子供に見せたくない洗濯
われわれの日常には、「きっと、み~んなそう思ってるんだろうなあ」と思いつつも、他人がほんとうにそう思っているのかあえて訊くのもどうかと思われる、きわめて、きわめて些細なことどもがある。
日記に書くべきか否か、いままで何度も迷ったのだが、今日、意を決して書いてみようと思う。この格調高い間歇日記の題材としては、あまりと言えばあんまりなナニなアレなのだが、「絶対、みんなそう思ってる!」と確信したので、この際、品格などというものを顧慮している場合ではないと、とにかく書く。
世に“洗濯ネット”というものがある。ワイシャツなどを洗濯するときに、おれもいつもお世話になる。このファスナーが、誰が考えたのか、じつにうまいことできている。ジッパーが洗濯機の中で他の衣類を傷つけたりしないよう、また、水中で揉まれているうちにファスナーが開いてきたりしないよう、ファスナーの終端にジッパーを覆い隠し収納する小さな布カバーが付いている。これは絶対、実用新案なり特許なりを取っているだろう。世の中には頭のいい人がいるものだ。
しかし、この洗濯ネットを使って洗濯をするたびに、おれはちょっと「……こ、これはいかがなものか」と、なにやらバツの悪い思いをするのである。洗濯ネットを使っているところを、あまり人に見られたいとは思えない。
ふだん洗濯など家人に任せきりであるといったしあわせな人のために、念のため、洗濯ネットなるものをお見せしておこう。独りものにはおなじみであろう。いろいろな商品があるのだと思うが、まあ、だいたいこういったものである。この中に洗濯物を入れ、洗濯機にぶち込んで使用する。
中に洗濯物を入れ、こういうふうにファスナーを閉じてゆく。
でもって、ジッパーを終端まで持っていったまさにこのとき、なぜだかわからないが(じつはわかっているが)、おれはなんだか人に見られたくないことをしているかのようなバツの悪さを覚える。おれに子供はいないが、子供に見せたくない光景であるかのような気がしてしまう。
いや、おれはただ洗濯をしているだけなのだ。なにを恥ずかしく思うことがあろうか。いや、でも、なんか、やっぱり、ちょっと恥ずかしい。
きっと洗濯ネットを使っている人たちはみ~んなそう思っているのだが、あまりと言えばあんまりなので、誰も口にしないだけなのだろう。そりゃ、いい大人がこんなバカなことを、「やっぱり、そう思うでしょう?」などといちいち話題にするのもどうかと思う。子供が話題にしていたら、それはそれでフクザツなものがあるけどな。
いやしかし、これは……。なんちゅうか……。どう言っていいものやら。
ともかく、おれは、この洗濯ネットのファスナー終端部分の工夫を考案した人に、声を大にして言いたい――
「すけべ~!」
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