パワースポットとはなにか?
最近なにやら“パワースポット”とやらが流行っているようだ。このブログをよく読んでくださる方々はご存じのように、おれは霊的ななんたらみたいなものは一切信じないから、そういう意味でのパワースポットなんてあるもんかと思っているけれども、発生確率が低いできごとが、ほかの場所よりも高い確率で起こる地点というのは、たしかにあるはずだ。いろいろな好条件(悪条件)が運良く(運悪く)重なっている場所では、むしろ、なんの変哲もないそこいらの地点とはちがったことどもが高い確率で起きるにちがいない。もっとも、そういうスポットにただただ行ったからといって、パワーがもらえるなどとはまったく考えていない。
もしパワースポットなるものになんらかの力があるとしたら、その力はそのスポットの絶対座標によってもたらされるものではあり得ない。これは物理的事実だ。この宇宙に絶対座標なんてものはないのであって、いくら「将門の井戸」がすごいと言っても、地球も太陽系もこの銀河系もなにもかもが、いまとまったくちがう姿になってしまった状態で、「このポイントは、むかーしむかし将門の井戸があったパワースポットでございます」などとは、どんな超バスガイドにも言いようがない。
つまり、パワースポットなるものは、相対的にしか定義できないスポットである。だから、パワースポットにパワーがあるとすれば、そのパワーは“そのスポット以外のすべての存在によってもたらされる力”であると言える。まあ、仏教に言う“縁起”みたいな考えかただ。
となると、あなたの隣家のネコが子を産んだり、アマゾンでチョウが羽ばたいたりするだけで、それまでパワースポットであった場所がたちまちパワーを失うことも充分にあり得るということになる。つまり、パワースポットというのは、時々刻々とあちこちで生まれ、あちこちで消え去っているのだ。ひょっとしたら、あなたの部屋が、いま、とてつもないパワースポットである可能性だってあるのだ。次の瞬間には、なんのパワーもない部屋になっていることだろうが……。
もっとも、AR(Augmented Reality)技術を用いた社会インフラがもっともっと発達すると、情報密度がとくに高いスポットというのは、今後ほんとうにあちこちに出現することになるはずだ。そこにいるだけで、いいことにも悪いことにも遭遇する確率がうんと高まる、文字どおりのパワースポットだ。特定のアプリケーションがメタ現実を展開している空間に関しては、すでにそういうスポットは現実に(というか、拡張現実に)存在している。
いまから、数年から十年のあいだに、パワースポットブームは、そういう拡張現実空間にふたたび巻き起こることになるのだろう。
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