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2007年12月27日 (木)

日本製の「心のふるさと」

除夜の鐘、自動鐘つき機で「ゴ~ン」? 後継難で急増 (asahi.com)
http://www.asahi.com/life/update/1226/OSK200712260038.html

 無人で鐘を突く機械式の撞木(しゅもく)を採り入れる寺院が増え、今や全国約1600カ所に広がっている。住職が高齢化したり、過疎化で後継者がいなくなったりする突き手不足の中、地域の鐘の音を守りたい住民らの願いがのぞく。タイマーで動く撞木を唯一、製造しているのは奈良市の上田技研産業。日本人の「心のふるさと」を消すまいと、除夜の鐘を控えた年の瀬、駆け込み需要に追われる日々だ。


 「ばあさんや」
 「なんですか、おじいさん」
 「ちょっと寒いんで、窓を閉めてくれんかね」
 「あら、いやですよ、おじいさん。除夜の鐘が聞こえにくいから、少しだけ開けておいてくれと、おじいさんがおっしゃったんじゃありませんか」
 「そんなこと言うたかいな……。除夜の鐘は聴きたいし、この歳じゃ寒いのも身体にこたえるし、いったいどうすりゃいいんじゃろうなあ」
 「ふふふふふ」
 「なんじゃ、ばあさん、その不敵な笑いは?」
 「こんなこともあろうかと密かに買っておいた“自動除夜の鐘聴き機”を、いまこそ試すときですわいな」
 「そ、そりゃいったいどんなものじゃね?」
 「おじいさんのような寒がりの年寄りのために、スイッチを入れると自動的に除夜の鐘を聴いておいてくれる機械ですよ」
 「ひえ~、こりゃ驚いた! するってえとなにかね、その機械は、スイッチを入れると自動的に除夜の鐘を聴いておいてくれるというわけかい?」
 「だから、そう言ってるじゃあありませんか、おじいさん」
 「いやあ、長生きはするもんだね。文明開化の音がするね」
 「じゃあ、スイッチを入れておきますね」
 「うん、頼むわい」


 「おじいさん、コタツで寝ると風邪引きますよ。そろそろ『ゆく年くる年』の時間ですよ」
 「……ん? あ、ああ、もう紅白は終わったのかい」
 「終わりましたよ。今年も小林幸子はすごかったですよ。すっかり衣装と一体化してましたよ」
 「一体化してたのかい?」
 「ええもう、継ぎ目なく」
 「ああ、そうかい。いや、どうもわしは毎年寝てしまっていかんね」
 「お酒をお召しになるからですよ」
 「いやしかし、やっぱり『ゆく年くる年』はNHKだねえ」
 「そうですねえ」
 「ときに、鐘はいくつめかな?」
 「自動除夜の鐘聴き機によれば、次が九十八ですよ」
 「『ゆく年くる年』もいいけど、やっぱり遠くからかすかに聞こえてくるナマの鐘の音色がいいねえ」
 「ちゃんと機械が聴いておいてくれますよ」

 アナウンサー「……そしていま、去りゆく年に最後の鐘の音が響こうとしています。さようなら、三千百七十三年……」

ごぉおおおおお~~~ん

 アナウンサー「……年が明けました。あけましておめでとうございます。西暦三千百七十四年の幕開けです」

 「あけましておめでとう、ばあさん」
 「あけましておめでとうございます、おじいさん」
 「ありがたいことに、また二人で新年が迎えられたのう、ばあさんや」
 「ほんにありがたいことですよ、おじいさん」
 「じゃあ、そろそろ寝るか、ばあさんや」
 「そうですね、おじいさん」
 「自動除夜の鐘聴き機のスイッチを切るのを忘れんようにな」
 「いやですよ、おじいさん。ちゃんと百八つ聴いたら、自動的にスイッチが切れるんですよ」
 「ほえ~、よくできてるもんだね」
 「そんなのあたりまえじゃありませんか、おじいさん」
 「そんなものかね。じゃ、おやすみ、ばあさん」
 「おやすみなさい、おじいさん。今年はよい年でありますように」

 爺さんと婆さんは互いのスイッチを“待機モード”に設定し、七時間かっきりの眠りについた。



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コメント

|西暦三千百七十四年の幕開けです

 ご来光として地平線の彼方から核の光が見えてくる……。

投稿: 林 譲治 | 2007年12月27日 (木) 07時09分

「年寄りは朝が早い」は標準装備ではないのですか?

投稿: ふみお | 2007年12月27日 (木) 23時38分

>林譲治さん

 小ネタにツッコんでいただきどうも(^_^;)。2001年は過ぎちゃいましたから、なんちゅうか、われわれにとってなにか特別な来たるべき年は、2010年、2061年、3001年、3174年ですよねえ。どんな“われわれ”やねん。


>ふみおさん

 大晦日ですから(;^_^)/ この製品は、元日には遅く起きるモードにしてます。

投稿: 冬樹蛉 | 2007年12月29日 (土) 01時05分

そして西暦八千百七十三年の大晦日、いつもの様に自動除夜の鐘突き機と自動除夜の鐘聴き機が厳かに過ぎゆく年を見送る。人類が滅亡してすでに五千年の時が過ぎようとしていた。

投稿: koga | 2007年12月30日 (日) 06時17分

>kogaさん

 いや、もうこの時点でたぶん絶滅してますから(;^_^)/。

投稿: 冬樹蛉 | 2008年1月 3日 (木) 12時23分

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