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2009年5月12日 (火)

退化してるよね、あきらかに

117億投じる「国営マンガ喫茶」 なぜ「お台場」に建設なのか (J-CASTニュース)
http://www.j-cast.com/2009/05/11040891.html

15兆円規模にものぼる補正予算の審議がヤマ場を迎えるなか、その内訳について、野党から批判の声があがっている。特に問題視されたのが、117億円の予算が付けられている「国立メディア芸術総合センター(仮称)」なる施設。お台場が有力な建設予定地とされているのだが、「アキバ文化」に詳しいジャーナリストからは、「秋葉原や『アニメのまち』杉並区などを無視する形のうえ、いきなり『ハコモノ』を作っても上手くいかないのでは」と、疑問の声があがっている。

 おれはマンガもアニメも嫌いじゃないし、どっちかというと好きなほうだが、これを「国営マンガ喫茶」と呼ぶのはいささか言いすぎだと思う。マンガ喫茶に失礼である。そこいらのマンガ喫茶ほど流行るとは到底思えない。少なくとも、マンガ喫茶なら、採算が取れているから営業が続けられるわけだしな。こんなものは、「マンガのグリンピア」になるのが目に見えている。なんで、いまさらハコモノなのだ?

 ここでタイムマシンに乗って、ITpro のニ〇〇一年一月の記事「中央省庁再編はアニメやCGなどコンテンツ産業に吉と出るか」を読んでみていただきたい。ああ、あったあったと思い出す人も多かろう。あの『BLOOD THE LAST VAMPIRE』は、この「通商産業省平成10年度補正予算先導的コンテンツ市場環境整備事業」から製作費の一部が出ており、エンドロールにもちゃんと出ていた。少なくとも、十年ほど前には国も少しはましな方向性を打ち出してはいたと思う。

 とはいえ、やがて「先導的コンテンツ」やら「マルチメディアコンテンツ」やらなにやらという曖昧な言葉は、いつのまにか「デジタルコンテンツ」に矮小化されてしまい、どこ行ったかわからなくなってしまった。かつての「ニューメディア」(死語)を思わせる。

 それでも、むかしは、ソフトに金を出そう、人を育てるのに金を出そうという、まともな方向性はあったわけだ。それを“輸出産業”としてしか見ていない役人と、アーティストのメンタリティーとのあいだに、絶望的な距離があったであろうことは想像に難くないにせよだ。この十年で、政治家や役人も少しは学習というものをしたであろうに。

 それが、平成二十一年にもなって、この「マンガのグリンピア」ですからなあ。はらほろひれはれと言わずしてなんと言おう。

 こんなもん作ってる金があったら、オタクにばらまけ! オタク給付金である。まあ、オタクといってもさまざまなオタクがあるから、経済効果の大きそうな何分野かに絞って試験をし、みごとオタクと認定された人には、百万円くらいどーんと給付する。オタクは購買力が高い。なぜかというと、金持ちのオタクは金に糸目をつけずオタクなものを買うし、貧乏人のオタクは金に糸目をつけながらでも、やっぱりオタクなものを買う。衣食住など彼らの眼中にはない。なんとか生きていられればいいのである。すぐにウンコになって出てしまううまいものなど食うくらいであれば、彼らは小説を買うマンガを買うアニメのDVDを買うフィギュアを買うコスチュームを買う。一万あれば一万買うし、十万あれば十万買うし、百万あれば百万買う。これはものすごい経済効果である。また、そうした冥府魔道をゆく呪われた人々の中から、結果的にさらなる経済効果を生む“なにかしら”を創造してしまうやつも出てくるにちがいない。

 あー、なんかちょっと話が逸れたような気もするが、一万二千円やそこらもらったところですぐに貯金してしまうような人々に金を配るくらいなら、オタクに集中的に配ったほうが絶対景気浮揚に効果があるぞ。

 だから、麻生首相はおれに百万円振り込むように。なんなら一千万でも一億でもいいぞ。一億入ったとしても、衣食住がごとき些末事の水準はほとんど変えぬままで、どばどばっと有効に使ってさしあげるぞ。もっとも、おれひとりでは一億円ぶんも本は読めんしCDは聴けんしDVDは観られんから、それだけあったら、自分の好きな作家を拉致してきて、一年でも二年でも高級ホテルに缶詰にし、傑作を書かせる。ホテルでの生活費は全部おれ持ちだ。なんと有意義な金の使いみちであろうか。



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コメント

「オタク給付金」まさに正論。
今回の「ナンタラ給付金」の95%は、大根、豆腐、お米等々の生活関連に使われたと、独自の調査(私のいい加減な感のことですが)に明々白々。
私は、国民の義務と致しまして、戴きましたお金の弐倍ばかり散財し「絶対使わないであろうマジ◎ク・グッツ」を買いました。いくらか経済の向上に寄与出来たのではと自負いたしております。
また来年も下さい、麻生さん(で、いいのかな?)。

投稿: zazatto | 2009年5月12日 (火) 07時03分

 今こそ、「大阪府立国際児童文学館」を10億円で国に、売却すればいいのに。府知事は目の上のたんこぶを始末でき、国は安く天下り先を確保し、おたくは、保存資料を堪能できる。言うことないんですけど。
 ただ、現府知事は金のことをうるさく言う割には、こういうセンスはないんだよなあ。

投稿: いぎたなし | 2009年5月13日 (水) 22時05分

 たぶん十年前の役所はあまりアニメに力を入れておらず、担当していた人は役人の本流から外れた人たちだったんだと思います。なんというか、役人らしさが足りない人たちが役所らしくないことをやっていた。
 しかし、今はアニメに注目が集まり、ちゃんとした官僚とでもいうべき人たちがアニメに関係した政策を担当するようになってしまったんじゃないでしょうか。

投稿: 東部戦線 | 2009年5月13日 (水) 23時45分

>zazattoさん

 そうなんすよ。結局、“いつも買うものの補填ができてよかった”というのが大多数だと思うんですよねえ。「絶対使わないであろうマジ◎ク・グッツ」みたいなものを買う人は、やっぱり分野はさまざまなれど、オタクなんですよ。


>いぎたなしさん

 ああ、それはいいアイディアですね。現知事は人がよすぎるんじゃないでしょうか。やっかいなものを国に押しつけて負担させるくらいのど厚かましさが大阪人には必要です。


>東部戦線さん

 す、鋭い。たぶん、おっしゃるとおりのことがこの十年で起こったのだと思います。

投稿: 冬樹蛉 | 2009年5月25日 (月) 01時20分

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