いままでどうしようもできなかったんだ。やがて君たちを襲うであろう悪性腫瘍やら白血病やらなにやらを、できることなら老い先短い無能なおれたちが引き受けてやりたいと思うんだが、放射性物質はむしろ若い君たちのほうを効果的に襲う。原発中毒の快感を十二分に楽しんできた爺ぃ・婆ぁだけが病気になるのなら、どんなにいいだろう。

 こんな日本を君らに手渡すのはまことに申しわけないが、少なくともおれたちの過ちは繰り返さないでくれ。すまん。ほんとうに、すまん。君らの子供たちに、君らがこんな負い目を感じなくてすむような日本を作ってほしいと、恥ずかしながら思う。


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コメント

まあ、我々世代は、米ソ英仏中の大気圏核実験の放射能雨の中、すくすく育ってオヤジ&おばさんになってるわけありまして。

何とかベクレルで心労がかさんで早死にするのは馬鹿らしいじゃないですか。

心痛は若い世代に感染しがち。

鷹揚にいきたいものです

投稿: Cru | 2011年3月24日 (木) 00時22分

>Cru さん

 まあね。人間、なんにでも慣れるものだということだけは、五十年近く生きてきて学習してますから、そのうち慣れるんでしょうけどね。

 でもやっぱり、子供たちには、ほんとうに申しわけない。

投稿: 冬樹蛉 | 2011年4月24日 (日) 05時43分

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