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2009年8月21日 (金)

身内は愚かにしておくのが無難という文化

 日本に生まれ育った人であれば、身内のことをよく言うことに心理的抵抗を覚えるのがふつうだろう。まったくよくできたすばらしい配偶者であると内心思っていても、「うちの愚妻が……」などと言うのが常識的言葉遣いである。本人がその場にいた場合、あとで謝っている人もいるかもしれないが。奥さんのほうが夫の友人などに「うちの愚夫がいつもお世話になっております」などと言うことは不公平にもあまりないと思われるが、最近はひょっとするとそのように謙遜する奥方も増えているのかもしれない。

 身内を貶めることで謙譲の意を表す言葉の中で、世間でいちばん使用頻度が高いのは、やはり「愚妻」だろうと思う。次は「愚弟」「愚妹」「愚息」だろうか。兄なら「愚兄」ってのはあんまり違和感がないが、「愚姉(ぐし)」って言葉は辞書にも載っている歴とした日本語であるにもかかわらず、話し言葉で使われているのを聞いたことがない。不思議だ。よく官能小説のタイトルに「美姉」とか「淫姉」とかそのほかの濡れた姉とか乾いた姉とかがいろいろ出てくるが、あれは書いているほうはどう読んでほしいと思っている表記なのだろうか? 「びし」とか「いんし」とか読むべきなんだろうか? どっちかというと、ヘンテコだと思っていても「びあね」とか「いんあね」と(頭の中で)読んだほうが、よりいやらしくてよいような気もしないではない。

 えっと、話が逸れた。

 身内を貶めて言う場合、はどうしたものか、あなた、悩みませんか? 「愚甥」「愚姪」って、文字で書いてあれば意味はわかるが、これってどう読む? 「ぐおい」「ぐめい」じゃ、「びあね」と同じでヘンだよね。「おい」「めい」も訓読みだ。さて、音読みは?

 正解は、「愚甥(ぐせい)」「愚姪(ぐてつ)」である。とはいうものの、「うちのぐせいが……」などと不意に言われても、大多数の人は「は? 奥様のことですか?」みたいになっちゃうだろう。つまり、音読みはあるにはあるが、話し言葉では実用的にあんまり意味がない。むしろ、「うちの甥(姪)めが……」とか、十把一絡げに「うちの甥(姪)どもが……」とでも言うほうが、耳で聞いてわかりやすい。

 それにしても、ひい爺さんとかを貶めて言う場合、いったい全体、なんと言ったらよいのだろう? 愚曾祖父? そこまでして謙遜せんでも。故人や年寄りだったら、相手にも敬老精神が求められようから、話し手側の謙譲姿勢が相殺されて、ふつうに曾祖父でいいと思うんだけどね。

 ただ、麻生首相とかが「うちの愚祖父が……」などと言ったとしたら、これはかなり違和感があるなあ。自分を愚孫と言うならともかく。




 

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コメント

アメリカ人に自国の大統領を自慢された場合、日本人としては謙遜の意味を込めてなんて言えばいいんでしょう。愚宰? 愚総?

投稿: 林 譲治 | 2009年8月21日 (金) 07時02分

愚妻=愚なる私の妻


投稿: bo_rude | 2009年8月21日 (金) 09時40分

 謙遜なんてものはネット上じゃトンと見かけないので、忘れかけてました。

投稿: 東部戦線 | 2009年8月21日 (金) 12時55分

昔は息子のこと「豚児」って言いましたよね、今となってはブタに対する侮辱かも・・・・・

投稿: 村上 | 2009年8月21日 (金) 22時10分

世襲議員のせいとは断言はしませんが愚息が本当に愚か者である例が多数発見されている昨今、愚妻と言った時に文字通り受け取られてしまいかねない危険を感じます。

投稿: 超時空漫才 | 2009年8月22日 (土) 00時03分

豚児=豚インフルエンザに罹った息子

投稿: ROCKY 江藤 | 2009年8月23日 (日) 00時22分

妻から夫に対しては「宿六」がありますね

投稿: たんご屋 | 2009年8月23日 (日) 21時28分

妻から夫に対して「石部金吉」なんてのもありますが、これは誉めてるのか貶してるのか…

投稿: ちいこ | 2009年8月26日 (水) 15時18分

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