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2009年6月10日 (水)

関西人なら知らぬ人はない声

 関西に住んでいる人はみんな思っているだろうが、それにしても橋本のりこは仕事をしすぎではあるまいか。「誰それ?」て、貴様、それでも関西人かーっ!? そこに立って歯ぁ食いしばれ!

 いや、それはともかく、われわれ関西人は、橋本のりこの声をたぶん週に二、三回は絶対聴いていると思う。日中家にいてテレビを観ている人だと、ほとんど毎日何回も聴くことになろう。これは誇張ではない。事実そうなのである。関西のバラエティー番組のVTRナレーションには、必ずといってよいほど登場する、関西のナレーション女王だ。しかも藝達者で、深くて艶のある声で名所旧跡名刹名旅館名食堂を紹介するかと思えば、とても同一人物とは思えぬとぼけた声で吉本芸人の人を食った企画に華を添える。

 行楽やら出張やらで関西にいらした方は、旅館やホテルの部屋でちょっとテレビを点けてみていただきたい。三、四時間ほどテレビを観れば、たぶんあなたはその間に橋本のりこの声を一回は聴いていることになろう。嘘だと思ったら、いまテレビを点けなさい。点けましたね。では次に、関西ローカル局制作の番組をやっているチャンネルに合わせなさい。合わせましたか。毎日放送でも朝日放送でも関西テレビでもよみうりテレビでもいい。よし、合わせましたね。では、その番組を最後まで観なさい。観ましたか。観ましたね。エンディングのクレジットが流れているでしょう。「ナレーション」のところを見なさい。ほら、そこには、たぶん橋本のりこの名がある。「えっ? ナレーションの人って、一人だけだったの??」と面食らうこともあるかもしれない。

 こんなにしょっちゅう声を聴くのに、意外と関西人でも名前は知らない人は多いみたいなのだなあ。裏方のお仕事とはいえ、きわめて高度な専門職なのに、その絶大な“知声度”のわりに、放送業界外での知名度は不当に低いと言わざるを得ない。まあ、ご本人はたぶん「プロの裏方は、それでこそ本望」と思っていらっしゃるのかもしれないが……。

 もはや橋本のりこの声は、“関西の声”と呼ぶべきだと思う。海外に移り住んだ関西人なんかには、YouTube で関西ローカル番組を観ながら、「うわあ、懐かしいナレーションの声! これこれ、この声!」と涙をちょちょ切らせている人が少なくないんじゃなかろうか──「えーと、名前は知らないけど」

 この機に名前も覚えましょう。それは橋本のりこという人です。



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