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2006年12月27日 (水)

Life finds a way.

聖母?オオトカゲ、交尾せず産卵 英の動物園 (asahi.com)
http://www.asahi.com/science/news/TKY200612240168.html

 英国の動物園に飼われている世界最大のトカゲ、コモドオオトカゲの2匹の雌が、雄と交尾することなく産卵する「単為(たんい)生殖」をしていたことがわかった。聖霊によってマリアがキリストを身ごもったという聖書の記述にちなむクリスマスの話題として、英科学誌ネイチャーの最新号が論文を掲載した。

(中略)

 多くの生物では、受精によって卵子の細胞分裂(卵割)が始まり、卵子が育っていく(有性生殖)。ところが、受精以外の原因で卵割が始まる場合があり、単為生殖と呼ばれる。昆虫などでみられるが、脊椎(せきつい)動物では珍しく、ヘビなど約70種で報告されているだけ。哺乳(ほにゅう)類では自然には起きないと考えられている。

 カエルでも、未受精卵を針で突っつくだけで稀に発生をはじめることがあるという話はどこかで読んだことがあるな。この「約70種」には、カエルも入っているのだろう。なにを以て“高等な動物”と呼ぶのかは難しいと思うが、一般的にはカエルよりはずっと高等な生物と考えられているだろうコモドオオトカゲのような生物にでも、こういうことがあるのか。まったく生きものというのは面白い。

 となると、女性に縁のないおれが、ある日突然妊娠するということも、絶対にないとは言えないのではないか(ないだろうけどな)。

 むかし、辻邦生『もうひとつの夜へ』という小説があって、これが男が妊娠する話なのである。妊娠するといっても、語り手の男が人間の形をした赤ん坊を産み落とすわけではなく、なんというか、たしか『ムーミン』に出てくるニョロニョロみたいなわけのわからないちっぽけな存在を産むのだが、それは男の体内にいるときから「そいつ」と呼称(?)され、その「そいつ」という活字が、話が進むにつれ、ほんとうにじわじわ大きくなってくるのだった。最後のほうになると、そいつ がどうした、そいつ がこうしたと、にぎにぎしいことおびただしい。ラスト近くになると、そいつはこいつくらいに成長してしまい、語り手の男は……といったタイポグラフィカルな効果が面白い作品である。

 むろん、字面が面白いだけの薄っぺらな話じゃなくて、なかなかにせつない、ちゃんとした内容があってはじめてタイポグラフィーが活きている名作だ。忘れ難い個性的な小品として、おれは個人的に偏愛している。読み手が「そいつ」になにを投影するかで、さまざまな深みが出てくるだろう。「そいつ」はいわゆる“男のロマン”の権化のようでもあるのだが、そう言ってしまうとちょっとちがう気がする。おれは“男の業”とでもいうべきものの具象化だと捉えるのだが、ほかにもいろんな読みかたがあるだろう。古書でしか手に入らないと思うが、見つけたらいっぺん手に取ってみてください。



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コメント

そうです、一度出産してみなはれ。世界が激変するだろう。
けさ、ばりさむ。鼻水しゅるしゅるです。あの、下を向いてるときに鼻水がおりてくるかんかく、こころをなににたとえよう。

投稿: ひめの | 2006年12月29日 (金) 07時51分

>ひめのさん

 将来的には、男が代理母になることも不可能じゃないでしょうけど、ちょっと私が生きているあいだには間に合わないでしょうねー。

投稿: 冬樹蛉 | 2007年1月 2日 (火) 01時05分

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