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2008年4月20日 (日)

片面にバターを塗ったトーストは、とても高いところから落とすと「マーフィーの法則」に従うか?

 ふと思い出したのだが、むかし、「マーフィーの法則」ってのが流行りましたなあ。中でもおれが好きだったのは、「トーストがバターを塗った面を下にして着地する確率は、カーペットの値段に比例する」(あるいは、「トーストは必ずバターを塗った面を下にして着地する」と言い習わされている)といったやつだ。まあ、“法則”というほど再現性があるかどうかは別として、悪い結果になったときのほうが、人間、印象に残るものだから、まるで法則のように見えるということなのだろう。そこいらへんの道路にはいつもタクシーが走っているのを見かけるようになーんとなくふだんは思っているのだが、いざタクシーを捕まえたいときにかぎって見つからないように思えるといった“印象のマジック”なのだな。

 で、トーストだ。なんでも、人間の身長くらいのところから片面にバターを塗ったトーストを落とすと、バター面を下にして落ちる確率は1/2を上まわると、物理的なファクターをいろいろ考慮して計算で導いた人がいるそうなんだが(ご苦労さまです)、実際のところ、どうなのかねえ? 人間の身長くらいの高さから落とすのなら、たしかに半回転して落ちる確率のほうが高そうな気はするんだが、それはバター面を上にして手に持っていることが多いという前提があってのことだ。トーストの耳を地表からの鉛直線に重なるようにして(つまり、トーストを縦にして)落とした場合、人間の身長くらい(実際には、胸から腹にかけての高さくらいが多いだろう)のところから落とすのなら、バター面が上になる確率も下になる確率も、ほとんど変わらんだろうと思う。

 ここまでは前振りである。では、すごく高いところから、片面にバター(マーガリンでもいいよ)を塗ったトーストを落としたとしたら、バター面を下に着地する確率はどうなるだろう――と、ぼーっとしているときにうっかり考えてしまったわけなのである。こういうことは、トイレでウンコきばってるときとか、風呂で鼻歌唄ってるときとかに、だしぬけに思いつくことが多い。

 そうだなあ、まあ、ざっくり一万メートルくらいのところから落とすとしようか。落としかたは、公平を期するために、やはり地面からの鉛直線にトーストの耳を揃え、“縦”に落とすことにしよう。

 最初、トーストはまっすぐ落ちてゆくだろう。が、バターを塗った面と塗っていない面とでは、空気の流れかたが多少ちがうはずである。非バター面では、トーストの表面に細かな凸凹があるため、空気の流れはうまくトースト表面近くを流れてゆくだろう。空気の小さな渦があちこちにできるだろうから、全体的に見ると、かえって空気はトースト表面に吸いつくようにスムーズに流れるはずだ。

 一方、バター面はつるつるしている。よって、空気の流れはトースト表面から少し離れ、そこに不規則に大きな渦ができたりするだろう。よって、バター面側は、トースト表面近くを空気が流れている非バター面に比べると、わずかに気圧が下がるのではなかろうか。となると、トーストは最初まっすぐ地面に向かって縦に落ちてゆくが、そのうちバター面側にカーブしはじめるだろう。

 すると、カーブしはじめたことによって、非バター面は空気の抵抗をもろに受けるようになり、落下運動そのものにブレーキがかかりはじめ、トーストは一気に非バター面を下にしてバター面側に「し」の字を描くように運動し、わずかに上昇すらするかもしれん。飛行機が失速したような状態だ。

 こうなると、トーストの両側の圧力差が急になくなり、そこからはまたまっすぐ落ちはじめ、充分速度を得るとトーストの両側にまた圧力差が生じて、カーブして失速する――ということを繰り返しながら落ちてゆくだろう。つまりトーストは、ちょうど木の葉がひらひらと舞い落ちるように、右へ左へと振動しながら落ちてゆくのではなかろうか。

 その過程全体を見ると、トーストが失速するときにはバター面側にカーブして失速するのだから、トーストのバター面が上を向いている時間の総計は、非バター面が上を向いている時間の総計を上まわるはずである。よって、当然、確率的には、着地時にはバター面が上を向いている確率のほうが高くなるはずだ。

 というわけで、充分に高いところから片面にバターを塗ったトーストを落とすと、バターを塗った面を上にして着地する確率のほうがずっと高くなるとおれは思うのだが、実際にはどうなるでしょうね? 『トリビアの泉』の特番かなにかで、百回くらい実験してデータを取ってくれないものかねえ? これは、空気はあるが無重量状態の場所でブーメランを投げるくらい興味深い実験なのではないかと思うがどうか。



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コメント

アメリカの "Mythbusters"という番組(日本では「怪しい伝説」として放映)の第28話でその実験をやっていました。(http://mythbusters-wiki.discovery.com/page/Buttered+Toast)建物の屋上(20メートルくらい)のところから落とす実験でした。

この実験では、バター面が上になることが多くなっていました。バターを塗るときにトーストが「反って」しまうのが原因ではないか、と番組では言っていました。

投稿: k-takahashi | 2008年4月20日 (日) 12時13分

>物理的なファクターをいろいろ考慮して計算で導いた人

『変な学術研究1』(エドゥアール・ロネ ハヤカワ文庫)によると、ロバート・マシューズという研究者が「テーブルからバター付きトーストを水平に投げ出す実験」を行って証明したそうです。
さらに、「テーブルが高ければ1回転してバター面が上になるはずだ」と考えたマシューズは実験を繰り返し、テーブルの高さが3メートル以上あれば良い、という報告もしているそうです。

投稿: アダチ@初音ミク中毒 | 2008年4月20日 (日) 23時51分

 飛行機の主翼は裏表非対称になっていて、空気の流れる速さが異なるようになっています。それによって飛行機が前進すると、主翼を上に持ち上げる力、揚力が発生するわけですね。
 航空機開発の初期にはこの理屈がよくわからず、平らな主翼の飛行機を作ったりする人がいたようです。
 ここに理屈が先行して飛行機を創ろうとしたパラレルワールドがあったとします。
 その世界の人たちはまず揚力というものを考えついて、それに沿って飛行機を創ろうとする。たとえば、主翼の上面の摩擦抵抗を少なくすることで空気の流速を高めて、揚力を発生させようとするかもしれません。
 つまり主翼(というか、たぶん機体全体)の上面にバターを塗って摩擦を減らすことで飛び上がる飛行機を創るってのはどうでしょう?

投稿: 東部戦線 | 2008年4月21日 (月) 04時11分

>落下するバタートーストの力学的分析
は96年度のイグノーベル賞物理学賞を受賞しているようです。

高高度からの落下実験はそれを発展させたものになることでしょう♪

投稿: Dominion525 | 2008年4月21日 (月) 11時04分

あまりにも高いところから落としたら、途中で燃えるかと。

それ以上高くなると、落ちないでしょうねえ。

投稿: ふみお | 2008年4月22日 (火) 00時28分

>k-takahashiさん

 おおお、このバカバカしさ加減は、『トリビアの泉』や『探偵!ナイトスクープ』に迫るものがありますね。なーるほど、“反る”というのは考慮に入れなかったな。たしかにバター(うちはまずマーガリンですが)を塗ったら反りますね。時間が経つにつれて、反り加減は大きくなるような。

 "cup-like" effect ねえ。言い得て妙ですね。この効果は、つまるところバター面側の圧力が下がるから得られるわけでしょう? となると、バター面がつるつるであることによって得られる圧力の減少に拍車をかけることになりますね。落とす直前にバターを塗って、なるべく反らないようにした場合もバター面が上になる確率が高いのかどうか実験してほしいところです。


>アダチ@初音ミク中毒さん

 どうやらその人の場合は、空力的なことは考えずに、回転の位相と落下速度から結論を導いているようですね。日常生活のスケールではそのほうが現実的なわけですが、高~いところから落とす考察もしてほしいなあ。


>東部戦線さん
>つまり主翼(というか、たぶん機体全体)の上面にバターを塗って摩擦を減らすことで飛び上がる飛行機を創るってのはどうでしょう?

 これ、面白いすね。なんか、発想の匂いがスチームパンク的(?)です。翼の断面を研究することを誰も思いつかなかったパラレルワールド。バカSFになりそうです。


>Dominion525さん
>96年度のイグノーベル賞物理学賞を受賞

 おおおお、そんなむかしのことは忘れていました。そんな名誉ある賞がすでにこの分野の研究に与えられていたとは! ぜひ、高いところからも落としてほしいです。


>ふみおさん
>それ以上高くなると、落ちないでしょうねえ。

 トーストが太陽ヨットになって、加速してゆくかもしれませんよ。

投稿: 冬樹蛉 | 2008年4月22日 (火) 01時47分

更に猫を加えたパラドックスがあります。

バター猫のパラドックス - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%BF%E3%83%BC%E7%8C%AB%E3%81%AE%E3%83%91%E3%83%A9%E3%83%89%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9

投稿: lba | 2008年4月22日 (火) 22時51分

>lbaさん

 どひゃひゃひゃ、これは面白いものをありがとうございます。バター猫は知らなかったなあ。バター犬ならよく知ってるんですが(^_^;)。

投稿: 冬樹蛉 | 2008年4月22日 (火) 23時27分

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