アレクサンダーも酒樽の栓になる
知り合いが mixi の日記で紹介していたブログ『特殊清掃「戦う男たち」』を、吸い込まれるように読み耽ってしまった。自殺・孤独死・事故死・殺人・焼死・溺死・飛び込みなどの遺体処置から特殊清掃・撤去までを仕事としている人たちの生々しい記録である。言っておくが、お食事中の人は、いますぐ読みにいったりしないほうがいいと思う。食事中でなくても、こういうのが苦手な人は自己責任でお読みください。
ずっと以前に『世界まる見え!テレビ特捜部』(日本テレビ系)で、アメリカの同じ仕事を取り上げたドキュメンタリーを紹介していた。世の中にはたいへんな仕事があるものだと感銘を受けたものだが、こうしてまさに手を汚して(!)仕事をしている人たち自身の想いが綴られているのを読むことができるようになるとは、ちょっとフクザツではあるが、そういう面ではたしかにいい世の中になったものだ。もっとも、彼らがますます忙しくなるような世の中になっているのも事実だが……。
「腐敗当時はウジも大量に発生したはずだが、みんなハエになって飛んで行ったのだろう、ウジ・ハエは一匹もいなかった。どこかに飛んで行ったハエは、またどこかの死体に卵を産んで、子孫を増やしていることだろう。そして、その子孫達と私はまたどこかの現場で再会するかもしれない」(「香りのソムリエ 原本悠」)などという件には、いたく文学的感動を覚えた。道化師ヨリックの髑髏に語りかけるハムレットのようだ。
「アンアンアン♪とっても大好き~どざえーもん~♪」などというタイトルを不謹慎だと思う人もあるだろうが、ちょっとしたユーモア感覚でもなければとてもやっていられない、せつない仕事なのだろう。「社会的にも認知されず、誰も誉めてくれないので、自画自賛するしかない」といった件もあるが、これは誰かがやらなければならない仕事なのだ。血も涙もある人間がやらなければならない仕事なのである。しかも、これからますます需要は増えてくる。こういう仕事の社会的認知を進めるという意味でも、価値あるブログだと思う。同じ会社の女性社員の方々が書いている『遺体屋の仕事』というブログもお薦め。
なにしろ、おれなんかはほぼ確実に独居老人になるだろうから、将来、この人たちのお手をわずらわさなくてはならなくなる可能性が高いのだ。できるだけ死骸をとっちらかさないように工夫をしておくつもりだけど、そのときはよろしくお願いします。
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コメント
一気に読んでしまいました。
昔、清掃関係の仕事をしていたので、凄惨な臭気等をおぼろげながら想像できてしまい、ますますもって頭を下げるしかない心持ちです。
以前から、公務員試験合格者(特に上級)には、一定期間、清掃関係の職務就任を義務づけるべだと思っているのですが、更にその意を強くしました(笑)
投稿: クレイン | 2006年6月 7日 (水) 01時40分
>クレインさん
>公務員試験合格者(特に上級)には、一定期間、清掃関係の職務就任を義務づける
いいですねえ。とくに清掃である必要があるかどうかは別として、なんらかのサービス業を体験させるべきだとはかねてから私も思っています。
サービス業としての自覚のないことおびただしい公務員には、しばしば不快な思いをさせられます。「いっそのこと、直に地域住民や国民と接するような公務員の仕事は、すべて国がマクドナルドにアウトソースしてはどうか」( http://web.kyoto-inet.or.jp/people/ray_fyk/diary/dr0204_3.htm#020423 )などと、私はマジで思っているくらいです。
それにしても、この特殊清掃の仕事は、「死者の奢り」どころじゃないですねえ。こういう仕事をなさっていると、人生観も変わるんじゃないかという気がします。やっぱり、公務員試験合格者(特に上級)には一定期間やらせるべきかなあ。
投稿: 冬樹蛉 | 2006年6月 7日 (水) 02時36分
死体処理は、ナレみたいですよ
海公安系公務員(女)がなれたらぜんぜんどうってことないって言ってました
公園ボランティアをしていると小動物の死体には
たまに、出くわすのですが長いことやってるおばちゃんは大抵あーあーって感じゴミ袋に突っ込んじゃいます
投稿: かおる | 2006年6月 7日 (水) 13時55分
>かおるさん
いやまあそりゃ、たいていのことに人間は慣れるでしょうけれども、こういうことに慣れなくならないというのは、やっぱり過酷な仕事だろうなあと思うわけです。
>公園ボランティアをしていると小動物の死体には
たまに、出くわすのですが長いことやってるおばちゃんは大抵あーあーって感じゴミ袋に突っ込んじゃいます
「長いことやってるおばちゃんを大抵あーあーって感じでゴミ袋に」と一瞬読めてしまい、驚きました。
投稿: 冬樹蛉 | 2006年6月 8日 (木) 02時11分