不可逆変化
民主党が政権を取った。まあ、まともな議会制民主主義の国であれば、ガリガリ君の「あたり」が出るよりもずっとありふれたできごとであろうから、そう騒ぐほどのことでもない。民主党がダメダメだったら、またその都度その都度、いちばんましだと思える選択をすればよいだけの話だ。どこからも救世主など降りてこない。そして、どこからも救世主など降りてこないとみんなちゃんとわかっているらしいのだから、まだまだ日本は大丈夫だなあと思う。
ただ、ひとつだけ、もはや元には戻らないことがある。「あ、気に食わなかったらべつに変えてもいいんだ。何度でも変えてもいいんだ。そうか、選挙ってそのためにあったんだ!」と、一度実感してしまった日本人の意識は、もうそれ以前にはけっして戻らない。この一事を以て、おれは今回の政権交代を喜ぶ。『幼年期の終り』、ばんざい! 日本の戦後はようやく終わりました。形式的な真似ごとではない議会制民主主義への第一歩を踏み出した。民主党にとっては小さな一歩だが、日本人にとっては巨大な飛躍だ。
さあ、民主党はもう与党なんだから、票を投じた者としてこれからは遠慮なく文句を言わせてもらおう。夢みたいなことばかり言ってもらっていては困る。ほんとうに国を憂えている優秀な官僚をどんどん引き立て、腐り切った官僚を叩き出せ。霞が関はシャブ中みたいなものだ。自分たちでは制度疲労を起こしている組織をけっして変えることはできないのだから、中にいるまともな人間には、「ああ、これで変われるかも」と期待している者も少なくないはずだと信じる。「ああ、捕まってよかった」と内心ほっとしている薬物常習者のような心境なのではなかろうか。政治を政治家の手に取り戻せ。それだけやってくれれば、あとは大目に見る。むしろ、選挙用のお菓子みたいな政策については、どんどん現実的な方向へ日和ってもらったほうがいい。なあに、世間はそれほど期待していないし、あれを全部真に受けてもいない。虻蜂取らずになるくらいなら、ひとつでもふたつでも、小さなことでも、「おお、これはたしかに変わったにちがいないし、自公政権ではけっしてできなかったにちがいない」と万人が納得する成果を電光石火で出すことだ。
さっそく提案。石破さんを防衛大臣として入閣させてはどうかな? それから、世耕さんを広報参謀として引き抜け。自民党が自分たちでうやむやにしてしまった小泉改革をちゃんと総括し、よいところは引き続き推し進めろ。冗談ではないよ、おれは本気で言っている。自民党は、新しい方向を示せないものだから、小泉改革をフリップフロップで全否定することで“見かけの方向性”を作り出していただけだ。おれは、それこそが自民党の今日の凋落を招いた最大の要因だと思っている。まあ、民主党だって、それを利用していたわけだが。安倍元首相だけは、それがいかに現実離れしたものであれ、少なくともヴィジョンを示してはいたが、ああいうことになってしまったからな。同じ轍を踏むな。選挙はフリップフロップだが、政権運営はフリップフロップではない。自民党にできなかった小泉改革の総括とその超克を民主党が為し得たら、これはもう上出来だと思うぞ。
さあ、お手並み拝見だ。
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