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2009年4月23日 (木)

おれを裁判員に選んだって知~らないぞ、知らないぞ

 裁判員制度の開始まで一か月を切ったということで、またもやにわかにいよいよ是非の論議が盛り上がっているみたいだが、是非もへったくれも、もうやることになっちゃったんだから、どうしようもないわな。さいわい、おれのところにはまだ赤紙(?)は来てない。というか、来ても言っちゃダメなんだっけ。来てないと言うのはいいんだろ?

 「私は法律の知識なんかないし、裁判員なんかにさせられても……」といったコメントをする人がけっこう多いのだが、そりゃ、みんなそうだわさ。法律にめちゃめちゃ詳しかったら、弁護士やら検事やらになってるよ。国がパンピーの常識と良識で判断しろと言っているのだから、法律の知識に乏しいことをこちとらが負い目に思う必要などない。無知な私のせいで罪もない人が重罰を課せられたらどうしよう──などと思うところが、よくも悪くも真面目な日本人だなあと思う。ふつう、無能なやつを採用したり抜擢したりしてろくな結果にならなかった場合、無能なやつが悪いのではなくて、そいつを採用したり抜擢したりしたほうが悪いのである。おれを裁判員などにしてしまった場合、どんなことになろうと、それはおれを選んだやつが悪い──と、割り切って考えられないのが、お人よしの日本人のいいところでもあるし、悪いところでもあるのだよなあ。だけど、裁判員に選ばれちゃった人は、「おれが他人の人生を、ことによると、生死を左右するのだ」などと、根を詰めて悩みすぎると、心身症になっちゃうよ。ある意味、おれたちは、ごくふつうに生きていても、その一挙手一投足が、他人の人生を左右しているのだ。考えすぎると、「生まれてすみません」状態になってしまう。「生まれてすみません」よりは、「生きてるだけで丸儲け」((C)明石家さんま)と思って生きてるほうが、人生なんぼかましだと思うよ。

 「経営陣がボンクラだから、おれたちがしっかりしなきゃ、お客さんに迷惑がかかる。おれたちが会社を支えているのだ」などと、自分に給料以上の使命感を課して身体壊しちゃう人とか、極端な場合は、過労死しちゃう人とかが少なからず出るのも、愛すべき日本人のいいところでもあり、悪いところでもあるよね。「当座はおれしかいないが、そんなもん、いざとなりゃ、べつにおれの代わりなんていくらでもいる」くらいに考えて、死なない程度に働くのがしあわせなんじゃなかろうか。なにしろ、経営陣の代わりだっていくらでもいるし、仮にあなたの勤め先が潰れたって、代わりはいくらでも出てくるのだ。あなたが公務員だってそうである。だけど、息子・娘としてのあなた、夫・妻としてのあなた、父親・母親としてのあなたの代わりはどこにもいない。優先順位の付けかたはおのずとあきらかであろう。

 おっと、裁判員制度の話からちょっと逸れたな。であるからして、おれは裁判員になんぞなりたくもないが、選ばれちまったら、それはそれでいたしかたないと思っている。選ばれちまったら、「おれが正義だ」くらいの心持ちで臨むつもりだ。たまたまおれの正義に合致する立法主旨の法律があればけっこうなことだし、おれの正義に反する法律があるのだとしたら、それは法律のほうがまちがっているのだと裁判員たるおれは思ってよいのだ。文句あるか。

 それはそうと、ミステリ作家の方々にとっては、この裁判員制度、けっこうおいしいかもしれないよね。裁判員全員が共謀する『裁判員制度殺人事件』なんてのは、誰でも思いつきそうだから早いもん勝ちだ。生まれてこのかた小さな村から一度も出たことのない老婆が裁判員に選ばれ町に出てゆくのだが、彼女にはじつはとてつもない推理の才能があって、本職の法律家をも唸らせる冴えた論理で裁判員たちをことごとく納得させ、誰も想像だにしなかった真相を暴く──な~んて話も出てきそうだ。じつは、偶然にも真犯人は裁判員の中にいた──なんてのも面白そうだな。人間の心理を手玉に取る才能に恵まれているやつが裁判員の中にいて、どう考えても無実の人間を、そいつの弁舌と手練手管で死刑に追い込む“触媒殺人”なんてのもアリかもしれない。う~む、アガサ・クリスティは偉大だねえ。

 なに? 不謹慎だ? だーかーらー、なにもあなたが全宇宙を背負うことなどありませんって。あなたがどんなにいいかげんでもボンクラでも一般常識程度の法律を知らなくても、それは選んだやつが悪いんだから。



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コメント

>じつは、偶然にも真犯人は裁判員の中にいた──なんてのも面白そうだな。

 タイトルは忘れましたが、昔、テレビで殺人事件の真犯人が誤認逮捕された男の裁判の陪審員になってしまい、必死になって被告の無罪を証明しようとするという映画を見たことがあります。なにしろ、彼が無罪であることに絶対の確信があるわけですから、それこそ必死になって。
 残念なことに結末も忘れちゃったんですよ、とほほほほ。

投稿: 東部戦線 | 2009年4月23日 (木) 03時21分

まさに説得力抜群。すっかり気が楽になりました。
しかし、私はふる~い日本人です。もし、赤紙が来たら掛かりつけのドクターに頼んで入院させてもらいます。病名は「花粉症兼躁鬱症兼高血圧症兼水虫兼アルコール中毒症」がよろしいかと。あ、病院のベットでネットも見られる様にお願いしとかなあきませんね。

投稿: zazatto | 2009年4月23日 (木) 06時17分

 裁判員制度導入の前に保安官制度の導入はなぜ検討されないのだろう。

投稿: 林 譲治 | 2009年4月23日 (木) 09時29分

えっ!!!言っちゃダメってマジっすか???私にはそれが一番堪えるかも…(((( ;゚д゚)))アワワワワ
「12人の怒れる男達」でしたっけ?アメリカの陪審員制度の問題点を指摘した映画がありましたよね~。
んで「12人の優しい男達」って陪審員制度が日本にあったら…てな日本映画もありましたよね~。
裁判員制度、ある意味この日本映画をなぞった形になりそうですな~┐(´-`)┌

投稿: ちいこ | 2009年4月23日 (木) 09時55分

仕事していたとき、冬樹さんと同じような事を上司に言われましたね。
おかげで自意識過剰にならず、かつ自分勝手にならず、適度に勤めて適当に辞めました。
まったく、生きているだけまるもうけって名言ですよねぇ。
自分が死んでも生きてても、日は昇るし沈むんだし。
だったら、毎日楽しいほうがいいと思いますよ。

投稿: たぬき | 2009年4月23日 (木) 12時45分

>東部戦線さん

 ひええ、やっぱりすでにそういうのがあるんですねえ。それ系のやつは、今後日本にもいろいろ出てくるでしょうね。


>zazattoさん

 マジな話、裁判員制度を逃れるための診断書を出してくれる医者というのが今後流行りそうな気がします。


>林譲治さん

 順番は前後しますが、どのみち、軽犯罪の取り締まりは、今後、必ず民営化されることでしょう。


>ちいこさん

 その件に関しては、『12人の浮かれる男』という筒井康隆の名作がすべてを語り尽くしています。ぜひ、お読みください。これから、こういうことになります。


>たぬきさん

 さんまは気軽に言っているのでしょうが、じつにすばらしい言葉だと思います。私も座右の銘にしております。

投稿: 冬樹蛉 | 2009年4月25日 (土) 02時29分

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