老劇場は死なず、ただ消えゆくのみ
▼大阪・キタの名物映画館「三番街シネマ」が24日閉館 (asahi.com)
http://www.asahi.com/culture/update/0922/OSK200709220010.html
名物映画館がまた一つ姿を消す――。大阪市北区茶屋町の映画館「三番街シネマ1・2・3」が24日、閉館する。75年の開業以来、デートスポットなどとして多くの人に利用されてきたが、複合映画館(シネコン)の台頭で入館者が激減した。最終日は「想(おも)いでのラストショー」と題し、「サタデー・ナイト・フィーバー」や「影武者」など9作を各500円で上映する。
同館は6階建てのビルの4~6階部分にあり、97年には「もののけ姫」で全国最多の観客を呼び込むなど、計109万人を動員した。しかし、大阪府内にシネコンのオープンが相次ぎ、昨年は約50万人まで減少した。閉館後の利用方法は決まっていないという。
いやあ、なんか寂しいよねえ。おれもここにはずいぶんお世話になった。二十代のころなんぞは、金曜日の夜にはしばしば独りでここいらへんをうろついていた。それだけで楽しかった。むろん、おれは映画は必ず独りで観る。二人で観ようにも相手がおらんわけだが、仮に誘う相手がおったとしても、おれは映画は独りで観たい。
み~んなシネコンになってしまって、思い出深い映画館が次々と消えてゆくのは京都でも同じだ。学生時代に空きっ腹を抱えてガラガラの人気のない映画を観た小劇場も、みな消えてしまったか、シネコンにまとまってしまった。時代の流れと言ってしまえばそれまでだが、寂しいね。たしかにシネコンは便利でいいのだが、なんというか、むかしの映画館が持っていた“悪所”としての雰囲気があまりに希薄だわな。快適すぎる。堂々としすぎている。いやまあ、それはそれで悪くはない。悪くはないが、なにかが足りない……。
映画館ちゅうのはやっぱり、まず前のほうの席は小便臭くて、ハゲちょろけの固い座席に沈み込むようにしてスクリーンを見上げ、尻が痛くならないようにしばしば座りかたを調節する場所であってほしい。やる気のなさそうなおばはんにアイスモナカを売りにきてほしい。昼間からこんなところでこんなものを観ているようでは将来ろくな人間にならないなあと若者に思わせてくれる場所であってほしい。ほうら、ろくな人間にならなかったよ、やっぱり。
かといって、怪しすぎる場所ではそれはそれで身の危険を感じたりするわけであって、映画館というのは、カタギの世界と怪しい世界とをちょうどよい塩梅に繋いでくれる“悪所”であったのだよな、むかしは。大毎地下劇場なんて、どう見てもショッカーの大阪支部であった。おれは『ブレードランナー』を数え切れないほど観ているが、大毎地下で観た『ブレードランナー』は生涯忘れられない。それほど、場所と映画がフィットしていたのだ。
さらば、「三番街シネマ1・2・3」。ありがとう、「三番街シネマ1・2・3」。キミがくれた時間は永遠だ。
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コメント
うちの最寄り駅前の映画館も、数年前に50年の歴史に幕を下ろしました。古いから汚かったけど、ふらっと歩いて行けた。入れ替えがないので、お弁当持ち込んで、同じ映画を何回も連続で観たりしてました。雑居ビルになった今も、前を通るたびに想い出します。
投稿: 湖蝶 | 2007年9月25日 (火) 14時08分
>湖蝶さん
ふらっと歩いてゆけるところに映画館があったなんていいですねー。羨ましい。それほど近くにあると、喪失感が大きいでしょうね。さすがに映画館に歩いてゆけるようなところには住んだことないなあ。
投稿: 冬樹蛉 | 2007年9月25日 (火) 23時52分