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2007年5月19日 (土)

十年はかかる

円周率を延々と表示し続けるだけのサイト (GIGAZINE)
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20070515_pi_3_jp/

 ほんとにこんなのができるとはね。いやなに、そういえば、十年ほど前におれはこんなことをほざいていたものだった。

たくさんの方が見てくださったのがめでたいのはたしかだが、大勢が見たほうがいいページなのかというと、その辺がおれにはいまだに判然としないのである。たとえば、円周率が小数点以下1万桁くらい書いてあるだけのページが一枚ぽつんとあったとする。そんなもの誰も毎日見たりはしないのだが、「どうしても、すぐに2,593桁めを知る必要があるのだ」と慌てている人がWWWを検索してそんなページが見つかれば、「インターネットというのはまことにありがたい」ということになるだろう
一般論で語ったときに取りこぼしてしまう部分にこそ、WWWの最大の力が隠れている。“Cさんが田舎の老親に孫の運動会の写真を見せてやるためだけに作ったページ”は、おれにとってはクズ以外のなにものでもないが、Cさんのご両親にとってはたいへん価値あるすばらしいページなのである。「せっかく世界に向けて情報を発信できる媒体を、なにもそんなことに使わなくたっていいじゃないか」などと肩に力の入った人は言うかもしれないが、「べつにそんなことに使ったっていいじゃないか」とも、まったく等価に言える。97年10月8日の日記でもほのめかしたように、たいへん逆説的ながら、ほんの一部の人にしか役に立たない情報、ほんの一部の人しか面白いと思わない情報が流せるのが、WWWの重要な媒体特性のひとつである。そういうものは、逆立ちしたって商業的な媒体には乗らないからだ。WWWでは“価値ある”情報を公開すべきだなどと主張している人は、手前が一般的な価値の有無を判断できると思い込んでいるわけで、それは言うまでもなく度し難い傲慢である。いかにもマスコミ的な一般論に踊らされているにすぎない。WWW上では「吸入麻酔薬感受性の異なる2系統マウスにおけるベンゾジアゼピン感受性について」という情報も「『スケバン刑事3 少女忍法帖伝奇』の第八話は[炎の修業!これが究極のヨーヨー技じゃ]で、放映日は一九八六年十二月十八日」という情報も厳密に等価である。それらは、一般的にはホワイト・ノイズである点に於いて等価なのだ。ホワイト・ノイズの中から意味を汲み出す個別の利用者を想定したとき、はじめて個別に価値が生じるのである。よって、あなたが発信する、発信できる情報に価値がないなどということはあり得ない。ただし、そこには多数決原理は働くし、ネット外の世界でのさまざまな自由や制限も同様に働く。だが、ほんの二、三人しか見てくれなくとも、あなたの目的が達成できれば、それはあなたやあなたのページの利用者にとっては“価値あるページ”だ

 最近、まんざらおれはとんちんかんなことを言っていたわけでもないなあと実感する。ネット猿がうすぼんやりと感じていたことが、多くの人の共通認識になるまでには、やっぱり十年くらいはかかるものなのだな。サイバースペースという言葉が誕生してから、そこいらへんの平均的サラリーマンに言っても通じるようになるまでに、やっぱり十年くらいかかっていたと記憶している。たしか日本経済新聞が連載記事だったかで使いはじめてから、カタギのビジネス界でも急に通じるようになりはじめたように思うな。

 というわけで、いまなにか新しいことをはじめてやろうとしている若い人たち。それがなんであれ、とりあえず十年くらいは腰据えてやってみないと、いまの自分がそこそこ正しかったのかどうかの答えすら出ないんじゃないかな……とまあ、十年以上ウェブ日記を書いてきたおっちゃんは思うわけですよ。



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