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2008年7月 2日 (水)

躍動する奔放な死体

Donors sign up to have bodies dissected, displayed (CNN.com)
http://www.cnn.com/2008/TECH/science/06/30/body.worlds/index.html

 おわわわ、こういうのは小林泰三さんとかがいかにも好きそうだなあ。

 死体の体液や脂肪をプラスティックで置き換える plastination という技術でもって、死体がそのまま展示物になるわけである。ただただフツーに埋葬されたり火葬されたりするよりは、死後、自分の遺体を人々の教育や啓発に役立てたいと、この死体展示会のために“ドナー登録”をする人が、北米で八百人、全世界で八千六百人もいるそうなのである。英語の苦手な方は、写真だけでも見てほしいが、いや、なかなかこれはすごいものですぜ。なんか、映画の『AKIRA』みたいだ。

 おれはあんまり人様の鑑賞に堪えるような身体をしているとは思えないが、その思想には共感できるものがあるな。おれはいかなる生気論的な立場も取らないので、死んでしまったら、遺体、というか、死体は、放っておけば腐ってゆくばかりの、ただの有機物の塊だと思っている。どうせなら、そういうものを役立てる方法があるなら、なんらかのカタチで役立てたいとも思っている。

 医者の卵のために献体するという手もあるが、多くの人の目に触れるという点では、自分の遺体の利用法としては、こういう“展示”という方法も、オプションのひとつに入れておいてもいいだろう。人体というのは美しいものだなあと見学者あるいは見物人を感嘆させることはできないだろうが、煙草を吸ってるとこんなふうになりますよ、酒を飲みすぎるとこんなふうになりますよという見本くらいにはなれるかもしれない。

 虎でなくても、死して身体を遺すテクノロジーがあることはあるわけだ。



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コメント

10年くらい前、有楽町の国際フォーラムでこれの展示会やったんですよねー。けっこう人気で、第二弾、第三弾くらいはやったんじゃなかったかと思います。当時はホントに「死体」って感じでしたが、今はたいそう美しいスポーツのフォームとかのプラスティネーションもあるそうです。また来ないかなあ。

ところでこの技術を開発したヴァン・ヘイゲン博士はちょーヘンな人で、二年くらい前、イギリスで「公開解剖のテレビ中継」をやって話題になってました。思想には共感するものの、やることがどぎつ過ぎる……coldsweats02

投稿: ふみお | 2008年7月 2日 (水) 09時34分

私も行きましたよ「人体の不思議展」。せっかくならもう少し詳細に解説とか説明とかして欲しかったですね、見せるだけでなくdown

別の意味の死体ですが、今年上映されたハンガリー映画『タクシデルミア~ある剥製師の遺言』も凄いです。親子三代に渡る話なのですが、最後の孫が剥製師で、様々な剥製が出て来てeyeなかなかの見ものですよbleah

投稿: TOMOKO | 2008年7月 2日 (水) 12時16分

人体の不思議展、オレも行きました。
オレ的には解説に特別不足はないと感じたのですが、お客さんがキャーキャー騒いで、ゲテモノ扱い的な反応だったのが不快で仕方なかったですね。
話に聞く解剖実習のときの医学生の不謹慎な態度なんかと同じで、仕方の無いことなのかもしれませんが。

投稿: TORI | 2008年7月 2日 (水) 13時43分

「笑い」や「茶化し」「お祭り騒ぎ」は、重大すぎるものごとを受け止めるための緩衝材として必要なことがままあるので(ヨーロッパ中世史ではこれ系の研究が多いですよね)、あの時のキャーキャーした反応は人間として普通のことかもしれません。問題はそれが落ち着いた後の受け止め方でしょうかねえ。

ヴァン・ヘイゲン博士も、上記の解剖中継の時、わざと「いかにも死神」然としたとんがり帽子をかぶって出て来たそうです。ああいう活動をしている人だからこそ、「笑い・茶化し」の段階は必要と知っているのかも。

投稿: ふみお | 2008年7月 2日 (水) 14時56分

|問題はそれが落ち着いた後の受け止め方でしょうかねえ。

 もしかすると、我々日本人は、もしかすると欧米から時々流れてくる「宇宙人の死体の解体ビデオ」などの情報を間違った視点で受け止めていたのかもしれない。真偽の検証などという無粋なことはしないのが紳士の嗜み。

投稿: 林 譲治 | 2008年7月 2日 (水) 18時33分

>人体の不思議展

今年は青森と盛岡でやっているようですよ。

http://www.jintai.co.jp/index_top.html

投稿: 小林泰三 | 2008年7月 2日 (水) 22時48分

ふみおさん:
なるほど!重大に捉えていないという意味では終始冷静に筋肉の構造とかを見ていたオレのほうがよほど不謹慎であったとも言えるんかも知れないなあ。

投稿: TORI | 2008年7月 4日 (金) 12時06分

うちの妹はあれを見た後、ミートソースのパスタを食べたそうですけどねえ(笑)。

投稿: ふみお | 2008年7月 4日 (金) 22時09分

ドナーが本当に望んでいるのなら問題ないんだが、このプラスティネーション工場が中国の大連にあって法輪功の死刑囚とか闇市場から死体を調達していると言う噂が絶えないというのがどうもなー。
何より死後硬直の始まる前に処理作業にかからなければいけないという現実からすると工場の近所で死なないといけないのかと。

投稿: 超時空漫才 | 2008年7月 8日 (火) 05時38分

 みなさん、けっこう行ってらっしゃるですねえ、「人体の不思議展」。私は電車の吊り広告で見たことがあるだけで、行ったことないです。

 なんちゅうか、死体というものを、われわれはもっと身近に感じられるようにしたほうがいいと思うのです。その点では、この手の展覧会の主旨には賛同しますね。自分もいつかは死体になるわけですから。

>林譲治さん
>我々日本人は、もしかすると欧米から時々流れてくる「宇宙人の死体の解体ビデオ」などの情報を間違った視点で受け止めていたのかもしれない

 それは充分検討してみるに値する着眼だと思います。“宇宙人”ってところよりも、むしろ“死体”に重点があるのが日本人なのかも。


>超時空漫才さん

 ああ、それはCNNの記事にも、同じような指摘がありますね。法輪功と名指しはしてないですけど。ヘイゲン博士はあくまで、類似の展示会はいざ知らず、自分のところのはちゃんとドナーの同意を得ていると主張してらっしゃるようです。

投稿: 冬樹蛉 | 2008年7月 8日 (火) 23時05分

標本作成のために銃殺した中国人死刑囚を闇で売買して加工し皮をはいで死体解剖保存法をすり抜け「献体」とだまして「見世物」にして金儲けしています。下記サイトをご覧ください。
http://datefile.iza.ne.jp/blog/entry/484464/
http://abcnews.go.com/Blotter/story?id=4296982&page=1
http://www.observechina.net/info/artshow.asp?ID=47822
YouTube検索>Black Market in BodiesでABCnewsの潜入レポートが観れます
http://jp.youtube.com/watch?v=LQLjOWp34O8

投稿: 「肉汁」注意死体の冒涜犯罪展 | 2008年7月11日 (金) 13時53分

>「肉汁」注意死体の冒涜犯罪展さん

 こういう報道がABCなどであったから、ヘイゲン博士は「うちのはちがう」とCNNで言っているのでしょうね。おそらく、本人の同意を得ない死体の売買といったことは、実際に行なわれているのでしょう。plastic model for medical education などと法をかいくぐるとは考えたものです。宅配便の誤配で、プラスティサイズドされた死体が一般家庭に送りつけられてきたなんてエピソードには、不謹慎ながら大笑いしてしまいました。

 ヘイゲン博士のところの展示会が実際にどうなのかは、私には知る由もないですが、もし本人の同意を得ない形での死体の利用が行なわれているのだとしたら、それはあってはならないことですね。

 ヘイゲン博士の展示会が疑いを晴らすには、死体の身元を本人の同意を得たうえで明らかにして展示するといった方法を取るしかないでしょうね。仮に、私の死体が「これは冬樹蛉の死体だったものをプラスティックで置換したもんです」と展示されるなら、それはそれで私が同意したならオーケーです。ドナー登録をするような人なら、身元を明かされてもオーケーという人も少なからずいることでしょう。ただ、宗教的な理由等で、私のようには考えない人の意志は尊重されるべきです。

 微妙なのは、プラスティネーション処理を行なった死体は、死体そのものなのか、死体を鋳型に作ったプラスティックのモデルにすぎないのかといったあたりの解釈にグレーゾーンが存在している点でしょうね。そこを突いて、脱法性の高い取り引きが行なわれたりしているようですから。本人の意志に反して死体を闇取り引きしているようなコネクションがあるなら、そういうのはアメリカ政府としても叩き潰すべきでしょう。

投稿: 冬樹蛉 | 2008年7月15日 (火) 01時16分

 そういや、映画「ロボコップ」。

 ロボコップは機械化された人間、サイボーグなわけです。でも、ロボコップを作った会社は建前としてロボコップは人間ではなく、人間の死体(物)を材料の一部に使ったロボット(物)として扱う。
 とはいえ、やっぱり本当は人間なんですが、それを意識させないためにわざと「ロボ」と名前に入れているわけですね。

 医薬品や医療用材料には血液や硬膜など人体由来の材料から作られた製品があります。これらは使用が目立たないので問題になってないのだと思います。
 でも、「死体」を素材にした製品が商品として世間の注目を浴びたら、問題になるんでしょうねぇ。

投稿: 東部戦線 | 2008年7月15日 (火) 12時36分

>東部戦線さん

 そうなんですよねえ。ロボコップって、ふつうの分類なら、ロボットじゃなくてサイボーグですよね。PC-DOSで動いてるサイボーグ(爆)。

 ヒトの脳硬膜については、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の感染源になった事件が大きく報道されたこともあって、一般にかなり広く認識されているんじゃないでしょうか。

 “脳死は人の死である”という建前が支配的になるにつれて、“脳が死んでりゃ残りは人じゃない”という考えもまた一般的になってきつつあるような気がします。私自身は頭では“脳が死んでりゃ残りは人じゃない”とぶっちゃけたところ思ってますが、やっぱり生前よく知っていた人の死体が目の前にあった場合、単なる物体に対する以上のなにかを感じてしまいます。その“感じ”もまた、単なる愛着や慣れ以上のなにものでもないと、わかってしまうのですけれども。まあ、感情というのは難しいですね。

投稿: 冬樹蛉 | 2008年7月18日 (金) 01時30分

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