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2008年3月 2日 (日)

お買い上げ御礼(2008年2月)

■2008年2月

【最も値段の高いもの】

 どうも、このブログにいらっしゃる方には、よくよくロボット好きの方が多いようで、2月もロボットがランクイン。まあ、これは《攻殻機動隊》ネタだから、キャラクター商品でもあるわけだが、子供がお小遣い貯めて買っているのではおそらくないだろう。


【最も値段の安いもの】

 マーケットプレイスで一円とか十円とかのものが売れない月は、わりとライトノベルがこの枠にランクインしやすい。中心的読者層が若年層だから、ここいらへんに価格づけせざるを得ないんだろう。おれはこの人のは読んだことないんだが、ペンネームは「たけはや」って読むのね。どうも、最近のライトノベル系の人は、ちゃんと調べてからでないと迂闊に読めないような難読ペンネームが多いよね(人のことは言えないかもしれんが)。おそらくこれは、「名前がちゃんと読める」ということを通じて若者同士の“仲間ウチ感覚”みたいなものを醸成するための戦略なのだろう。若年層市場向けのペンネームは、知らない人には読めなきゃ読めないほどいいのかもしれん? とはいえ、小野不由美岩井志麻子桜庭一樹みたいな人たちがどんどん出てくる可能性を孕んだ市場であるからして、まるで判じもののような、あんまりぶっとんで読みにくいものもどうかと思うけれども。「健速」なんて、まだ読みやすいほうだよね。


【最も多く売れたもの】

 これはまあ、おれ自身プッシュしているんで、ランクインしてくれて嬉しい。鋭い着眼とキレのいいユーモア感覚は、往年の『英会話上達法』ファンにはたまりません。文章もさることながら、ご自身で撮影なさっている写真が活きいきとしていてこれまたすごい。これはむかしの『英会話上達法』にはなかった楽しみだ。

 英語が得意な人には、「結局あんたはガイジンに生まれたかったのか? 日本人に生まれたことを“損なこと”として後悔(?)しているのか?」と思わせるような人がしばしばいたりするのだが、倉谷直臣という人のすばらしいところは、日本人が外国語として英語を駆使することの重要性を、日本人としてのアイデンティティーを売りとばさずに説くところだ。そのスタンスは、彼が外国人に日本語を教えるときにも、ちょうど鏡に映したようにブレずに貫き通されている。倉谷直臣は、日本語を学ぶ外国人に“日本語が母語でないことはハンディキャップだから、日本人でないおまえらは気の毒だ”などといった教えかたはしないのだ。「外国語使用能力には限界があることを知りなさい」と説き、「みなさんは日本語を系統的に学んだのであり、そのことを誇りに思うべきだ」と説くのである。

 人間は生まれる国を選べない。最初に覚える言語を選べない。自分のコアを形作っている言語に引けめを感じるような人生は不幸な人生だろう。本書は、自国語を愛するからこそ、同じように外国語を愛し尊敬することができるようなマインドセットと哲学をさりげなく語っているのだ。


【最もケッタイなもの(主観)】

 「ケッタイな」というのは語弊があるが、邦訳が簡単に手に入るものをあえて原書で読もうという人は、いい意味でちょっと変わった少数派だろうと思う。これを買ったのが若い人だとしたら、その意気やよし。こういう人が、将来、翻訳家になったり編集者になったり評論家になったり書評家になったり作家になったりただのアホ日記書きになったりするのである。

 おれが多少英語ができることがバレている人が、時折、「洋書が読めるようになりたいんですが、どんなのから読めばいいでしょう」などと、なにか勘ちがいして訊いてくることがある。「そりゃ、自分の好きな分野のものを読めばよいのです」と一応答えることにしているけど、たいていの人はSFファンじゃないので、カタギの人には「ただし、SFはやめといたほうがいいです。どこのどういう世界であるかもわからぬ舞台で、どういう生物のものであるかもしれぬ“意識”がいきなり説明抜きに一人称で語り出すような話であるかもしれないからです。初心者は、登場人物が現代の人間である、筋を追うだけでも面白いようなスリラーやホラーやミステリーがいいでしょう」と答えている。なぜなら、外国語の文章を大量に読んでいると、そのうち「何語で読んでいるのかを忘れる」という体験がやってくるもので、それが来たらしめたものだからだ。そのブレークスルーを早く味わうためには、なるべく自分が内容そのものに強い興味を持っている分野に関する文章を読むのがよいと思うからである。

 だが、日本語でSFを読んで面白いと思えるような人で、科学技術用語に抵抗のない人であるなら、クラークは、おすすめリストに入る。原書で最も読みやすい、ヒネてない英語を書く人である。無味乾燥な文章だという意味ではない。非常に論理的に淡々と事実関係を叙述する文章であるからこそ、英国人的なユーモアや英語でしかうまく表現できないような詩情がさりげなく織り込まれている名文だ。おれは訳したことはないけれども、読みやすいということと訳しやすいということは一致しないであろうと推察される。クラークの文章は、読みやすいからこそ、おそらく訳しにくい。英語で意味を取るのは難しくないが、それを日本語でコードしようとすると、「なにかちがう。なにか取りこぼしている。意味が変わってしまう」と悩ませるような文章なのである。だから、英語を英語のまま読んで楽しみたいという人には、持ってこいだと思う。いちいち頭の中で日本語に訳さないと意味が取れないというレベルの人は、素直に邦訳を読んだほうがいい。それは外国語で読んでいることにならないからだ。

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