草食う男
▼Japan's 'herbivore men' -- less interested in sex, money (CNN.com)
http://edition.cnn.com/2009/WORLD/asiapcf/06/05/japan.herbivore.men/index.html
TOKYO, Japan (CNN) -- They are young, earn little and spend little, and take a keen interest in fashion and personal appearance -- meet the "herbivore men" of Japan.
Author and pop culture columnist Maki Fukasawa coined the term in 2006 in a series of articles on marketing to a younger generation of Japanese men. She used it to describe some men who she said were changing the country's ideas about just what is -- and isn't -- masculine.
"In Japan, sex is translated as 'relationship in flesh,'" she said, "so I named those boys 'herbivorous boys' since they are not interested in flesh."
Typically, "herbivore men" are in their 20s and 30s, and believe that friendship without sex can exist between men and women, Fukasawa said.
The term has become a buzzword in Japan. Many people in Tokyo's Harajuku neighborhood were familiar with "herbivore men" -- and had opinions about them.
CNNが日本の“草食系男子(草食男子)”について報じている。見出しを含め、最初のほうでは 'herbivore men' と訳しているのは、さすがネイティブ感覚だ。ここは、多くの日本人は、herbivorous men とやってしまうところだろうと思う。いきなりそういうふうに言われると、英語ネイティブは、「ヴェジタリアンの男?」と思いかねない。herbivorous だの carnivorous だのというのは、第一義的には食性のことを言っているのであって、日本語ほど「草食=おとなしい・攻撃的でない」というイメージが説明抜きで伝わるわけではないってことだ。具体的に sheep とかを挙げると、日本で言っているイメージに近いところが伝わるとは思うが、herbivorous では、ぶっちゃけ、獰猛なカバだって草食ってるわけだよ。"In Japan, sex is translated as 'relationship in flesh,'" she said, "so I named those boys 'herbivorous boys' since they are not interested in flesh."などといちいち説明しなくちゃ英語ネイティブには真意は伝わらないと(おそらくは英語ネイティブの)記者が判断して書いているということなのである。
またこれは、“名詞A+名詞B”で複合語を造る場合と、“名詞Aの形容詞形+名詞B”で表現する場合とでは、相当意味がちがってしまいかねないというよい例だろう。“草食動物的な属性を備えた男”と“草ばっかり食っている男”とは似て非なるものである。smoking area は、アクセントの置きかた次第で「もくもく煙を上げているあたり」になったり「喫煙コーナー」になったりする。ここいらへんのいわく言い難い感覚ってのが、三十四年以上英語やってても、いまだに瞬時に“頭で考えてしまう”ところで、“識域下から反射で出てくる”ってところまではいかない部分なのよなあ。このへんがガイジンの限界かもなあと痛感する。ま、連中にとってのガイジンが英語が下手で文句あるかと腹をくくることも大事である。誰もがサイデンステッカーやドナルド・キーンになれるわけではない。が、デイヴ・スペクターくらいにはなりたいよな。
CNNの記事のニクいところは、「この記事の文脈では“草食”ってのはこういう意味で使っていますよ」ということが読者に伝わったであろうあたりから、herbivorous という形容詞を“日本人がこの文脈で使っている意味で”使いはじめるあたりだ。伊達にCNNの記者やってるわけじゃないよね、この人は。
断っておくが、おれはネイティブ至上主義派ではない。むしろ、英語が母語でない国で編み出された“ネイティブでないからこその表現”にも感心したり親しみを感じたりするほうだ。だけどまあ、ネイティブならではの“キレ”ってのにも憧れることはたしかなのである。たぶん、おれが「アホちゃうか!」と反射的に言うときの“キレ”に憧れてる日本語学習者も世界のどこかにいるんだろう。「日本語を三十年勉強しているが、こういう“アホちゃうか”はワタシには咄嗟に言えない。まだまだ修行が足りん」などと嘆いているガイジンだって、どっかにいるかもしれん。まあ、それはお互いさまだよ。
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コメント
小説なら前後で補完がききますが、新聞記事は手ごわいです。
NATIONAL GEOGRAPHIC の記事のほうがまだわかります。
普通なら日本語に変換しなくても意味がわかるのですが、
「'relationship in flesh」
は、しばらく考えないとなんのことかわかりませんでした(^^;)
投稿: 修理屋ア | 2009年6月10日 (水) 00時01分
relationship in flesh
ハイ、私もしばらく考えてから大笑いしましたです
草食な男ってそういう意味だったのかとようやく納得、だけどクサナギ君や水嶋君(カブト)がそれだと言われても、いまいちよくわからず・・・・・
投稿: 村上 | 2009年6月10日 (水) 12時16分
草食系男子…一応日本語ネイティブなつもりの私でも、未だに正しい使用法(?)つか、正しい草食系男子とは如何なるモノか分らないでおります。
それを英語で理解出来る様にするなんて…ムリじゃね?
ネイティブならではのキレ。
私、標準語より訛ってる方が100倍キレがあって面白いんですけど、それを標準語に置き換えるだけでたいした事なくなっちゃうってのがなんともw
投稿: ちいこ | 2009年6月11日 (木) 10時27分
>修理屋アさん、村上さん
むかし、Flesh Gordon( http://en.wikipedia.org/wiki/Flesh_Gordon )などというエロSF映画があったようです。残念ながら、私はまだ観てませんが。
>ちいこさん
「なんぼのもんや!」という関西弁は、絶対標準語には置き換えられないですねえ。よくも悪くも単純にカネに換算したらどうなると迫られているわけで、「なんぼのもんや!」と言われたときに、関西人はドキっとしますね。「おまえがなんぼのもんや!」などと言われたら、「すんません」と言うしかありません。「いくらのものですか?」などと問われても、全然ドキッとしません(^_^;)。
投稿: 冬樹蛉 | 2009年6月13日 (土) 01時14分
フレッシュゴードン
あ、その広告記憶あり、カタカナ表記だったので何が Fresh なの?とか思っただけで全然おかしくなかったのでした、そも元ネタ(フラッシュゴードン)知らなかったし
投稿: 村上 | 2009年6月13日 (土) 16時42分
その映画、見たことあります。ジム・ダンフォースが特撮をしているということで、SF雑誌で評判になり、一般映画として公開されました。福岡で見たとき、併映が、たしか「劇場版 科学忍者隊ガッチャマン」だったと思います。(オイ)
投稿: いぎたなし | 2009年6月13日 (土) 20時49分
>relationship in flesh
"Flesh hunter"という洋物AVの有名タイトルを思い出しました。
投稿: マクガイヤー | 2009年6月14日 (日) 01時56分
>flesh
まあ、ことほどさようにそういうイメージに即繋がる語だというわけで。私なんかは、格調高くいちばんに『ヴェニスの商人』を連想したりしますけどね(嘘)。
>いぎたなしさん
>併映が、たしか「劇場版 科学忍者隊ガッチャマン」だったと思います。(オイ)
子供にねだられて映画館に連れて行った親御さんの当惑した顔が目に見えるようです。どういう併映や? 「が、ガッチャマンだけ観ようね」
投稿: 冬樹蛉 | 2009年6月15日 (月) 00時17分