微妙だが決定的なちがい
▼Cola consumption linked to weaker bones in women (CNN.com)
http://www.cnn.com/2006/HEALTH/10/10/cola.consumption.reut/
▼Cola linked to weak bones (Aljazeera.Net)
http://english.aljazeera.net/NR/exeres/E9FDB56A-C3F7-4698-87FE-969ABE75A8CA.htm
コーラの摂取と女性の骨粗鬆症に因果関係があるかもしれないという研究についての記事だが、じつはこの二紙の記事の文面は“ほとんど同じ”である。同じロイターの配信記事なのだから、あたりまえと言えばあたりまえだ。だが、“まったく同じ”でないところが面白いのだなあ。
よーく読み比べると、このふたつの記事は、言葉遣いが要所要所で微妙に異なっている。その結果、CNNのほうは、コーラと女性の骨粗鬆症の因果関係について、“はっきりしたことはまだわからないが、女性は気をつけるに越したことはない”という比較的ニュートラルな印象を与えているのに対して、アルジャジーラのほうは、ちゃんと読めば重要な部分はCNNとまったく同じ文面であるにもかかわらず、周辺部分のちょっとした言い換えや小見出しをつけるといった工夫によって、コーラと骨粗鬆症の因果関係がより強く印象づけられるように読者を誘導していることがわかる。なかなかの職人藝だ。CNNのほうには、Copyright 2006 Reuters. All rights reserved.This material may not be published, broadcast, rewritten, or redistributed. という権利の明示があるから、おそらくアルジャジーラのほうがロイターの原文をいじっているのだろうが、編集権として容認される範囲には留まっているだろう。うまいものだ。じっくり読まずに、ざっと斜め読みをすると、両者の与える印象のちがいが、いっそうはっきりする。
いや、だからアルジャジーラはけしからんと言いたいのではないのだ。むしろアルジャジーラは、立ち位置のしっかりした骨のある媒体である。おれは、報道というのは本質的にこういうものなのだと、改めて肝に銘じるに足る面白い事例だと言いたいだけなのだ。なにしろ、コーラというのはアメリカ文化の象徴としての意味を持つものであり、その象徴に関する科学的なニュースをうまく利用して、ほとんどサブリミナルに近いレベルで反米感情に訴えるアルジャジーラの藝には、もの書きの端くれとして学ぶべきところがある。
ま、それはともかく、おれたちの子供のころには、「コーラを飲むと骨が溶ける」などとまことしやかに言われたもんだけど、このニュースでまたそういう話が再燃するのかねえ? 要するに、どんなものだって、過ぎたるは及ばざるがごとしというだけの話じゃないのかなあ?
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コメント
うちの父はコカ・コーラに勤めていたため、小学校の時「コーラは骨が溶けるんだぜ!」といじめられました。帰って母に話すと、(以下福岡弁)「酸にはね、直接骨を入れると、だんだん溶かす性質があるんよ。でも直接身体の骨をコーラには入れんから、そんなに簡単には溶けんさ。でも虫歯には気を付けないかんよ。しっかり歯磨きなさい」。その夜、私は学校から帰ったときの不安などすっかり忘れ、一生懸命歯磨きしましたとさ。
投稿: 湖蝶 | 2006年10月13日 (金) 00時02分
小学校の時に授業でコーラに卵の殻を入れて実験しました。確かに溶けるんですけど、今考えるとミスリーディングも良いところですね。
逆にクレオパトラが酢に真珠を溶かして飲んだとかのエピソードもあるのに、酢は健康に良いとか言われていますが、どうなんだろ。
投稿: おおじじ | 2006年10月13日 (金) 00時28分
>湖蝶さん
ひょえ~、お父様はコカ・コーラにお勤めでしたか。なんと世間は狭い(意味不明)。やっぱり、骨が溶けるという都市伝説(?)は、かなり人口に膾炙しているのですねえ。
>おおじじさん
そんな実験を授業でやったとは驚きです。いったい、その実験は生徒になにを教えようとしてやったのでしょうね? 意図がわかりません。
投稿: 冬樹蛉 | 2006年10月13日 (金) 01時07分
酢にカルシウムだかなんだかを入れると、化学反応が起こって酸素が発生します。
卵の殻や貝殻が一般的ですが、真珠も同じ成分です。一番手に入れやすくてリーズナブルなので、卵の殻を使うのでしょう。
小中学校理科で多く行われる単なる化学実験の一つです。
多分小学校や中学校のときに習っていると思うのですが。
投稿: はう@@ | 2006年10月15日 (日) 19時49分
>はう@@さん
えっと炭酸カルシウムが強酸と反応して出てくるのは、酸素じゃなくて二酸化炭素ですよね。だからコーラで実験することの意味がよくわからんのです。
私らが小学校の時分は、石灰石に希塩酸を垂らすというのをやりました。酸素の発生のほうは、二酸化マンガンと過酸化水素水でしたが、あれはいまもやってるんでしょうね、たぶん。
小学校・中学校と理科クラブだったので、中学では授業では危なくてやらない水素の爆発実験もやりました。あれは感動的です。ガラス器具でやってあちこちの学校でしばしば事故が起こっていますから敬遠する先生も多いようですが、ちゃんとした教師の指導の下に、樹脂性の薬品用ポンド瓶の空き瓶などでやると、ずっと安全です。ものすごい音がして景気がいいです。ちょっと溶けますけど。
投稿: 冬樹蛉 | 2006年10月15日 (日) 23時15分
こんにちは。
お礼が遅れてしまいましたが、先月はトラバありがとうございました。
さて、この話題についてですが、元同僚が「抜けた歯を一晩コーラに入れておいたら、次の朝には溶けていた」という話をしていたのを覚えています。
やっぱり信憑性があるような気がしますね。
(でも、かく言う私も時々無性にコーラを飲みたくなります)
投稿: EnglishMaster | 2006年10月17日 (火) 23時41分
>EnglishMasterさん
どもども、いつも興味深く拝読しております。
>さて、この話題についてですが、元同僚が「抜けた歯を一晩コーラに入れておいたら、次の朝には溶けていた」という話をしていたのを覚えています。
直接そんなふうに入れれば、溶けるのは当然です。酢に漬けておいたら、歯はカッターナイフですぱすぱ切れるくらいになりますよ。
問題は、“なぜコーラという、実験とは関係ない意味を背負ってしまう酸性の液体を使うのか”という点なのです。http://web.kyoto-inet.or.jp/people/ray_fyk/diary/dr9905_1.htm#990508 にも書いたように、こういうミスリーディングな教育は、子供に対して不誠実だと思いますね。
投稿: 冬樹蛉 | 2006年10月18日 (水) 01時01分