ロボットは海苔を破ってはならない
ロボットが卵を摑んだりするのをテレビで観るにつけ、ロボット工学の進歩に胸躍るのであるが、ここまで進んでいるんだから、ぜひロボットにやらせてみてほしいと思っていることがひとつあるのである。
コンビニのおにぎりから海苔を破らないようにフィルムを引き出し、ちゃんと三角おにぎりを完成させられるロボットというのを作ってほしい。これは工学者にとっては、たいへんな挑戦だと思う。なにしろ、人間だって、うまくできない人はざらにいるのだ。おれもときどき失敗する。
右手でおにぎりを把持するわな。で、左手でフィルムをつまんで引き出そうとする。右手で強く摑みすぎると、フィルムの抵抗が大きくてなかなか引き出せないし、下手をすると海苔を破る。だもんだから、右手の把持を弱めると、今度はフィルムにつられておにぎりが左側にすっぽ抜けてゆきそうになる。右手にも左手にも、強からず弱からず、フィルムを引き出すのに最適なグリップ強度と、その絶妙な連繋が要求されるのである。とくに韓国海苔のおにぎりは難しい。表面に塩をまぶした韓国海苔の場合、日本のふつうの海苔よりも摩擦が大きく、相当コンビニおにぎりに馴染んでいる猛者でも、勘が狂うのだ。
えーと、もし、このようなアホブログを読んでいるロボット工学者の方がいらしたら、ぜひこの難題に取り組んでみていただきたいと思う。冗談でなく、マジで提案している。卵摑んだり楽器弾いたりするのはですね、見るほうも「そりゃ、ロボットなんだから、できても不思議はないわな」と、それを実現する技術のすごさなどには無頓着に思ってしまうものである。しかし、コンビニのおにぎりは、なにしろ非常に多くの人が、うまくフィルムを引き出すのがいかに難しいかをよーく知っているわけだから、ロボットがいとも簡単にやってみせたら、そりゃあ、デモンストレーションとしてはどえらいインパクトですぜ。「たしかに、ここまでできるロボットなら、近い将来、介護や医療の現場に配備してもよさそうな気がするな」くらいには思ってもらえるかも。
が、よく考えてみると、あまりにも人間的で精妙な動作をやってのけるロボットには、ひょっとすると“気味が悪い”と感じる人もいるんじゃなかろうか。ルックスとか目配りとか受け答えとかだけじゃなく、確固たる単一の目的がある一連の動作にも、“中途半端に生々しいと気味が悪い”という、いわゆる“不気味の谷”が存在するかもしれないよね。ロボットには本来必要ないはずの動作を、生々しく小器用にやってみせたりすると、これはかなり不気味かもしれん。
たとえば、自分でそこそこ上手に化粧をするとか、社会の窓に指を突っ込んでうまくおちんちんを引っぱり出し、用がすんだら(なんの用だ?)、またうまくしまうとか、きれいに眼鏡を拭くとか、缶入りのつぶコーンスープを終盤には缶を回しながら一気に飲み、最後にのけぞったまま缶の底を叩くとか……こういうことを、ロボットが非の打ちどころがないほどスムーズにやってのける姿を目の当たりにしたとき、人は「よくできてるなあ」と感嘆するのか「気色悪ぅ~」とドン引きするのか?
ま、なにはともあれ、コンビニおにぎりは、ホントにどなたかやってくれないかなあ。
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コメント
「ブレードランナー」や「ターミネーター」、「AI」なんかを思い出しました。
ま、あそこまでスムーズに動けると、果たして自分は人間なのかロボットなのか分らなくなりそうですよね。
なので「良く出来てるな~!!!」とか「キショイ!!!」では無く、そこはかとない「不吉さ」ってヤツを感じそうです。
なんせ人間至上主義ではないので、「駆逐される日も近い」と感じるから・・・。
そんでコンビニおにぎりの海苔。
ロボットにやらせるよりフィルムや海苔側を改良した方が安価で有意義だと考えるロボット工学者の方が多いんだろうな~w
投稿: ちいこ | 2009年5月28日 (木) 13時58分
>ロボットにやらせるよりフィルムや海苔側を改良した方が安価で有意義だと考えるロボット工学者の方が多いんだろうな~w
「ロボットにも扱える」が謳い文句のおにぎりを失敗して落ち込む人間の姿が目に見えるようです。
投稿: ROCKY 江藤 | 2009年5月28日 (木) 21時07分
わたしは、まず「ロボット三等兵」を連想しましたがな。
それよりまず最初に、ロボットにおちんちんを付けるところから始めなければ・・・
投稿: いぎたなし | 2009年5月28日 (木) 21時10分
>ちいこさん
そこをあえてロボットにやらせる酔狂に意味があるわけですよ。
>ROCKY 江藤さん
そんなおにぎりが出たら、いっそう緊張して失敗しそうです。
>いぎたなしさん
「アトム二世」という、手塚治虫自身がアトムの紋切り型なイメージをぶち壊して楽しんでたような作品では、より人間らしくするためには必要だということで、アトムに性器が取り付けられます。
投稿: 冬樹蛉 | 2009年5月29日 (金) 02時44分
人工知能のレベルとしては、海苔を破らないで処理できるロボット、海苔を破ってるのに屁理屈こねて現実を認めないロボットと、どちらが高度な人工知能と言えるんでしょう。
投稿: 林 譲治 | 2009年6月 1日 (月) 17時40分
>林譲治さん
「このようなものを私はエネルギーとして利用できないし、そもそも摂取できない。こんなつまらない犬の曲芸のようなことはしたくない」と、屁理屈を捏ねてコンビニおにぎりを受け取ろうとしないロボットがいちばん高度ではないかと(^_^;)。
投稿: 冬樹蛉 | 2009年6月 7日 (日) 18時24分
>「アトム二世」
ありましたねえ、アトム二世が性犯罪を犯して連行され、群衆から「性戯の味方」と罵倒されるんでしたっけ。で、お茶の水博士の「アトムや〜、帰ってきておくれ」という嘆きで終わるという…
投稿: 松浦晋也 | 2009年6月 7日 (日) 22時23分
>松浦晋也さん
あれはファンにはたいへんな不評だったらしいんですが、私はけっこう好きだったりします。手塚治虫の毒のあるギャグセンスが光っていたと思うです。自分の作品の“文部省推薦”的なところさえ、手塚先生はしばしば自虐的にギャグにしてたですね。そういうことが平気でできるあたりに、手塚治虫のホントはダークな面が表れてたと思います。
投稿: 冬樹蛉 | 2009年6月 8日 (月) 00時58分