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2009年10月24日 (土)

短期記憶と次元

 人間の短期記憶が7±2個の意味の塊しか保持できないことは広く知られている。いわゆる“ミラーの法則”というやつだ。こういう実験的経験則を“法則”と呼ぶべきかどうかというツッコミもあろうが、俗にミラーの法則として人口に膾炙している。まあ、チチウス・ボーデの法則が法則である程度には法則であろう。

 おれの子供のころからの疑問は、なぜ人間はそういうふうにできているのか、そういうふうに進化してきたのか、ということなのである。認知神経科学が充分に進み、7±2のマジカルナンバーに解剖学的裏付けができたとしても、「じゃあ、なぜそうなのか?」の解決にはならない。

 そんなことを漫然と考えていたら、またバカなことを思いついた。このマジカルナンバーは、おれたちが3次元の空間で進化してきたことに関係があるのではなかろうか、と。3次元の空間で動きまわり、捕食し、敵から逃げるために必要な短期記憶の容量に最適化されてきたんじゃなかろうか? 次元の数である3からどうして7±2が導かれるのかという確たる数式を提示することはできないが、非常に強い関係があったとしても不思議ではないのではなかろうか? な~んとなく、そんな気がしないか? 直観だ、直観。

 たとえば、おれたちが13次元の空間で進化した生物であったとしよう。だとしたら、おれたちは、ふたつの13次元ベクトルの内積がゼロになるような位置関係を“ぱっと見”“直交している”と判断できる認知システムを発達させ、13次元空間でピタゴラスの定理の敷衍によって導かれるベクトルのノルムを“ぱっと見”“長さ・距離”と認知できるような脳を発達させたことだろう。このような高次元の計量空間での生存競争に勝ち抜くには、短期記憶が7±2個などというスペックでは到底足りないはずだ。13次元人は13次元空間での生存に適した、おれたちのそれよりもはるかに大きな容量の短期記憶を発達させるのではなかろうか?

 この思いつきは実証が難しい。13次元人に訊きにゆくわけにもいかないからだ。なにしろ、おれたちには3次元の事例しか得られないわけだから、その一例を以て“法則”を導くのは、なんぼなんでも無理がある。

 いやしかし、実証は絶対に不可能だというわけではない。理屈の上では可能性はある。おれたちにはコンピュータという武器がある。

 もう、おわかりであろう。つまり、13次元空間をコンピュータでシミュレートすればよい。コンピュータ内の13次元空間で人工生命を進化させ、おれたち程度の知能を持ったところで、短期記憶がどれくらいかを測る実験をする。むろん、4次元空間、5次元空間、6次元空間……と、たくさんのサンプルを得る。天文学で言えば、ティコ・ブラーエみたいな地味な仕事だ。だが、そうした膨大なデータから、いずれはn次元空間で進化した知性の短期記憶容量を導く一般法則を発見するケプラーみたいなやつが現れるかもしれないじゃないか。



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コメント

思いつきですが、
人間の空間把握はむしろ二次元的な部分が大きいので、
その延長で考えると、三次元的に動き回る鳥や鯨はより大きな短期記憶容量を持っているかもしれませんね。

投稿: 御影渦音 | 2009年10月27日 (火) 01時22分

おお、面白い発想ですね。

ただ、13次元空間をコンピュータでシミュレートするのは相当将来にわたって困難かと。
13次元の離散空間を定義するのは簡単だけど。
「次元の罠」があるんで、計算量が発散しちゃう。

3次元シミュレーション空間の人工生命の短期記憶がマジックナンバーに収束するか否か、まず調べてみるのがよいかも。
進化系統的に離れた頭足類あたりの短期記憶を調べるとか。

投稿: Cru | 2009年10月31日 (土) 21時54分

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