灯台下暗し
▼放射線防護エプロンから放射線検出 輸入業者が自主回収 (asahi.com)
http://www.asahi.com/national/update/0713/OSK200707120152.html
大阪府は12日、米国製の放射線防護エプロンに使われていた鉛から放射線が検出され、輸入業者が自主回収を始める、と発表した。大阪市北区の医療機器製造販売会社「スーガン」が米・ピーク社(99年廃業)から輸入・販売した768枚が対象。人体に対する影響はほとんど無いという。
このエプロンは病院の放射線科などで使用されている。スーガン社によると、和歌山県立医大付属病院から9日、「エプロンの鉛から放射性同位元素『鉛210』を検出した」と報告があった。エプロン26枚のうち5枚から検出し、同病院は着用していた放射線技師の被曝(ひばく)線量も調べたが、ほとんど影響がなかったという。
いやあ、笑いごとではないかもしれないが、やっぱり笑っちゃう事件だよなあ。作ったギャグみたいだ。
調べてみると、鉛210は放射性同位元素だとはいえ、さほどタチの悪いものではなさそうだ。なんでも、天然のウラン238が壊変してラドン222になり、こいつがα崩壊してポロニウム218を経て鉛214になり、こいつがβ崩壊してビスマス214を経てポロニウム214になり、さらにα崩壊して鉛210になるのだそうである。で、鉛210は半減期22・3年でβ崩壊してビスマス210を経てポロニウム210になり、最後にこれがα崩壊して鉛206となって安定する――ということだ。
要するに、鉛210はβ線、つまり電子を出すわけですな。β線は透過力が弱いので、体外から被曝する場合は、今回のようにエプロンに縫いこまれていたとなれば、さほど大騒ぎするほどのことではないと思う。ただ、粉塵のような形でいったん体内に核種を取り込んでしまうと、透過力が弱いだけに単位飛距離あたりに周囲の組織に与えるエネルギーが大きく、効果的に遺伝子に損傷を与える可能性がある(α線だと、それ自体は紙一枚で遮蔽できるが、α崩壊する核種を体内に取り込むと、逆にたいへん遺伝子へのダメージが大きい)。大事を取るに越したことはないだろう。えーと、べつにおれはラジオアイソトープの専門家でもなんでもないが、チェルノブイリ原発事故のときに集中的に本を読み漁ったので、基本的なことくらいはおのずと知ってしまったのだった。
いやしかし、こんなネタ繰りしたかのような事件が起きるもんなんだねえ。このブラックなユーモア感覚(っつっても、わざとやったわけじゃないだろうけど)は、なにやらSFっぽいよなあ。こういうのを“βネタ”というのかもしれない。おあとがよろしいようで。
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コメント
>こういうのを“βネタ”というのかもしれない。
まだ練れてないけど、思いついたからとりあえず言っておくのを”β版のネタ”と言います。例えばこれみたいなの。
投稿: ROCKY 江藤 | 2007年7月13日 (金) 14時37分
思いついたけどあまりデキが良くないので言うのをガマンするのを"γネタ"と…言いませんかそうですか。
投稿: アダチ | 2007年7月13日 (金) 23時04分
まあ、そう言うのもαかもしれませんね。
投稿: おおじじ | 2007年7月14日 (土) 00時30分
なんか、次々といろんなネタがδ。
投稿: 冬樹蛉 | 2007年7月15日 (日) 04時39分
でもみんな程度が低い。
ってΩ言うか、Ω。
投稿: ROCKY 江藤 | 2007年7月16日 (月) 12時09分
あ、最後まで行っちゃった。おあとがよろしいようで。
投稿: 冬樹蛉 | 2007年7月17日 (火) 00時00分