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2007年9月24日 (月)

ドミノ起き上がらし

 最近ドミノづいている(?)もんで、“ドミノ起き上がらし”という遊びが可能かどうか考えてみた。たぶん、可能である。

 まず、ドミノ倒しをふつうに地球上で行う。倒れたドミノは、床面にぺたんと伏せた状態にはならず、すべて次のドミノの上にきれいに折り重なっているとする。

 さて、この状態で、地球をまったく同じ大きさの中性子星と一瞬にして入れ替える。ここのところは、ちょっとご家庭では気軽にお試しいただけない技術的困難を伴うかとは思うが、ま、とにかく一瞬にして入れ替える。べつに中性子星でなくブラックホールでもいいのだが、ブラックホールだと事象の地平面上にものを乗せることができないため、強靭きわまりないチョコエッグのような外殻で覆ってやらなくてはならないだろうから、ここは中性子星くらいが適当であろう。

 ここまではよろしいか? で、地球が、大きさは同じままでとてつもない密度の物質と入れ替わったので、その重力場の勾配は非常に大きなものになるだろう。つまり、ほんのわずかな高さの差でも、ドミノにかかる潮汐力は、もとの地球の比ではない。ドミノは次のドミノに折り重なって倒れた状態にあるから、ドミノの最も高い部分と最も低い部分にかかる重力にはかなりの差ができるだろう。ドミノのあらゆる部分には、その部分を中性子星の中心方向とその逆方向へと引き裂こうとする力が働いている。そして、そのすべての合力は、斜めになって倒れているドミノを、地表に対して鉛直に立ち上がらせようとする力となって働くはずだ。SFファンには、ラリイ・ニーヴン『インテグラル・ツリー』に出てくる“インテグラル樹”の姿勢が潮汐力によって安定している状態を思い浮かべていただければ、話が早い。

 だけど、潮汐力が強すぎると、倒れているドミノはいっせいにぴょこんと起き上がってしまい、“ドミノ起き上がらし”らしくない。やはり、ドミノ倒しの逆をやってこその“ドミノ起き上がらし”である。

 そこで、中性子星の密度をうまく調節してやると(これもご家庭ではちょっと出せん味ですなあ)、ドミノ一個を起き上がらせることはできるが、前のドミノにのしかかられていたのでは起き上がらせられないといった最適な潮汐力が得られるであろう。この最適な条件下で“ドミノ起き上がらし”をやると、まず、自分の上に前のドミノがのしかかっていない最初のドミノがぴょこんと起き上がり、次のドミノが起き上がり、また次のドミノが起き上がり……という現象が実現できるはずである。ドミノ倒しの映像を逆回ししたように起き上がるのではなく、最初に倒れたドミノが最初に起き上がるというところが、“ドミノ起き上がらし”の面目躍如(なんの面目だ?)たるところである。

 とても危険な遊びなので、よいこのみんなは、かならずおとなのひとといっしょにやってね。



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コメント

やってみたんですが、難しいですね、コレ。
最初やったら、全然起き上がらない。
条件を変えたら、全部いっぺんに起き上がった。
いまのところ、順番に起き上がらせることには成功していません。出来たら、コツを教えてください。

投稿: 杉並太郎 | 2007年9月24日 (月) 08時27分

潮汐力は重力と慣性力(遠心力)が打ち消し切れない部分に発生する見掛けの力なので、ドミノが立っている床が中性子星に対して、固定されているとしたら、寝ている状態から立っている状態に持ち上げるような力は働かないのではないでしょうか? ただし、床全体が自由落下している状態(軌道上含む)なら、この現象は観測されるでしょう。

投稿: 小林泰三 | 2007年9月24日 (月) 18時03分

>杉並太郎さん

 コツと言われましても、やはり練習あるのみではないかと。


>小林泰三さん

 あ、なるほど! さすがこういうネタの得意なハードSF純愛作家。『インテグラル・ツリー』は、自由落下状態の世界ですし。

 たしかに、一瞬にして入れ替えてしまっては、うまく行きそうにないですね。では、地球を一瞬にして取り去って、地球よりほんの少し直径が小さい中性子星と入れ替えてはどうでしょう? これなら、ドミノは数センチかそこら落下するあいだに姿勢を立て直して、次々と立った状態で着地するのではないでしょうか? 中性子星の大きさの最適値を得るには、ある程度コツがいるかもしれませんが……。

投稿: 冬樹蛉 | 2007年9月25日 (火) 01時49分

>小林泰三さま、冬樹蛉さま

ははぁ、わかりました。
地球は取り去っても床を取り去ってはいけないんですね。
コツは床ですね。そういや、床上手っていう言葉もありますし。

投稿: 杉並太郎 | 2007年9月25日 (火) 07時35分

>杉並太郎さん

 いや、床ごと自由落下しているか、床に向かって自由落下していなきゃならないということです(;^_^)/。

 しかし、「床屋」ってのも妙な言葉ですね。なんか気持ちいいサービスを提供してくれそうだ。いやまあ、たしかに床屋は気持ちいいですけど(なにが言いたい)。

投稿: 冬樹蛉 | 2007年9月25日 (火) 23時49分

>冬樹蛉さま

はい。
床に向かって自由落下だと最初に書いたように全部いっぺんに起き上がってしまうんです。(その上、起き上がるときの回転の中心はドミノの重心になるので倒す前と位置がずれます、たぶん。いや、実は落ちるときの風の抵抗で直立しているのかも)
小林さんが既に言ってますが、正確には部屋ごと自由落下で、潮汐力があるのでドミノと床の間には摩擦があり、それによって床面が起点となって起き上がるんだと思います。
経験上、部屋はあらかじめ絶対剛体にしておいた方がいいです。

投稿: 杉並太郎 | 2007年9月26日 (水) 07時41分

 ええと、この想定が実現したとして、倒れているドミノはのしかかられているドミノに対して、常に「浮力」を及ぼしていますよね。普通のドミノ倒しは初期状態で互いに独立ですから、ここが本質的な相違になるんじゃないでしょうか。
 インテグラル・ツリー式(≒起き上がりこぼし式)のドミノだと、倒れたドミノを押さえつける力は、上にある同じ姿勢のドミノからは供給できません。かといって同じ姿勢でなければ反復現象じゃなくなります。押さえる力は上へ上へと持ち越されていき、一番上のドミノは下にあるドミノすべての「合計浮力」を受けることになります。
 一番上のドミノが解放されると、杉並太郎さんが直面した通り、残りのドミノは音速で反応して一斉に起き上がるでしょう。
 ちなみにこの場合は波動とみなしていいと思います。

投稿: 野尻抱介 | 2007年9月28日 (金) 07時18分

>杉並太郎さん、野尻抱介さん
>インテグラル・ツリー式(≒起き上がりこぼし式)のドミノだと、倒れたドミノを押さえつける力は、上にある同じ姿勢のドミノからは供給できません

 あ、よく考えてみたらそうですね(^_^;)。となると、一個ずつ起き上がらせることは、この方法では難しそうですねえ。うーむ、残念。

>ちなみにこの場合は波動とみなしていいと思います

 起き上がったときに、ドミノの重心を中心に、しばらく振動し続けるでしょうしね。目に見えないだけで、まさに波動の実験用の格子モデルそのままみたいな動きをするでしょうね。

投稿: 冬樹蛉 | 2007年10月 1日 (月) 02時24分

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