牛丼ひとつで人生を描く
以前にも話題にした『特殊清掃「戦う男たち」』というブログだが、最新のエントリー「牛丼」には、改めて感嘆した。優れた短篇小説を一本読んだくらいの読み応えがある。悲しいというよりは、とても清々しい読後感である。
亡くなったこのお婆さんの食生活には、やたら親近感を覚える。というか、このお婆さんは近未来のおれそのものであろう。まあ、おれはこのお婆さんとちがって、近所の独居老人たちから慕われることなどまずあるまいから、特殊清掃の人たちの手を余計に煩わせてしまうかもしれないけどな。そんなことにならないように、お迎えが来そうな歳になったら、象印がやってるポットと連動したモニタシステムのようなものを自分で作って、妹宅にアラートが飛ぶような仕掛けにしておかなくてはなるまいな。
いやしかし、すごいなあ、特殊清掃という仕事。自分でやりたいとはとても思わないけれども、そこにはいくらでもホンモノのドラマが転がっていそうだ。二時間ドラマが「特殊清掃人・○○○○の事件簿」みたいなのを出してこないのが不思議なくらいである。特殊清掃の人を主人公にすれば、検事やら家政婦やらどころではない人間ドラマがいくらでも描けるのではあるまいか。でも、飯食いながら観る人もいるだろうから、やっぱりテレビ用のドラマでは難しいかなあ……。じつにもったいないなあ。
「故人が生きていた余韻を台所に残し」去ってゆくところが渋い。おれの仕事ではまず体験できないようなシーンである。悲しく重く、冷たく温かくダンディーだ。死体ばかり描いているブログなのに、人が生きるということへの共感に溢れている。脱帽。
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コメント
私、牛丼を食べたことありません
理由は特にないんですけど、機会がなくて
インスタントラーメンもここ数年ごぶさたです
理由は3玉100円のうどんのほうが安くつくからです
投稿: かおる | 2007年8月27日 (月) 15時36分
>かおるさん
むかしは牛丼屋には女性の客はほとんどいませんでしたけど、いまは全然そんなことはありませんから、一度お試しになってはいかがでしょうか? 眞鍋かをりが吉野家を出たところでスカウトされたというのは有名な話です。たまに牛丼屋へ行くと、人生変わるかもしれません。
投稿: 冬樹蛉 | 2007年8月30日 (木) 00時45分