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2006年9月26日 (火)

『若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来』(城繁幸/光文社新書)

 どう考えても自明のことをわざわざ解説してある本なのだが、ひょっとするとまだ高度成長期のままのつもりで頭が止まっている人がいるやもしれないので、一応お薦めしておく。若い人は読まなくたってわかってるだろうと思うが、まだ騙されている純朴な若者もいるやもしれないので、やっぱり一応お薦めしておく。低成長あるいは横這い経済の人口減少社会で、年功序列などというシステムが瓦解せずにすむと思っている阿呆がまだいるとはとても思えないのだが(年金制度を見よ!)、万が一そういう人がいるといけないので、しつこく一応お薦めしておく。

 とはいうものの、ここに書かれていることは、おれの目の前でいままさに起こっていることであるので、なんともやりきれない話ではある。金になると固く信じていた手形が空手形だと、ようやく気づいた人のショックはいかばかりであろうか。まことにお気の毒なことである。おれなんぞは、なんとかサラリーマン社会に潜り込んだけれど、最初から年功序列などというおめでたいシステムの恩恵に与ろうなどとはまったくアテにしておらず、仕事のふりをして楽しく社会観察をしながらひたすら趣味に生きてきたので、いまだに安月給である。空手形だと知ったうえで摑まされているからショックなどない。

 おれは年功序列というシステムを知ったとき、子供のころに学んだ賢者の言葉が頭をよぎり、このシステムをけっしてアテにしてはならないと決心した。『ウルトラマン』ケロニアが出てきたとき、なんたら博士が言っていたではないか――「いくら高度に発達しても、血を吸って身を肥やすのは、もはや文明とは言えないのですから……」と。低成長期における年功序列とは、おれたちのような年寄りが若者の血を吸って生きるためのシステムなのだ。若いうちに“我慢”したご褒美が、四十過ぎてからどっともらえるなどという幻想を、若い人はけっして抱いてはならない。まあ、抱いてないから、三年で辞めちゃうんだろうけどね。それはある意味、正しいかもしれない。日本の企業経営者や政治家たちがその意味に気づいてくれるかどうかが問題だが……。しかし、どこかに“もっとましな吸血システム”があるはずと期待してのことなら、それは三年で辞めないよりもさらに愚かな行為だろう。

 十三年前にドラッカーに言われて四年前に上野千鶴子に言われても、ま~だ気づかず、「採用したと思ったら三年も保たずに辞めてゆく。最近の若いもんには困ったもんだ」などと頓珍漢なことを言っている血のめぐりの悪い経営者と人事担当者には、とくにお薦め。

 若い人にとっては、「よくぞ言ってくれました」という書だろう。本書を読んでようやく蒙を啓かれているような鈍い若者は、油断していると老人に血を吸われるぞ。おれもどっちかというと老人の側だ。血ぃ吸うたろか?

 いや、つまるところ、若人よ、死ぬときに、誰の評価でもなく、“自分”の心の底から「ああ、おもろかった」と言える人生こそが、ほんとうの勝ち組の人生なのさ。“ふつうの人”だの“人並みの人”だのは、どこにもいない。そんなありもしないものに自分の生きざまを振りまわされるのはアホらしいとは思いませんか?



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コメント

 あ、これはいいインタヴューだ。

▼『若者はなぜ3年で辞めるのか?』の著者、城繁幸氏に直撃インタビュー
http://www.toyokeizai.net/online/tk/column/index.php?kiji_no=25

投稿: 冬樹蛉 | 2006年10月19日 (木) 23時53分

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