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2007年5月31日 (木)

“井の中の蛙”は絶滅危惧種か?

 さっき、『しょこたん☆かばー』を聴いていたら、いつものようにバカなフレーズをなんの気なしに口ずさんでしまった。

   ♪セマンティックあげるよ~ セマンティックあげるよ~

 シンタクスに縛られて息苦しい思いをしている人を励ます歌であるにちがいない。

 だが、待てよ。これはイカにもタコにも、この世界のどこかですでに唄われていそうなフレーズである。さっそく検索してみると、やっぱり唄っているやつが複数いた。

 これはいかん(なにがいかんのだかはよくわからないのだが)。もうちょっとヒネらなくてはいかん。

 そこでおれは、パソコンが危険に晒されて不安を抱いている人を励ます歌をすぐに思いついた。

   ♪シマンテックあげるよ~ シマンテックあげるよ~

 人によっては、即座に「要らん」というかもしれないが、おれは自宅ではシマンテックのセキュリティーソフトを使っている。まあ、とびきりいいとも思えないが、とびきり悪いとも思えない。どのみち、なにかを入れなくては、怖くてネットになど繋げたものではない。

 それはともかく、こっちの歌は、すでにどこかで唄われているような気がもっとして、検索してみたら、やっぱり唄っているやつがいた。世の中には、よくよく脳を無駄遣いしているやつがいるものだ。

 先日世間の広さを知ったばかりだというのに、またも世間の広さを思い知った。ダジャラーには厳しい時代である。というか、そもそも、なぜこんなバカなことをいちいち検索してみているのか、自分でもよくわからん。べつに、自分が独立に思いついたことをすでに誰かが思いついていたとて法に触れるわけでもないんだが、そこに手段が存在してしまっているからには、強迫的に検索せずにはいられないのである。せっかくのバカな思いつきを誰かがすでに書いていると、親近感を覚えると同時に、なんだかくやしい。

 つまるところ、おれたちは、“井の中の蛙”にはなりたくてもなれない時代に生きているのだろう。ウェブで情報を発信する個人がこれだけ増えてくると、ウェブは“井の中の蛙”を早期に圧殺する作用をますます強めてゆくのではあるまいか。それはとてもいいことのようにも思えるのだが、人間、若いころは、多かれ少なかれ井の中の蛙であることが必要な時期もあるのではないかとも、また思えないこともないのだよなあ。

 いやなに、駄洒落がカブるとかそういうレベルの話じゃなくて、もっと革新的な(と本人は思っている)アイディアとか高邁な(と本人は思っている)思想とかについても、ウェブの“井の中の蛙圧殺効果”は同じように働いてしまうだろう。そんなふうに、あまりにも手軽に「それはすでにあるよ」という答えが得られてしまうのは、絶対的にいいことなのだろうか? 車輪を再発明する無駄を(そのときはそうだと知らずに)幾度か体験するプロセスは、人間の成長に、あたかも微量養素のようなカタチで不可欠であるという気がしてならないのだわ。

 そう考えると、いわゆる“高速道路論”(梅田望夫 < 羽生善治)に指摘されている現象についても、高速道路が敷かれてしまったせいで取りこぼしてしまいがちな大切ななにかがあるように思える。たぶん、その“なにか”こそが、家庭や学校で教えなくてはならないことなのかもしれない。



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コメント

 小松左京さんの「お茶漬けの味」で文明崩壊直前の人類が脳に直接情報を送り込む学習装置の普及により、「人々は哲学を瞬時に理解すると、飽きて捨てた。哲学は訓練という要素を失ったことで、その意味も失った」みたいな事が書かれていました。まさに高速道路問題というのは、こうした問題なんじゃないでしょうか。

 この短篇を読んだ高校生の頃はいまひとつこの部分の意味がわからなかったんですけどね。

投稿: 林 譲治 | 2007年5月31日 (木) 09時40分

>♪セマンティックあげるよ~ セマンティックあげるよ~
私もしょっちゅう口杜撰でいます。
いや口遊んでいます。

投稿: ROCKY 江藤 | 2007年6月 1日 (金) 00時41分

>林譲治さん

 おおお、それは言われてみればそのとおりだと思います。小松さんの洞察は、こういう問題を予見していたのでしょう。

>ROCKY 江藤さん

 やっぱし、こういう人がいたか(^_^;)。

 なんか思うんですが、いまよく言われてる“セマンティック・ウェブ”ってのは、多くの場合、シンタックスでセマンティクスを操ろうとしているだけに聞こえます。“ファジー”とか言いながら、そのじつ、それらしい関数を使っているだけ、みたいな過去の亡霊が(笑)。

 まあ、ホンマもんのセマンティック・ウェブなんて、相当強い人工知能が出現しないと無理でしょうけど。

投稿: 冬樹蛉 | 2007年6月 5日 (火) 00時35分

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