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2008年8月29日 (金)

G-SHOCK タフソーラー 電波時計 GW-5500-1AJF MULTI BAND5(CASIO)

 以前、G-SHOCKを買ったときには「こいつは二十年は使えそうだよなあ」などとほざいていたが、さすがにそろそろ浮気したくなった。かつての名機 DW-5500 の復刻進化形として去年出た反転液晶モデルの GW-5500-1AJF にかなりグッとキテいたんだけれども、先日、アマゾンをうろついていたらたまたま目に飛び込んできて、メタルもいいけど樹脂タイプの四角いのもいいなあと、ついつい耐え切れなくなってポチっとやってしまったのだった。

 実物は時計屋で見たことがあったのだけれども、いま改めてその夾雑物を極限まで削ぎ落とした真っ黒けの筐体を撫でまわしてみると、いやあ、惚れますわ。これ以上、地味な時計はあるまい。曜日・月日・時分秒がまったく無駄なく配置されている黒い文字盤。差し色を一切排除し、ビスとベゼルの蓋とベルトのバックルのシルバー以外は、ひたすら黒、黒、黒、黒、黒で押し通している。G-SHOCK を知らない人が見れば、せいぜい三千円くらいのチープな時計に見えるだろうあたりがまた、そこはかとなく痛快でよろしい(まあ、一万五千円だって充分 inexpensive だけど。でも、けっして cheap ではない)。最初の防塵・防泥モデル DW-5500 を模してはいるが、そこは二十一世紀、ソーラーバッテリーの電波時計である。蛍光灯であれ光にさえ当てておけば、なにもしなくてもいつもぴったり秒まで合っている。テレビの時報とぴったりに「ピピッ」と鳴るのを聴くのが密かな楽しみになる。日本が世界に誇る最高性能の腕時計であろう。オメガだのローレックスだのフランク・ミュラーだのをしているやつは非国民なので、石を投げつけてよろしい。

 つまるところおれは思うのだが、G-SHOCK の魅力というのは『刑事コロンボ』なんだよな。おれの言いたいこと、わかるよね? 「いい歳をしたおっさんが学生みたいなチープな時計しやがって」とでも言いたげな視線を左腕に感じるとき、おれは「愚か者め、非国民め、ええかっこしいめ」と腹の中で嘲笑しつつ、このメカのすばらしさにしばし陶然となる。これ以上ないくらい地味で、これ以上ないくらい高性能――ああ、機械って、なんてセクシーなんだ。

 G-SHOCK には、映画などで露出した“有名人着用モデル”というやつがあり、スティングトム・クルーズが着けていたものが有名であるが、調べてみると、この GW-5500-1AJF は、フジテレビの月9ドラマ『薔薇のない花屋』香取慎吾が着用していたモデルであるらしい。おれは観たことねえなあ。スティングやトム・クルーズに比べるとかなり格が落ちるような気はするが、スタイリストはなかなかいいセンスをしている。スタイリストがもともと G-SHOCK ファンだったのか、仕事熱心な調査魔なのかのどちらかだろう。最初の防塵・防泥モデルの復刻版にして二十気圧防水の G-SHOCK を花屋の主人公に着用させるとは、プロの仕事ですな。“地味”とか“機能一点張り”とかいったキャラクターを表現するには、絶好の小道具でしょうな。

 で、こいつ、なにしろ真っ黒けだから、スーツでもあまり違和感はないんだな。違和感がないどころか、「私は地味も地味で機能性能一点張りの中身しか気にしない人間ですがなにか?」といった強烈な自己主張になっている。下品なキンキラキンの時計が袖口からこれ見よがしに覗いているよりはよほどかっこいい。

 じつに気に入った。今後、こいつをデフォルトにしよう。



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コメント

電波時計といって紹介するのは、ネタバレもいいところなんですが、「15秒/安東能明」という小説はご存知でしょうか。JR運転手の時間に追われる生活の脅迫概念が伝わってきますよ。

投稿: 猛牛軍団 | 2008年8月30日 (土) 10時15分

Gショックと言えばやっぱり限定生産のイルカクジラモデルでしょう。

投稿: Gショック イルクジ | 2008年9月27日 (土) 19時20分

>猛牛軍団さん

 ご紹介くださった本、なかなか面白そうですね。私もあの“日勤教育”というのはあまりにも異常だと前から思っていたのです(まあ、誰でもそう思うでしょうけど)。だいたい、どう考えても、なんの教育(?)効果もないでしょうしねえ。かねてから私は、日本の鉄道はあまりにも時間に正確すぎるのではないかと思っています。もしも、少々時刻表とズレる代わりに運賃が安くなるのだとしたら、そっちを取る乗客も少なくないのではないでしょうか? 強迫的ですよね。ほら、よくいるじゃないですか、試験で絶対100点取らないと気がすまないやつ。べつに95点でええやん。あとの5点を取るための労力ってのは、たいてい損益分岐点(笑)を越えます。まあ、マニアというものは、ほかの教科の勉強をそっちのけにしてでも、自分のこだわる教科では100点取りたがるものですが……。日本の鉄道って、なんかそんな感じですよね。


>Gショック イルクジさん

 いやあ、たしかにアウトドアならイルクジはカッコいいとは思うのですが、私はインドア派のG-SHOCKファンなもので(^_^;)、やっぱり黒系が好きですね。ちょっと、スーツにイルクジはあまりにも苦しい。

 ちなみに、SFの世界では「イルクラ」というのも人口に膾炙しております。

投稿: 冬樹蛉 | 2008年10月 2日 (木) 00時46分

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» 15秒/安東能明 [言わせてもらいますが]
電車が15秒遅れただけで日勤教育を受けて、閑職に回された運転手が自殺するところから始まる。この15秒遅れた原因は何だったのか。しかも電車だけではなく、工場での事故や、ケーブルテレビのエラーも発生している。しかし、この事故はきわめて限定的な範囲で起きてい...... [続きを読む]

受信: 2008年8月30日 (土) 10時17分

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