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2007年8月27日 (月)

バケツで食ってみたいものがありますか?

バケツでプリン、50リットル (asahi.com)
http://www.asahi.com/komimi/NGY200708250003.html

 見ただけで満腹になりそうな「バケツプリン」と、涼しげな「きんぎょ鉢ゼリー」――。愛知県豊田市松ケ枝町の日本料理店「割烹(かっぽう)さんま亭」のこんな裏メニューが、静かな話題になっている。インターネットで販売したところ、誕生日プレゼントなどとして全国から注文が殺到。店を切り盛りする加藤正雄さん(45)と妻の由香さん(39)は、「一つひとつ心を込めた商品を届けたい」と、手作りの味にこだわる。

(中略)

 プリンの大きさは0.7リットルから50リットルまで11種類。普通より大きいため、気温や湿度、微妙な火加減が仕上がりに影響する。一度にたくさん食べられるように、生クリームは使わず、甘さ控えめであっさりした口当たりに仕上げる。
 3年半前から、インターネットでも販売を開始。クリスマスや誕生日などの行事に合わせて全国から注文が入る。多い日には、店を休んで1日50個以上つくることもある。売れ筋は、値段も手頃な2リットルサイズ(4700円)。市販のカップ入りプリン20個以上にもなる。正雄さんは「まさかこんなに売れるとは。ありがたいことです」と笑う。
 さらに2年半前、由香さんが「きんぎょ鉢ゼリー」を発案。この春から本格的な販売にも乗り出した。
 直径13センチ、高さ11センチの鉢の中を泳ぐ金魚やカメは、梅や抹茶、ブルーベリー風味の白玉細工で、中にはあんこが詰まっている。ゼリーは飾り付けなどが大変で1個仕上げるのに4、5時間もかかる。猛暑が続くこの季節は、涼しさを求める人が多く、人気も急上昇中だ。
 由香さんは「製造方法は企業秘密。遊び心だけじゃなく、おいしく食べてもらうため、手抜きはできない。心を込めて一生懸命つくりたい」と話し、寝る間もない忙しさだ。

 こういうものを食いたくなる気持ち、作りたくなる気持ちはわかるねえ。これはたぶん、プリンとかゼリーとかいったものが、子供のころには“高級なもの”だった世代に共通した反動形成なのだと思う。おれたちの世代の人間というのは、たいてい「いつの日か、○○○○を腹いっぱい、山のように食ってやる!」と、子供のころに夕陽に誓っているのである。大人になったある日、それが意外とたやすくできることに気がつくのだ。

 作る人が「寝る間もない」ほどにこういうものが売れるというのは、やはり、日本中におれと同じような奇妙な欲望を抱えた人が多いからであろう。おれたちより上の世代になると、逆に「○○○○を戦中戦後にさんざん食わされたので、見るのも厭」といったトラウマを抱えているらしい。いまでも“すいとん”が厭だという年配の人がいたりする。おれたちくらいだと、平和な飽食時代にいろいろと豊かな食材を入れたおいしい“団子汁”というイメージがあるが、先輩たちの食ったホンマもんの“すいとん”は、ろくな食材も調味料もない時代に、腹だけをとにかく膨らませようという工夫から生まれた料理なのだった。

 それはともかく、おれとしては、やっぱり味つけ海苔をバケツ一杯食ってみたいかも(食えるかどうかは別として……)。



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コメント

大学生のころ、クリスマスケーキを丸のまま食べる「ケーキばこばこパーティ」というのをやったことがあります。
子供のころは、いつもピースでしか食べられなかった6号だか7号だかのクリスマス用デコレーションを一人一箱ずつ食べるわけです。
もちろん学生ですので、24日夕方からの売れ残り半額セールのを買うわけで、いささか貧乏たらしいのですが、今となっては苦しくも楽しい思い出です。

投稿: いかなご太郎 | 2007年8月30日 (木) 00時38分

>いかなご太郎さん
>「ケーキばこばこパーティ」

 ネーミングがいい! 貧乏たらしいのがいい! いやあ、そういう欲望を解放する儀式をたまには行なうのが、人として正しいことなのではないかと。

 私はアイスクリームケーキでその「ケーキばこばこパーティ」をやってみたいです。この歳でやったら腹壊すでしょうけど。

投稿: 冬樹蛉 | 2007年8月30日 (木) 01時54分

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受信: 2007年8月29日 (水) 17時09分

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