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2006年12月20日 (水)

菊池誠教授、テレビでニセ科学を語る

 昨夜、SF者の物理学者・菊池誠さん(大阪大学教授)がNHKの『視点・論点』に出演してニセ科学について話をなさったというのを知り、早朝の再放送を録画しておいて、さっき観た。ゲーム脳マイナスイオン「ありがとう」と言葉をかける(見せる)と美しい結晶になる水といった、世に蔓延するニセ科学のなにが問題なのか、科学者の立場から明解に論じていらして、じつに気持ちがいい。要するに、道徳のものは道徳に、科学のものは科学に返しなさいということだ。しつけや道徳の根拠を自然科学に求めるのは、とんだお門ちがいであり、思考停止以外のなにものでもないのだ。

 いわゆる“トンデモ科学”をそれと知って笑い、娯楽として愛でる趣味もあるが(おれも大好きだ)、菊池さんは(トンデモ科学をお楽しみにもなるが)、ニセ科学に踊らされる世の風潮が、笑いごとではないものを孕んでいる点を、科学者として真摯に問題提起している。お子さんのいらっしゃる方は、菊池さんのサイトにあるニセ科学関連文書をぜひお読みいただきたい。あなたのお子さんは、科学の名を借りたとんでもない世迷い言を、学校の先生に吹き込まれているのかもしれないのだ。

 それはともかく、菊池さんの微妙なファッションがよかった。世間の多くの人が大学教授というものに対して抱いているイメージを裏切るほどにラフな服装だと過剰に胡散臭さを抱かれてしまいかねないし、かといって、いかにもきちんとしていればいたで、「あれはちがう世界の人の難しいお話だ」とばかりに“括弧に入れられて”聞き流されてしまいかねない。菊池さんの服装は適度にラフで適度にきちんとしていて、広いスペクトルの視聴者に“アピールしないことでアピールしていた”と思う。

 まあ、少なくとも、おれが会ったことのある学者という人たちは、たいてい一般のステロタイプなイメージをいささか逸脱したいでたちをしているもので、年に、一、二度お会いする菊池さんのあんなちゃんとした格好を見たのは、おれは初めてであった。たぶん、昨夜の菊池さんをテレビで観た多くの人は、「ちょっとカジュアルな格好の学者さんだな」と思い、一部の人は、「えらい正装してはるなあ」と思ったのだろう。パブリックイメージとしてのニセ科学が、ともするとほんものの科学よりも科学っぽいのと同じように、パブリックイメージとしての学者は、ほんものの学者よりも学者っぽいものなのかもしれない。



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コメント

菊池家スタイリストです(嘘)。
一見さんを意識した服装にしてみました。
普段通りだと「胡散臭いやつ」に見えるかもと思って。

投稿: りんりん | 2006年12月20日 (水) 08時34分

あの衣装はちゃんと前々日にユニクロとcomme ca du modeで揃えたのだ。狙いはまったくご推察の通り(^^
ただし、映らなかった下半身は、ブーツカットのジーンズに金物のついたベルトにスニーカーでしたとさ

投稿: きくち | 2006年12月21日 (木) 00時47分

>りんりんさん、きくちさん

 戦略は成功していたと思います。ウェブを漁ると、『視点・論点』を欠かさず観ているといった奇特な人よりも、たまたま観ていて惹き込まれたといった人が目立つようです。

>映らなかった下半身は、ブーツカットのジーンズに金物のついたベルトにスニーカー

 そ、そのネタばらしは……。知らない人が読んだら、ロックコンサートに行く途中にでも、ついでにテレビに出たのかと思いますよ(;^_^)/。 まあ、アレです、私の知るかぎりのきくちさんのふだんのいでたちというのは、“ラフな服装”というよりは、“ミュージシャン的正装”という感じですが。

投稿: 冬樹蛉 | 2006年12月21日 (木) 01時39分

『菊池教授の真実』

 ……なんてタイトルでこんな写真をさらしたら、アクセス増が狙えますかね?
 http://njb.virtualave.net/web/rl2005/machikane/kikuchi.jpg
 http://njb.virtualave.net/web/rl2005/machikane/kikuchiroom.jpg

投稿: 霧ヶ峰 | 2006年12月26日 (火) 09時30分

>霧ヶ峰さん

 きっ、菊池先生はこんな人じゃありません。

 この人なら、下北沢の駅前で漫画を音読してましたよ( http://tokyo-hyogen.com/tokyo_hyogensya/special/rikimaru/index.html )。

投稿: 冬樹蛉 | 2007年1月 2日 (火) 01時00分

うーむ、その漫読の人はどう見ても僕の生き別れの弟ですね

投稿: きくち | 2007年1月 4日 (木) 23時26分

>きくちさん

 弟さん(笑)は、しょこたん( http://yaplog.jp/strawberry2/ )の「溜池Now」( http://www.gyao.jp/sityou/catelist/pac_id/pac0001390/ )に初回から出演していますよ。その後も第十六回と第二十一回に出てきました。マンガのあらすじを説明するような場面では、もはや準レギュラー的にお座敷がかかりはじめているようで(^_^;)。

 私も子供のころはよく“漫読”してましたけどねー。藝にまで昇華するのはたいしたものです。ペンライトでコマを追って、見物人にいま読んでいる場所を示すというアイディアは、実践の中からしか出てこない妙案だと思います。

投稿: 冬樹蛉 | 2007年1月 5日 (金) 15時50分

うまという人がニセ科学批判者を陰で卑劣に批判しています

http://ameblo.jp/shitsugen-dainagon/entry-10022159947.html#cbox

投稿: 通報 | 2007年1月21日 (日) 00時27分

>通報さん

 えーと、私に“通報”されてもですねえ……。

 私は基本的には、“あっち”に行っちゃった人は、もう救いようがないと思ってます。また、幸福とは主観的なものなので、“あっち”に行っちゃってシアワセな人を、あえて科学的・合理的な精神でフコウにするのもどうかなあと思うのです。

 私はただ、ふらふらと“あっち”に行って安易にシアワセになっちゃいそうな人がもしいたら、「そっち行くとドブに落ちるよ。世にも怖ろしい“シアワセ”が簡単に手に入っちゃうよ」と、注意を喚起してあげたいなと思ってます。目つぶって生きてゆくのがしあわせかなのかどうかは、個々人の哲学の問題ですからねえ。ま、私はそんなふうに考えてます( http://web.kyoto-inet.or.jp/people/ray_fyk/diary/dr9711_1.htm#971107 )。

「もしかしたら、正気ではなく幸せでいるほうが、不幸せで正気でいるよりはいいのかもしれない。だが何よりもいいのは、正気で幸せであることだ」(アーサー・C・クラーク)

投稿: 冬樹蛉 | 2007年1月21日 (日) 03時04分

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受信: 2006年12月21日 (木) 13時51分

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追記:  書き起こしテキスト http://d.hatena.ne.jp/f_iryo1/20061221/shiten  涙ぐましい努力 http://ray-fuyuki.air-nifty.com/blog/2006/12/post_4621.html [続きを読む]

受信: 2006年12月21日 (木) 17時29分

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