スタンプカードは得なのではない
『あたしンち』(テレビ朝日系)を観てたら、“母”が役にも立たないスタンプカードを溜め込んでいる話だった。ああ、これはわかるねえ。つまるところ、たまさか行ったような店でスタンプカードをもらっても、なにやら特典がもらえる前に期限切れになってしまうものなのである。そりゃもう、絶対にそうなのである。
だいたい店側だって、店が損をするような大特典を出すはずがない。結局、スタンプカードというものは、常連が得をするように設計してあるのではなくて、一見が損をするように設計してあるだけのものにすぎない。
おれはピザが好きなので、まあ、一、二か月に一夜くらいは、晩飯の準備をするのが面倒くさいときに、たまの贅沢としてピザを取る。おれは、妙に日本人好みにごちゃごちゃいじくったピザよりも、某シカゴのいかにもアメリカ臭い大味が好きなので(モスバーガーよりもマックが好きというタイプだ)、某シカゴを愛用しているわけだが、某シカゴのチラシには、いつも五百円引きのクーポンが付いている。デリバリーを頼むと、最新のチラシと五百円引きのクーポンを一緒に持ってくる。で、そいつが期限切れになる前にはまたピザが食いたくなるわけで、要するに、定価の五百円引きで食うのが常態なのである。
じゃあ、おれは毎回五百円得をしているのかというと、そんなはずはあるまい。むしろ五百円引きクーポンを持っていないような“一見さん”や、クーポンが期限切れになるほどにたまにしかピザを頼まない人が、常連の“ふつう”のピザ食いよりも、五百円損をしているだけなのである。そういうものだ。
つまるところ、顧客の購買履歴をRFM分析、あるいはRFMI分析して、細分化したアクションに結びつけるといったCRMを実現するほどのコストをかけるまでもないほどに単価の低い商品を扱っている場合は、このようなクーポンを発行することで、自動的に大ざっぱなRF分析をしているのと等価になるわけである。そしてそれは、かなり有効に機能する。費用を投じてごたいそうなデータマイニングをするまでもない。あくまで、損益分岐の問題なのだ。
消費者は、スタンプカードなるものの特典で“得した”などとは夢ゆめ思ってはならない。一見さんが損しているだけで、あなたが得しているわけではないのだ。常連客は得をしているのではなく、その店へのロイヤルティーを証明することで損を食い止めているだけのことである。
そう考えると、スタンプカードというものの有効な利用法は、おのずと見えてくる。“スタンプカードのために行動を変えなくてはならないようなスタンプカードは、あなたにとって要らないスタンプカードだ”ということだ。スタンプカードがあろうがなかろうがその店で買うという購買パターンを持っている消費者にのみ、その店のスタンプカードはいささかなりとも有効なのである。スタンプカードというものは、そもそもが、新規顧客を開拓するためのものではなく、常連顧客を手放さないようにするためのものである。
「スタンプカードがあるから……」などと、ふだんあまり行かない店へゆく機会を待って買いものをするなど、愚の骨頂である。ローカルなスーパーやなんかが出しているものだととくにそうだ。あなたの日常的購買行動をことさら変えなくてすむような、ふだん買う店でのみ、スタンプカードは意味があるのだ。結局、そういうことなのである。全国展開しているチェーン店のポイントカードとなると、また損益はちがってくるけどね。
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コメント
内容とは関係ない話ですが、シカゴピザファクトリーのピザは実際はニューヨーク風というか、シカゴ風ピザとはちょっと違うような気がします。
投稿: 東部戦線 | 2008年8月25日 (月) 14時26分
同じく関係ない話ですが、夕刊を読んでいたらこんなモンを見つけました。
「チリモン」ゲットだぜ じゃこに紛れたエビやタコ探し 人気
http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/news/20080825gr0e.htm
チリメンモンスターってなに?
http://k-tomo.web.infoseek.co.jp/chirimon/chirimon1.htm
以前、「最近のちりめんじゃこにはタコが入ってない」という話がありましたが、
意図的に探す、となるとまた趣が変わりますね。
投稿: 御影渦音 | 2008年8月25日 (月) 22時23分