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2007年7月 3日 (火)

電流火花が塩基を走る

DNAに電流通る ミクロの電子デバイスに道 (asahi.com)
http://www.asahi.com/science/update/0628/OSK200706280026.html

 細胞の核にあり、遺伝情報を担うDNA(デオキシリボ核酸)の中を電流が流れることを、大阪大産業科学研究所の真嶋哲朗教授(光化学)の研究グループが突き止めた。DNAの2本の鎖がつくる二重らせんの幅は2ナノメートル(ナノは10億分の1)。これを利用してナノサイズの「電線」ができれば、半導体など超ミクロの電子デバイスの作製につながる。今週の米科学アカデミー紀要電子版に発表する。
 DNAに電流が流れる可能性があることは指摘されていたが、そのルートはわかっていなかった。真嶋教授らは、実験によって、電流は二重らせんの鎖の部分ではなく、二つの鎖の間にまたがっている塩基を伝わって流れていることを初めて確認した。
 研究グループは、10~100個ほどの塩基が並ぶDNAを人工的につくってガラス基板に張り付けた。一方の端に光増感剤を、もう片方の端に蛍光色素をくっつけ、ガラス基板の裏から紫外線を当てた。すると、光増感剤から正電荷が発生し、反対の端まで移動して蛍光色素と反応し、蛍光を消す現象が観測できた。4種類の塩基の並び順によって、電気が流れる速さが変わることもつかんだ。

 ちょっと前のニュースだけど、なんか気になってたのよな。なんで話がいきなり電子デバイスに跳んでしまうんだろう?

 いやまあ、そういう役に立てば立つで面白いけど、素人なりに真っ先に抱く疑問は、「DNAに電流が通るというなら、なぜそんなふうにできているのだろう?」ということである。ふつう、そういうふうに思考が働きませんか? DNAは、なにも将来電線に使ってもらおうと思って誰かが作ったわけではないだろう。ひょっとしたら、電流が通るという性質は、DNAの構造や働きにとって、なにか重要な意味を持っているのではあるまいか。つまり、DNAに電流を流したら流れたという結果オーライみたいな話じゃなくて、DNAにはなにかの理由で電流が流れなければならないのではないか――と、想像しちゃうわけだ。「4種類の塩基の並び順によって、電気が流れる速さが変わる」ってのも、なんだか意味深な匂いがするじゃんか。それにもなにか機能と結びついた必然としての意味があるのだろうか? わくわく。

 なにかの理由とは、どういう理由かって? そんなこと、おれにわかるもんかよ。それを調べるのは学者さんにお任せする。

 あなたはどっちだろう? “問答無用でこういう性質があるから、こういうふうに使えるのではないか?”という方向に考えるタイプか、“そもそも、なぜこういう性質を持っているのだろう?”という方向に考えるタイプか? なんとなく前者のほうがお金になりそうな気もするが、あんまりそっち方向ばっかりに偏ってほしくないなあ。まあ、今回、DNAに電流が通ることが初めて実験的に立証されたのだというのなら、なぜ電流が通るのかをとんでもなく斬新な方向から考えはじめる人が出てくるのかもしれないよね。わくわく。



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コメント

|DNAにはなにかの理由で電流が流れなければならないのではないか

 あるいは我々はその「何かの理由」を電流が流れるという事実でしか認識できないとか。ある機能を実現すると、結果的に電流が流れることが可能となるみたいに。

投稿: 林 譲治 | 2007年7月 3日 (火) 08時16分

>林譲治さん

 うんうん、そういうのです、そういう方向の空想が欲しいのです(笑)。電線としてのDNAの周囲に発生する同心円状の磁界が、一定方向への安定した螺旋の形成に寄与しているとかなんとかそういう想像(あてずっぽうとも言う)とかも楽しいすね。

投稿: 冬樹蛉 | 2007年7月 3日 (火) 08時38分

ブラッドベリなら"I sing the DNA electric"を書くかもしれない。

投稿: 江藤 巌 | 2007年7月 3日 (火) 12時52分

で、それがRNAだったらどうなるのかやってみる人おるのかな?

投稿: 村上 | 2007年7月 3日 (火) 21時34分

RNAでも同じように働くとして。
生体内でも、電流の速度が正確に制御された複数のRNA分子がタンパク質で編み込まれて回路を形成していたら、そこにある周波数の電流を流してやれば一種のアナログコンピュータとして働くかもしれません。

投稿: sapporokoya | 2007年7月 4日 (水) 00時21分

>江藤 巌さん

 R is for Ribonucleic とか。

>村上さん

 この記事によれば、糖やリン酸の部分じゃなくて塩基の部分を通るらしいので、RNAでも通るかもしれませんが、塩基同士の水素結合の部分が導電性に大きく寄与しているのだとしたら、RNAでは難しいかもしれませんね。

>sapporokoyaさん

 DNAそのものを四値の演算素子として使おうという研究は十年以上前からありますが( http://ja.wikipedia.org/wiki/DNAコンピュータ )、演算結果を得るのにものすごくまわりくどいプロセスが必要で手間がかかるみたいですね。化学的にえっちらおっちら演算させるのではなくて、DNA(やRNA?)を工学的なプロセスで演算素子に使えるのなら、相当スピーディーなものができそうな気はします。量子コンピュータにはかなわないかもしれませんが、なにか、「ここはDNAコンピュータでなければならない」といった応用シーンが出てくると面白いと思います。

 DNAそのものは演算装置というよりは記録媒体というイメージが強いですが、塩基配列のコードからポリペプチドを生成するプロセス全体は、演算装置以外のなにものでもないですよね。フォン・ノイマンは、ワトソンとクリックの発見を知ったときにどう思ったんでしょう? あまりのことに畏怖の念に打たれたか、「当然じゃん、それしかないじゃん。それがなにか?」と思ったか、いずれかでしょうね(^_^;)。なんか、後者みたいな気はしますが。

投稿: 冬樹蛉 | 2007年7月 4日 (水) 01時09分

冬樹鈴さん,こんにちは.

>DNAそのものは演算装置というよりは記録媒体というイメージが強いですが、塩基配列のコードからポリペプチドを生成するプロセス全体は、演算装置以外のなにものでもないですよね

ちょっと待った(笑) 塩基配列のコードを mRNA に転写したり,ポリペプチドを生成するプロセスにはどうしても酵素が絡まないとできません.言ってみれば,演算装置は酵素がくっつく・くっつかないというお話になるんじゃないでしょか.

# いくらSFでもそりゃひどい(笑)

投稿: kaetzchen | 2007年7月 6日 (金) 17時13分

>kaetzchenさん
>塩基配列のコードを mRNA に転写したり,ポリペプチドを生成するプロセスにはどうしても酵素が絡まないとできません

 いや、そりゃそうです(^_^;)。DNAがなにか主体的な意思でも持っていて勝手にアミノ酸を繋いでゆくわけがありませんし。まあ、私のおおざっぱな書きかたでは、そう誤解する人がいるかもしれませんので、詳細を補足いただいてよかったです。私が言いたかったのは、RNAやら酵素やらリボソームやらなにやらの働きもひっくるめて、“ポリペプチドが生成されるプロセス全体”が演算装置として働いているということだったのです。

>言ってみれば,演算装置は酵素がくっつく・くっつかないというお話になるんじゃないでしょか

 なるほど。そこまで還元すれば、二値素子のデジタルコンピュータだと考えるのもアリかもしれません。面白いですね。

投稿: 冬樹蛉 | 2007年7月 6日 (金) 23時20分

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