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2006年5月30日 (火)

究極の光学迷彩

「透明マント作れます」英の学者ら開発理論 (YOMIURI ONLINE)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20060526i307.htm

 英米の科学者らが26日、米科学誌サイエンス電子版に、「物体を見えなくする素材の開発は可能」とする論文を発表した。
 この理論を基に開発が進めば、小説「ハリー・ポッター」に登場する透明マントの作製も夢ではなくなりそうだ。
 光は普通、物体に当たって反射したり散乱したりするため、人間は物体を見ることができる。
 英セントアンドリュース大のレオンハルト教授らによると、光の進む方向を制御できる特殊な微細構造を持つ複合素材を開発できれば、川の水が丸い石に妨げられず滑らかに流れていくように、光が物体を迂回(うかい)して進む。
 この場合、人間の目には、そこには何もないように見え、影もできない。
 教授らは、手始めに特定の波長に対する“不可視性”を持つ素材の開発に挑むという。透明マントが実現すれば、軍事技術として利用できるため、研究は米国防総省が支援している。

It’s magic: science gets closer to creating the Invisible Man (The Sunday Times)
http://www.timesonline.co.uk/article/0,,2087-2200466,00.html

Pendry suggested such a material could be coated onto warships and tanks to make them invisible — although their wakes and tracks might give them away once they moved. “We know cloaking can be done with radar waves. Light waves are another form of electromagnetic radiation, so making a material capable of cloaking against light should be possible within a decade,” he said.
Pendry’s project is one of several around the world experimenting with invisibility. Astronomers at St Andrews University last week published a similar theory to Pendry’s but one derived from different research originating in the study of black holes.
At Tokyo University, researchers have used a much more low-tech system involving cameras and projectors to collect images from behind an object and then project them onto its front.

Scientists may be able to make magic like Harry Potter (CNN)
http://edition.cnn.com/2006/TECH/05/25/invisibility.cloak.ap/index.html

Such a cloak does not exist, but early versions that could mask microwaves and other forms of electromagnetic radiation could be as close as 18 months away, Pendry said. He said the study was "an invitation to come and play with these new ideas."

(中略)

While Harry Potter could wear his cloak to skulk around Hogwarts, a real-world version probably would not be something just to be thrown on, Pendry said.
"To be realistic, it's going to be fairly thick. Cloak is a misnomer. 'Shield' might be more appropriate," he said.

 こういうことが可視光線でも十年以内に可能だとか、マイクロ波などの電磁波でなら十八か月もすれば初期バージョンが作れそうだとか、ものすごいことを言ってるが、ほんとにできたら面白いなあ。もっとも、夢のある話とはほど遠く、当分は兵器にしか使われないだろうけどねえ。

 素人考えだが、このような複合素材が開発できたとしても、電磁波の周波数帯に、ある程度の幅で特化しそうな気がする。つまり、可視光線に対して透明になるようにチューニングすると、マイクロ波に対しては透明でなくなるといった具合にだ。上の記事で「川の水が丸い石に妨げられず滑らかに流れていくように」電磁波が迂回するという比喩を用いているが、水流の持つエネルギーが異なれば、必ずしもいつも滑らかには流れないんじゃないかと想像するんだな。

 この新種の光学迷彩、案外、簡単に破れそうな気もする。この複合素材の中では、結果的にあたかも素材が透明であるかのようなふるまいを光子にさせるために、きわめて緻密な制御をすることになるのだろう? そうした制御は、重力場によって空間そのものを曲げでもしないかぎり(サンデータイムズの記事によれば、ほんとにその種の研究をしている人もいるようだ)、電磁相互作用によるものでしかあり得ないだろう。だとすれば、可視光線に対して透明になっている状態の“透明マント”(“マント”というより“盾”とでも呼ぶのが適当だとのことだが)に、出力の大きな電磁波を浴びせてやれば、内部の電磁相互作用に乱れが生じて、光子をうまく制御できなくなるはずだ。人間の目で見たら、隠している物体のあるあたりが、ちょうど陽炎のように揺らいで見えるかもしれない。

 あっ、そうか! ネロンガは、この“透明マント”と同じ原理で透明になっているのかもしれないぞ。だから、電気を食っているときにだけ、可視光線が制御しきれずに姿を現すのだ。そうだ、そうにちがいない。四十年も前に現代の最先端科学技術を身につけていたとは、なんという先見的な怪獣だ。

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コメント

それにしても、軍事上ならともかく民生用には「透明になること」にいったいどのような意味があるのでしょうか。
デフォルトの「女湯を安全にのぞける」をはじめとして、
・違法駐車の車両を透明にしておけばつかまらずに済む。
・洗濯物を透明にすれば、マンションのベランダに干しても美観を損ねない。
・ゴミ集積所を透明にすれば(以下同文)
想像力が貧困なせいか、どうも有効な利用方法を思いつきません。

そういえばSFでも「透明人間」をモチーフにしたものは、アイデアが有名なわりにそれほどバリエーションがありませんね。

投稿: いかなご太郎 | 2006年5月31日 (水) 00時43分

>いかなご太郎さん
>民生用には「透明になること」にいったいどのような意味があるのでしょうか

 う。た、たしかに(^_^;)。

 でもまあ、透明になれたら、女湯をどうこうという下世話なことよりも、とても精神的に落ち着くような気はしますね。自分の部屋で独り透明になってじっと音楽を聴いていたりすると、気が楽なような気はします。ある種の心理療法には使えるんじゃないかなと……。

投稿: 冬樹蛉 | 2006年6月 1日 (木) 02時24分

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