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2006年10月28日 (土)

ここはひとつ、世界史的に書いてみたりして

履修不足:「逸脱」の手段さまざま 学校側なりふり構わず (MSN毎日インタラクティブ)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20061027k0000e040074000c.html

 栃木県の県立宇都宮女子高では「世界史的に地理を学んでいた」として異なる2科目を一体化させて教えることで2科目とも履修とした。県立大田原女子高でも理系の3年生80人が「地理の授業で世界史もまとめて学んだ」として地理Bと世界史Aを履修したことにしていた。

 いやあ、「世界史的に地理を学んでいた」かあ。これは今年のヒット作だね。どこかに「世界史的かつ情報的かつ家庭的かつ芸術的に地理を学んでいた」とか言う校長はおらんか? そういう授業があったら、おれもぜひ受けてみたい。

 おれは学習指導要領というやつが大嫌いだし、“ゆとり教育”など笑止だと思っているが、だからといって、こうした“履修させ漏らし”をやっている学校は、やることがあまりにも姑息だ。“嘘だろうがなんだろうがカタチだけやって報告書が書ければよい”という腐れ公務員のごとき思考回路が見えみえで、顧客視点、というか、生徒視点などどこにもない。生徒が望んだなどと言いながら、そのじつ、学校の評判とやらが最優先になっているだけではないか。

 これだけの時間でこれだけの必修科目をやるのは無理だ――と判断したのなら、なぜ教育委員会に、文部科学省に逆らわない? マスコミの取材に答えて、生徒のせいだ、親のせいだと言わんばかりのそこの校長、そこの校長、そこの校長、あんたたちに言ってるんだよ。全国でこれだけ続々と出てくるんだったら、保護者の署名を集め、マスコミに実態を暴露し、みなで社会に訴えれば、大きな力になるだろうに。本当に無茶な学習指導要領なんだったら、そういうものの背後にいる議員たちを選挙で落とすこともできるのだぞと示せるはずだ。しかも、この人たちは知識や頭脳という力を持たない人たちではない。人から“先生”と呼ばれる知識労働者なのである。自分たちがプロの見識で“理不尽”だと判断したものに、なぜ逆らわない?

 解決の見えないこすっからいごまかしを続けてゆけば、現場の先生たちにかかる負担はたいへんなものになるとわかっていただろう。ごまかしが発覚したら、生徒たちにかかる負担もたいへんなものになるとわかっていただろう。ごまかしを続けていっても、それが発覚しても、よく考えると、いちばん困らないのは校長なのである。バレなきゃもちろんいいし、もしバレても、「みんなやってる」「生徒が望んだ」と謝るだけですむのが校長なのである。

 まあ、見ててごらんな。そのうち、全国津々浦々で、この大事な時期のゴタゴタで受験に失敗させられたとして、学校を相手取った集団訴訟が起こるだろう。予備校に行くのも、独学で再挑戦に備えるのも、タダではない。最低その費用は欲しいわな。精神的苦痛に対する慰謝料も上乗せしてほしいわな。損害賠償は誰が払うんだろう? 公立高校だったら、たどってゆけば税金で払うことになるのかい? おいおいおいおい。大混乱になるぞ。

 それにしても、ずーっとあたりまえのように続いていたことが、いま急に発覚したというのもクサいよなあ。現行の教育制度をいったん根底からぶち壊してしまったほうが、思惑どおりの制度を敷きやすいと判断した安倍内閣の工作なんじゃないの? なんにせよ、いちばんバカを見ているのは、生徒たちだよなあ。

 あれ、結局、ちっとも世界史的に書けなかったぞ。



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コメント

 日本史的に考えてみれば、どうして勝ち目もないのにアメリカとの戦争に至ったのか?の解答が今回の事件のなかにありますね。

投稿: 林 譲治 | 2006年10月28日 (土) 10時30分

>林譲治さん

 まったく! つまり、関係者それぞれにいわゆる“局所合理性”に則っていて、関係者それぞれにけっして阿呆ではないけれども、全体像を見ると、そもそもいったいなんのためにそんなことをしているのか、さっぱりわけのわからないことをしている。学校ってそもそもなんのためにあるの、勉強ってそもそもなんのためにするのという視点がどっかへすっ飛んでいってしまってますね。それを教えるのが先生だったはずです。

 むかしはよかったみたいなこと言うとすっかり年寄りですが、私らのころはまだ、自分の受験と関係ない授業中に机の下で受験科目の内職していると、「まあ、気持ちはわからんでもないけど、これもいまやっとかんと、なかなかあとからはできへんで」とたしなめてくれる先生がおりましたよ。

投稿: 冬樹蛉 | 2006年10月31日 (火) 01時10分

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丙(ひのえ)で、太陽が真上にきたような運気だから、すべてがあからさまになるとういうか、影もなくなるというか、隠し事はばれるし、良くも悪くもはっきりしてくるんです。 [続きを読む]

受信: 2006年10月29日 (日) 11時41分

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