おいしそうな屁
先日、「誕生日くらいは、贅沢してみるか」と、会社のそばでケンタッキー・フライドチキンを買って電車に乗って帰宅したのだが、なんだかものすごく悪いことをしているかのような気になった。
帰りの時間帯の通勤電車というものは、たいてい腹を空かせた人が乗っているわけである。その電車の中で、あのケンタッキー・フライドチキンの匂いをぷんぷんさせるというのは、まことに心苦しい。フライドチキンを持っているおれ自身にしてからが、「いまここで包みを開けて食ってやろうか」と思うほどの蠱惑的な匂いがする。同じ車両に乗り合わせた客の中には、気が狂いそうになっている人もいるのではないか――などと、いろいろあらぬ想像をしてしまう。
おれのほうが腹を空かせた乗客であり、そこへ誰かがケンタッキー・フライドチキンの匂いをぷんぷんさせながら乗ってきたとしたら、これはじつにもう、とてもたいへんはなはだ迷惑である。実際、そのような体験をしたことは何度もある。自分がフライドチキンを持っている側にまわると、じつのこの、まことにその、も、申しわけないっ!
これがいかに迷惑かというと、電車の中ですかしっ屁をかますのと同じくらいに迷惑であろうと思うのである。屁をひるのも、フライドチキンを持ち込むのも、同程度の罪なのではないか。
たとえば、だ。非常に特異な体質な人がいて、その人の屁は揚げたてのフライドチキンそっくりの匂いであるとしよう。この人が電車の中ですかしっ屁をかますと、あたりになんともいえないおいしそうな匂いが漂う。これは迷惑にちがいない。いっそ、ふつうの屁のほうが、よっぽど罪がない。
ケンタッキー・フライドチキンも、持ち帰りの客には、もう少し密閉度の高い包装をしてくれてもよさそうなものだが、ケンタッキー・フライドチキンにしてみれば、客がぷんぷん匂いをさせながら家まで帰ってくれるほうがありがたいのであろう。
あのとき同じ車両に乗り合わせた方々、まことに申しわけありませんでした。今後もこういうことがときどきあるとは思うのでありますが、そのときは、あのおいしそうな匂いは誰かの屁なのだと思ってやりすごしていただきたい。
| 固定リンク
コメント
私には蓬莱の豚まんの匂いが強烈に効きますね。あれはまたすごく香りますから。
投稿: 喜多哲士 | 2009年12月 7日 (月) 07時21分
唐揚げ好きの母親に土産を買って夕方の満員電車の中。
19.20位のカップルの男性が「なんか唐揚げ臭くね?」
「うん、臭う。」「だろ?くせー!!!!」
車内中に響く大きな声で全員が匂いの元を探しだしそうな雰囲気。
『臭い』って悪いニオイだと思ってましたが
やっぱりあの状況では「悪いニオイ」だったのだと今日、認識しました。
投稿: いい子 | 2009年12月 8日 (火) 13時36分