その“鈍器”が見たい
▼女子高生が鈍器で殴られ、かばん奪われる 堺市の路上 (asahi.com)
http://www.asahi.com/national/update/0417/OSK200904160059.html
16日午後10時25分ごろ、堺市南区桃山台4丁の路上で、自転車で帰宅途中の高校2年の女子生徒(17)から「強盗被害に遭った」と110番通報があった。南堺署によると、前から歩いてきた男に鈍器のようなもので後頭部を数回殴られ、現金約7千円入りのかばんを奪われたという。生徒は軽いけがを負わされた。同署は強盗致傷容疑で逃げた男の行方を追っている。
同署によると、男は25~30歳、身長約170センチ、黒色っぽい半袖Tシャツと白色っぽい長ズボン姿で、眼鏡をかけていた。硬い物が入ったスーパーの袋のようなものをすれ違いざまに振り回して殴りつけたという。
出たな、謎の凶器“鈍器のようなもの”。
そもそも“鈍器”ってだけで十二分に曖昧な凶器なのに、さらに“のようなもの”がつくわけだから、読んでるほうにはさっぱりイメージが湧かない。「鈍器」というのは、広辞苑によれば、「鋭くないが重みのある刃物。また、刃のついていない棒状の道具」とある。そもそもがずいぶん曖昧な定義である。刃が鋭くない、あるいは、刃がついていないというところに意味領域のコアがあるようだから、言い換えれば、切ることよりも叩くことのダメージを目的としたなにものかということなのだろう。たとえば、靴下に砂を詰めたものなどは、充分に“鈍器”なわけだ。日本刀で峰打ちされた場合、それはやはり、殴られた痕を調べるかぎりは、“鈍器のようなもの”で殴られたということになるのだろうな。
かねてより、あちこちで指摘されているのを見るのだが、はたして“鈍器”に“のようなもの”をつける意味があるのだろうか? 「鈍器のようなもので殴られた」というのは、「刃物のようなもので切られた」と言っている以上に曖昧な表現ではなかろうか。“切れる”からには、それは一般的に刃物と呼ばれるものそのものでなくとも、それに準ずる鋭利な部分を備えた凶器なのだろうなと妥当に推測できるが、“鈍器のようなもので殴られる”場合、凶器は、明確に切ることに特化した道具ででもないかぎり、およそすべての物体が候補になってしまう。というか、切ることに特化した道具をあえて殴ることに使った場合でも、候補になってしまう。広辞苑だって、立派な鈍器である。
「鈍器のようで鈍器でないもの、ってあるのですか?」と、マジメにQ&Aサイトで尋ねている人がいて、それに続くやりとりのあまりの面白さに大爆笑してしまった。いやあ、たしかにこれはもっともな質問だと思うな。マスコミはいったいどういう理由で「鈍器のようなもの」を使い続けているのだろう?
鈍器のようで鈍器でないものなあ……やっぱり、それは日本刀の峰打ちなんじゃないか? 実際、峰打ちだろうが、あれだけの重量の鉄の棒で殴られたら、死ぬことだって少なくなかろう。
♪鈍器のようで、鈍器でない、ベンベン!
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コメント
1.スーパーの袋というのは見まちがいで、パンチかキックで襲われた可能性が否定できないから。
2.警察には鈍器の厳重な定義があって、その定義に外れる鈍器で殴られたかもしれないから。
3.朝日新聞には鈍器の厳重な定義があって、その定義に外れる鈍器で殴られたかもしれないから。
4.曖昧に表現することが丁寧言葉だと思っているからみたいなー。
投稿: 東部戦線 | 2009年4月17日 (金) 02時26分
この「…のようなもの」
ニュースなどでも引っ張りだこな魔法の言葉。
「×月○日某パチンコ店の通用口をバールの様なものでこじ開け、覆面の様なものを被った男性と見られる数人が侵入してきて、従業員を金槌の様なもので殴り、粘着テープの様なもので縛り上げ、金庫と見られるものを奪っていったと思われる事件が起きた模様。」みたいな。
そこまで全て曖昧ならいっそ嘘だと言って欲しいものです。
あ、因みに日本刀の峰打ち。これってよっぽど剣術に優れてないと殺傷に至る傷を負わせるのは難しいそうですよ。と、居合いをやっていた人からの受け売り。
投稿: ちいこ | 2009年4月17日 (金) 09時06分
>出たな、謎の凶器“鈍器のようなもの”。
プププ(*≧m≦*) 何とかレンジャーとか何とかマンに出てくる怪人みたい♪♪♪
投稿: ちいこ | 2009年4月17日 (金) 10時25分
ドンキ……ホーテで買ったとか、そういうオチじゃないでしょうね? 違いますよね? ね? ね? どうなの??
投稿: ふみお | 2009年4月19日 (日) 01時13分
やはり疑わしきは凶器の利益で、鈍器であると刑が確定するまでは、「鈍器の疑い」と言うことなのかも。凶器は鈍器と報じて、じつは鈍器でなかったら免罪ですから。
投稿: 林 譲治 | 2009年4月19日 (日) 07時45分
誰も鈍器だとは思っていなかったのに、調べてみるとなんと鈍器だった!
──というのは、“びっくり鈍器”と言います。
投稿: 冬樹蛉 | 2009年4月21日 (火) 00時33分
巨人だと思っていたのに、突撃してみるとなんと風車だった!
──というのは、“鈍・器ホーテ”と言います。
…ハハ、鈍器だねー
投稿: アダチ@初音ミク中毒 | 2009年4月23日 (木) 21時48分
捜査官1「この人、風車で頭打っちゃったんだよねえ」
捜査官2「ああ……こういうの、どう言えばいいんだろう? 風車は鈍器か?」
捜査官1「うーん。そこがねえ……。鈍器というか……まあ、鈍器のようなものってとこかなあ」
鈍・器のようなものホーテ
投稿: ふみお | 2009年4月24日 (金) 01時32分