ほんとの客はだあれ?
▼2年以内の実用化目指す ロボットに話しかけてブログにエントリ、NECが新システム (@IT)
http://www.atmarkit.co.jp/news/200703/05/nec.html
NECは3月5日、ロボットに話しかけることでブログを編集、公開できる「マルチメディアブログ創作システム」を開発したと発表した。話しかけられた言葉を解析し、内容に応じて検索したイラスト、映像、音楽などを追加、マルチメディア対応のブログエントリを作成する。NECは同システムを2年以内に実用化するとしている。
同システムはNECの研究試作ロボット「PaPeRo」(パペロ)に搭載。ロボットに話しかけることでブログを作成できるようにした。自然な言葉で発声されたメッセージをテキストに変換する語彙(ごい)連続音声認識技術と、テキストから重要度を分析してキーワードを抽出し、Web上のマルチメディアコンテンツを検索する自然言語文検索技術を組み合わせた。
NECは同システムを使うことで「ロボットに向かって話すだけで魅力的なマルチメディアブログを簡易に創作することができ、ブログによる情報発信をより便利に快適に行えるようになる」としている。同システムはロボットに搭載したが、別のデバイスに載せることも可能という。
うーん、なんだかなあ。いやまあ、現存の技術を組み合わせて「こんなこともできる」という試みとしてはこういうのもアリだろうけど、ふたつの点で大いにひっかかる。
「ロボットに向かって話すだけで魅力的なマルチメディアブログを簡易に創作することができ」というのだが、マルチメディアだったらそれだけで魅力的だとでも言うのだろうか? それとも、ただただ口から言葉を垂れ流すだけで、それが魅力的な創作になるって意味なのだろうか? そんなおそるべき才能の持ち主がそこいらにうようよいるとでも言うのか? なんだか、言ってることがさっぱりわからん。
「ブログによる情報発信をより便利に快適に行えるようになる」ってところも、なんだか珍妙な気がする。発信者だけ快適にしてどうする。そりゃ、ブロガーの立場で考えれば、快適に発信できるに越したことはないとおれも思うけれども、ブログの“利用者”で最も数が多いのは、“読者”に決まっている。どこの誰とも知らない人がロボットにくっちゃべったことを基に大部分を機械が自動的に作ったようなブログなど、おれが読者ならあんまり読みたくないがなあ。たとえば中川翔子のブログなどの場合、中川翔子本人が発信しているということそれ自体に意味があるのであって、残念なことにたいていの人はしょこたんじゃないのである。
NECにとっては、ブログで情報発信する人たちのほうが自分たちの“客”なのはわかるが、最終消費者はブログを読む人であるという、あまりにもあたりまえのことが抜け落ちているような気がする。もののみごとに、ブログの提供者都合のもの言いしかしていないあたりに、なんだかとても奇妙なものを感じる。まあ、NECにしてみれば、ブログの読者のほうは、“客の客”にすぎないというわけなんだろうな。でも、客の客こそが真の客というケースも少なからずあるわけで、いわゆる Consumer-Generated Media (CGM) に企業が企業の論理で手をつける場合、まさにそこいらが難しいのだろうな。ここでNECは、このシステムの実用化や展開を、単なるBtoCのビジネスモデルでしか捉えていないかのように見える。こういうのはBthroughCtoCとでもいった捉えかたをしなきゃ、たぶんダメじゃないかな。
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コメント
次に開発される商品は「ブログを読んで、わかりやすい要約をしゃべってくれるロボット」になりますよ、きっと。
さらに進歩すると、日常会話にも対応したオウム型のロボットをだれもが肩の上に載せて歩く時代になるのです。
投稿: 東部戦線 | 2007年3月 9日 (金) 15時59分
>次に開発される商品
こういう会社の考えることだから「ブログを読んでコメントを入れてくれる読者ロボット」かも知れませんよ。
大切な顧客(ブロガーの皆さん)も大喜びすること請け合いです。
投稿: koga | 2007年3月 9日 (金) 18時02分
>東部戦線さん
>日常会話にも対応したオウム型のロボット
リス型もできそうです。
そのうち、人のブログが更新されると教えてくれるロボットもできそうです。もちろん、アトムというのですが……。
>kogaさん
>ブログを読んでコメントを入れてくれる読者ロボット
そ、それはふつー“人工無能”と言いませんか(^_^;)。酢鶏( http://sudori.net/blog/archives/cat_ueeeae.html )の“身体”を開発するメーカが現れたりして……。
投稿: 冬樹蛉 | 2007年3月10日 (土) 03時26分
「マルチメディアブログ創作システム」が作成したエントリと、人間が作成した
エントリを比べても区別がつかなかったら、結構ショックでしょうね。
万が一、自分が、システムが作成したエントリを読んで、人間が書いたものより
面白いと感じてしまったら、システムの完成度を褒めるべきなのか、それとも自
分の感性を疑うべきなのか。
もちろん現在の技術レベルではそういうことにはならないでしょうが。
投稿: いかなご太郎 | 2007年3月10日 (土) 06時49分
>いかなご太郎さん
ごく稀に、一所懸命考えた駄洒落より、意図しない誤変換のほうが面白かったりするとめげます。
投稿: 冬樹蛉 | 2007年3月10日 (土) 23時37分
えー、実はオウムの元ネタは星新一さんのショートショートです。
投稿: 東部戦線 | 2007年3月11日 (日) 20時43分
>東部戦線さん
わたしゃ、『光速エスパー』かと思いました(^_^;)。
投稿: 冬樹蛉 | 2007年3月11日 (日) 20時54分