「教育委員は誰か辞めてはいないんですか?」
高校一年生の姪が、おれの姪にしては英語が苦手なもんだから(まあ、あんまり血縁は関係ないわな)、少し前に、中学の基礎の復習もしっかりできるような高校生向けのよさげな参考書がないかとネットでいろいろ漁ったところ、英語教育の玄人筋にたいへん評判のよい『高校これでわかる基礎英語―基礎からのシグマベスト』(組田幸一郎・宮腰愛美・佐野正之/文英堂)ってのを見つけ、姪に勝手に送りつけて押しつけた。姪は迷惑しているだろうが、おれの気がすまん。おれは英語がそこそこできるが、英語教育に関しては素人である。NHKの講座なんかの最近の教えかたを観ては、「おれたちが学生のころに比べて、ずいぶん進んだなあ」と、いまだに蒙を啓かれたりしているくらいだ。とはいえ、おれがなんだかんだで影響を受けた英語の先生三巨頭(國弘正雄、倉谷直臣、松本道弘)のうちのひとり、國弘先生ご推薦の本であるからして、とんちんかんな参考書では絶対にあるまい。さすが、漢文ならぬ英文の“只管朗読”を推奨なさる國弘先生お薦めだけあって、「声に出して読ませる」「書かせる」に力を入れているのは、学習参考書として絶対に正しいとおれも思う。
まあ、姪はそもそも英語という言語そのものが生理的に嫌いなようなので、有効利用するとはとても思えないのだが、おれ自身の経験に照らすと、良書というものは、とにかく当座読もうが読むまいが、“それが手元にある”ということが非常に大事である。ふとしたタイミングで、汗を大量にかいたときに塩気のものが欲しくなるかのごとく、魔法のようにぱらぱらとめくってしまい、その真価に吸い寄せられるように気づくということがあるのである。不思議だが、ほんとうだ。こういう経験のある本読みは、当面読めないだろうなと思いつつも、本能が命じた本をとにかく買って手元に置いておきたがる。
で、なんの話かというと、姪が英語が苦手なおかげで、おれは情報収集の過程でこの参考書を書いた先生、組田幸一郎氏のブログ「英語教育にもの申す」を発見し、しばしば覗かせてもらっている。学校英語教育の現場の方の声としてたいへん読み応えのある内容で、非常に勉強になる。まったく、姪のおかげだ。
現時点での最新エントリー「この国は弱いものいじめが通るのか?」には、たいへん感銘を受けた。これは、安全圏からコメンテーターがほざいている台詞ではない。現職の教師が風当たりを承知で投げかけている勇気ある言葉なのだ――
その一方で、教育長が辞職をしないのはどうして? 県の教育のトップが、「知らなかった」だけで、その職にとどまるのでしょうか。武士としての志が全く感じられない。そんな人間が、教育畑で偉くなっていくのって、ホントに良いんですか。
教育委員は誰か辞めてはいないんですか?
秘書が口利きをしたといわれている議員が辞職しないのはどうして? 報道で名前が出てこなければ良いんですか? 結局は、秘書が行ったこと、自分は知らなかったで通すつもりなのだろうか。日本の政治って、所詮はこんなもんなんでしょうか。
だいたい、今回の件は大分だけなのかい? そして、教員だけなのかい? 地方自治体の公務員にコネってないのかい? これについて、どうしようもないほどの、腹立たしさがあるけれど、あえて言うまい。
しかし、組織的な矛盾について、若い教師が辞めることで、一件落着にしてはいけないだろう。
いやあ、おれはこの先生、ますます好きになっちゃったよ。武士(もののふ)だね。「生涯一教諭のススメ」ってエントリーもしびれるぞ。なんか、これ読むと、教師の業界って、ソフトウェア業界にちょっと似てるな。
もはや制度的にはぐちゃぐちゃと言ってもよいわが国の教育であるが、この先生みたいな方々が、上向きでも内向きでもなく、子供のほうだけを向いていらっしゃるかぎり、まだまだ日本も捨てたもんじゃないと、ちょっと安心するのである。痴漢とか盗撮とかで捕まってるバカも少なからずいるけどね。
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コメント
ご紹介を下さいまして、ありがとうございました。その上、拙著のことも高く評価をしてくださって、重ねて御礼申し上げます。これからもどうか拙ブログに足をお運び下さい。
ここまで誉められてしまって、ちょっと照れくさい気持ちで一杯です でも、共感して下さった方がいて、書いて良かったな、と思っています。
投稿: 倫太郎 | 2008年7月28日 (月) 21時03分
>倫太郎さん
これはこれは、ようこそいらっしゃいました。
疲弊した制度の矛盾というのは、業界を問わず、現場ではどうにもならないものですが、その矛盾に直接メスを入れるには、本来自分がなりたくなかったものにならなくちゃならないわけですよね、政治家とか。そんなことをするには、あまりに人生は短く、時間がもったいない。きっと、学校の先生だけじゃなく、お医者さんや看護師さんや介護士さんなんかも、同じような気持ちなんだろうと思います。自分が身を置いている制度はむちゃくちゃだと歯噛みしてらっしゃることでしょう。でも、自分が政治家になってる暇があったら、目の前の患者をひとりでも救いたい、と。
ですから、そういう疲弊した制度を少しでも改める方向に持ってゆくには、間接的ではありますが、現場の方々が声を挙げて、世間から矛盾がよく見えるようにすることだと思います。政治家を選んでいるのは、世間の人々ですから。制度が疲弊している世界で、その世界の内側に閉じてしまったのでは、世間からはなんにも見えませんし。そういう意味で、倫太郎さんのブログは価値ある声だと思います。
残念ながら愚姪(なんて言いかたあるのかな)は、先生の参考書をあまり有効活用していないようではありますが(^_^;)、いいものはきっといつかわかる日が来るだろうと勝手に思っております。
投稿: 冬樹蛉 | 2008年7月29日 (火) 02時02分