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2007年12月25日 (火)

『里田まいのおバカ伝説』(竹書房)

 はっきり言って、おれはバカな女が嫌いである。だが、白状しよう、おれは最近里田まいにメロメロだ。テレビにこのコが出ていると、「いったい全体、次になにを口走るのか……」と、手に汗握り固唾を呑んでわくわくせずにはいられない。無視することができない。これはもうではあるまいか。いや、そんなはずはない。おれはバカな女が嫌いなのだ。もし里田まいのアレが演技で、放送作家がすべてネタを書いているのだとしたら、おれはその放送作家に脱帽するよ。そんな異能の天才作家がいたとしたらバレないはずがないと思うので、やっぱり里田まいのアレは“天然”なんであろうか? うーむ、わからん。菊川怜の言いそうなことは、大方見当がつく。だが、里田まいの言いそうなことは、まったく予測不能、というか、そんなものが予測できるような人になんかなりたくない。

 “天然”だとしたら、まったくもって、いったいニューロンがどういうふうに繋がったら、あのような発想が出てくるのか。里田まいがひとたび言葉を発すると、おれの乏しい知識が、おれの凡庸な価値観が、おれの脆弱な思想が、おれのちっぽけな宇宙が、おれの実存が、根底から揺さぶられる。強引かもしれんが、これはもうほとんどSFである。そうか、だからおれは里田まいから目が離せないのか。

 本書は里田まい本人が書いているわけではなく、仕事やプライベートで彼女と関わりのある人々を対象に、里田まいの常軌を逸したエピソードを集めてまわったというスタイルの、じつにまあ、安易な作りの本である。だが、千二百六十円でこれだけ笑えれば上等だ。なにはともあれ笑うことだけが目的であるならば、確実な投資であると言える。

 ここで面白いネタをいろいろ紹介したいのはやまやまだが、なにしろこの本はネタが命なので、とびきり面白いやつはマナーとして書くわけにはいかない。「ヘキサゴン伝説」の章から、おれに関わりの深いネタをふたつ、「予選ペーパーテスト」からひとつ、里田まいのそこそこの珍回答を紹介してみよう。


Q:映画や小説などのジャンル「SF」はどんな言葉の略語でしょう?(正解:[Science Fiction] サイエンス・フィクション)

  「スペシャルファイト」


 い、いやまあ、そう言われてみると、たしかに、いろんな意味で、当たらずといえども遠からずという気もしないではないんだが……。「サンフランシスコ」とか「セックスフレンド」とかは言い古されているんで、なんとなく新鮮かも。


Q:おたまじゃくしが成長するとカエルになりますがヤゴが成長するとどんな生き物になるでしょう?(正解:トンボ)

  「ウミガメ」


 ほんとうにそうだったら面白いのにと思うのは、おれだけではあるまい。


[予選ペーパーテスト 問題6]

 「君の瞳に乾杯!」というセリフで知られる、ハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマンが共演した映画は何でしょう?

  「23の瞳」


 いったい何人いるのか、あんな妖怪とかこんな怪人とかを思い浮かべながら、危うく組み合わせを真剣に考えそうになった。ひょっとすると、目が二十三個ある妖怪が一匹だけいるのかもしれんしな……って、そもそもなんの問題だったっけ?

 こんなのはまだ序の口なのだから怖ろしい。まこと“天然”というのは怖ろしい。芸人殺し、放送作家殺しである。芸人でも放送作家でもなくてよかった。とまあ、こういう類の“里田まい伝説”がでかい活字で一冊ぶん。ふつうに読めば三十分、じっくり味わえば(?)一時間くらいでつるつる読めて笑えます。年末年始、コタツの上に一冊置いておくと、ご家庭が明るくなること請け合い。ただ、お年寄りの方は、心臓に悪いうえに、餅を喉に詰めかねないから、数回に分けて服用なさることをお勧めします。



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コメント

筋肉少女帯の「23の瞳」では12人の子どもの中に暗い目をした“僕”がいるからそれを半分と数えて23なのですが、この方、もしやそれをご存知なのでしょうか^^;

投稿: とも | 2007年12月25日 (火) 07時56分

 ウミガメはなかなかすごいなあ。
カメ、なら考えたら出ると思うんで
すけどねえ。ウミガメには普通の思
考では行かないし、行けないなあ。

投稿: 北野勇作 | 2007年12月25日 (火) 08時37分

でももしこの本を読んで「え、この答え、間違ってるの? 何が違うの? どこが面白いの?」になっちゃったら怖いな。

投稿: ふみお | 2007年12月25日 (火) 10時16分

筒井ネタに二十三の瞳って無かったっけ。

投稿: 竹本昌之 | 2007年12月25日 (火) 18時52分

>ともさん

 たぶん知らないと思います。というか、そのような深読みの余地はまったくないと思います(^_^;)。


>竹本昌之さん

 あったような気もしますが、いずれにせよ、里田まいは知らないと思います。というか、そのような深読みの余地はまったくないと思います(^_^;)。


>ふみおさん

 そういう人が五割を超えたら、どこかに亡命します。


>北野勇作さん

 あんまりネタばらししてもなんなんですが、私がカエルネタやトンボネタが気になるように、北野さんはカメネタが気になることでしょう。

 じ、じつは、こんなのもありました――「ガラパゴス諸島に生息する、リクガメの中で最も大きいカメはなんでしょう?」「海ガメ」

 そやから、リクガメや言うとるやないか、わからんやっちゃな!!

投稿: 冬樹蛉 | 2007年12月25日 (火) 22時11分

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