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2008年8月16日 (土)

♪タコ、手と足ばかりでごめんね~

タコの足6本、実は「手」? えさ探しに活用、利き手も (asahi.com)
http://www.asahi.com/science/update/0814/TKY200808140212.html

 みんなが8本足だと思っているタコだが、実は足の大半は「手」かもしれないという研究結果を、欧州の水族館「シー・ライフ」のチームが発表した。AFP通信が伝えた。特に一番前の2本は探索を担い「生きた獲物に忍び寄り、飛びかかって捕まえるのに役立っている」という。
 英国、ドイツ、ベルギーなどの16カ所の水族館で、タコの足の働きを調べる実験をした。すると、一番後ろの2本が主に移動を受け持っていたのに対し、前方の6本はえさの探索、調査などさまざまな目的で使われ、むしろ「手」に近い働きをしていた。
 また、こうした「手」の使い方をみると、タコによって右利き、左利きがいることもわかった。色の好みもさまざまで、研究チームのアレックス・ジェラード氏は「タコは非常に強い個性をもっている」としている。

Octopuses more arms than legs: research (Yahoo! News)
http://news.yahoo.com/s/afp/20080813/od_afp/britainanimalsresearchoffbeat

However, he does not believe octopuses -- named after the ancient Greek for eight footed -- will have to be give a new name.
"The name's pretty good and they would have to rename James Bond movies," he said.

 asahi.com の記事を読んだだけではなにが言いたいのかいまひとつよくわからなかったのだが、元記事を読んでようやく納得がいった。

 つまり、タコに八本ついている“アレ”は、ハードウェアとしてはまったく同じだが、ソフトウェアレベルで機能が分化していると言いたいのだな。実証的研究によってあきらかにしたのはたいしたものだが、情報処理の効率化という観点で考えれば、予測はつきそうな話だ。つまり、タコの情報処理系が“次の直近のアクション”を起こそうとする場合に、いちいち八通りの可能性を検討しているとは考えにくい。そんな効率の悪いことをしているのだとしたら、タコが八本も“アレ”を持っていることにたいした生存価はないだろう。タコが生まれて自然界で運動を繰り返すうちに、おのずと情報処理の“定石”のようなものが形成されてくるはずだ。文字どおり“決まり手”(“決まり足”でもいいけどさ)ができてくるのだろう。すべての“アレ”を同列に扱って処理するよりも、決まり手を作るほうがタコの脳にかかる負荷は小さいに決まっている。Life finds a way. タコは、いままで生き残ってきた中で、柔軟性と効率性を計りにかけて、このような情報処理を落としどころとして選択したのだ。

 それにしても、「ジェームズ・ボンド映画を改題しなくちゃならんようでは困るからね」とは、イギリスの学者らしいユーモアですな。

 本筋とは関係ない話だけど、octopus の複数形は正式には octopi ではないのかとツッコむ人もいるかもしれないが、英語圏のメディアでも octopuses といった完全に英語化した複数形はごくふつうに使われている。というか、むしろ多数派だ。focus の複数形も foci よりは focuses のほうが目にする頻度はずっと高い。まあ、たぶん、英語ネイティブの世界でも、ギリシア語やラテン語といった古典語の教養が廃れてきて、日常的慣用の圧力に屈してきているということなのでしょうな。日本語の“ら抜き言葉”みたいなもんかな? 面白いことに、fungus の複数形は、fungi のほうが(まだ)優勢なようだ。つまり、「菌」なんて言葉は、「タコ」や「焦点」よりもずっと日常生活での使用頻度が低いということなのだろう。



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