水底二万ヤード
▼池に落ちたゴルフボール、潜水服着て盗む 容疑の男逮捕 (asahi.com)
http://www.asahi.com/national/update/0509/SEB200605090001.html
山口県警美祢署は9日、ウエットスーツと空気ボンベを身につけてゴルフ場の池に潜りゴルフボールを盗んだとして、同県下関市豊浦町室津下の靴販売業広田才麿容疑者(51)を窃盗の疑いで逮捕した。容疑を認めているという。
調べでは、広田容疑者は9日午前0時半ごろ、同県美祢市於福町上のゴルフ場に侵入し、コース内の池(深さ1~2メートル)に潜り、ゴルフボール計651個(時価3万2550円相当)を盗んだ疑い。付近を巡回中の署員がゴルフ場から車で出てきた広田容疑者に職務質問し、車内に大量のゴルフボールがあるのを見つけた。「自分が使うつもりだった」と供述しているという。同署では転売する目的があったとみている。
池に落ちて拾われなかったボールの所有権はプレーヤーが放棄したとみなされ、ゴルフ場に移る。
ご苦労さまと言おうかなんと言おうか、こんなマンガみたいなことを実行するやつがいるんだねえ。犯罪は犯罪なのだろうけど、なんか努力を買いたい気もするよな。
考えれば考えるほど、謎が多い。まず、この男は潜水用具を最初から持っていたんでしょうな? この犯行のためにわざわざ道具を揃えたんだったら、元が取れるとは思えない。池の底に沈んでいるたくさんの五十円玉を、これだけの手間をかけて拾い集めたのと同じってことだよねえ。何時間くらいかかったのだろう? 小さな池の底にびっしりと沈んでいるのなら、あんまり探す手間は要らないとは思うが、一分に十個拾ったとしても、一時間はかかるわなあ。ましてや水中でのことだ。想像以上の重労働なんじゃなかろうか? この六百五十一個のボールは、今回の犯行一回で拾い集めたのだろうか? 何度も通ってきて、車の中に溜めておいたのだろうか? 一回でこれだけの収獲があったとしたら、時給三万二千五百五十円だ。そう考えれば、ワリのいいバイトではある。
これだけの根性と技術があるのなら、忍び込んで盗むなんてことをしないで、ゴルフ場と正式に契約し、一個二十五円でゴルフ場に買い取ってもらう商売としてやればいいのに。一時間に一万六千二百七十五円が堂々ともらえるうえ、また池の底にボールが溜まったら、その都度継続的に収入になる。こんなもの好きもあんまりいないだろうから、商売敵もそう簡単には出現しないだろう。有名プレーヤーの銘の入ったボールなら、オークションなどで売ってもいいだろう。もっとも、六百個ほどもボールが溜まるのに何日くらいかかるかが問題だが……。乱獲(?)すると、ボールがすぐ絶滅危惧状態になってしまう。
「深さ1~2メートル」の池ってのも腑に落ちない。だったら、空気ボンベなどというたいそうなギアを用意しなくても、シュノーケルと水中眼鏡だけでも充分ボールを集められそうなものだ。少し時間はかかるかもしれないが、原価が安上がりである。深夜とはいえ、万一、人がやって来たときに潜ってやりすごそうと思っていたのかな。
なんにせよ、あちこちで模倣犯が出ないか、ちょっと興味がある。アホらしくて模倣したくないって? だよなあ、おれも模倣したくない。模倣犯を防ぐには、ゴルフ場の池をうーんと深くしておけばよい。水深一万メートルくらいあったら、意外性があって面白いだろう。潜れども潜れどもボールが現れない。深く潜りすぎると、帰路の空気がなくなって、途中で溺れ死ぬ。これは効果的な防犯にちがいない。
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コメント
テレビで観たとき、中古品を買い取る業者の話が出ていたけれど、汚れや傷があったら1個1円くらいにしかならないそうで、総額5000円もいけば好い方だとか。
あまりにも費用対効果の点で計算が合いませんね(苦笑)。
投稿: オオカミ | 2006年5月11日 (木) 23時34分
水深1万メートルじゃゴルフボールが圧壊しますね。
「へえ、ゴルフボールって水に沈むんだ」と思って計算してみたら比重1.1くらい。池を濃い塩水にすれば浮くかな?
ボールの規格をちょっと改定すれば水に浮くのに、そうしないのはゴルフボール会社の圧力がかかっているせいで、ゴルフ界の宿痾、暗黒面と囁かれていたりするんでしょうか。
投稿: 野尻抱介 | 2006年5月11日 (木) 23時50分
>オオカミさん
>汚れや傷があったら1個1円くらいにしかならないそうで
ひょえ~、それはまたなんと……。♪ホントニホントニホントニホントニ、ゴクローサン
>野尻抱介さん
へー、“かろうじて沈む”程度なんですねえ。ゴルフ場の池って、水の出入りのないただの“水たまり”なんでしょうか? もしそうだとしたら、ゴルフ場に行く人がみな粗塩をひと袋ずつ持って行って池にぶちまけてゆくことにすれば面白いかも。ある日照り続きの夏の日、いっせいに浮かび上がってくるゴルフボールの図……ってのはけっこうSFです。
投稿: 冬樹蛉 | 2006年5月12日 (金) 01時33分
この手のロストボール漁師は結構いるようで、これまでにも、ドライスーツ(サルベージ屋とかの使うヤツ。海底二万マイルに出て来るみたいないわゆる「潜水服」だよ)を着て、エンジン付きの送風機とスーツをホースで繋いで錘りの付いた靴を履いて、「仕事」していて、そのままエンジン不調とかで空気の供給が止まったまま。
朝になってキャディーさんとかが「変な機械がある」ってんでホースを引き上げてみると……。という、二時間ドラマの劈頭イッパツ目の事件みたいな事が、ホントにあったらしい。
コルフ場としては、客商売だけに「無かった事」にしたいんだろうけどネェ。
投稿: 神北恵太 | 2006年5月12日 (金) 05時45分
>“かろうじて沈む”程度
ではないでしょう。
ルールでゴルフボールの直径は42.67ミリ(1.68インチ)以上、重さは45.93グラム(1.62オンス)以下と決められています。
球の体積は4/3πr**3ですから、ざっと40.66立法センチ以上となります。つまり、ゴルフボールの比重は水より一割以上大きいです。
ロストボールはゴルフ場の隠れた余禄らしく、神北さんがいうようにボール泥棒とその摘発はけっこう多いらしいです。
投稿: 東部戦線 | 2006年5月12日 (金) 21時50分
打ちっ放しだと水に浮く専用のボールを使って池に向かって打たせるところがありますよね。比重が違うと打つ感覚が狂わないのか心配ですが。
投稿: 鍵 | 2006年5月13日 (土) 10時20分
>神北恵太さん
なんか、ゴキブリホイホイみたいですね。「ゴルフ場の池に潜ってボールを取るのは、とても儲かるらしい」みたいなことをバカなやつに吹き込んで、のこのこ取りにいったそいつを、事故に見せかけて殺すなどというミステリもアリかも? 説得力のないトリックやなあ。
>東部戦線さん
うーん、じゃあ、塩作戦はダメみたいですね。そういうことだと、ゴルフ場の裏収入を確保するためにボールの仕様をそのように定めているのかもという推理も、まったくあり得ないことでもなさそうですね。どう考えても、水に浮かんだほうが便利だと思うんですが。
>鍵さん
そういう専用のボールがやっぱりあるんですか。たしかに、重いボールと感覚がちがうんじゃないかと懸念されますが、そういう商売があるんなら、少なくとも素人にはそんなに影響ないのかもしれませんね。
あるいは、ゲームはしないけど、ストレス解消に打ちっぱなしは楽しむという人も少なくないらしいので、「ここで練習しても、実戦とは感覚がちがいますから」と割り切ってもらうことを前提とした娯楽施設なのかも。
投稿: 冬樹蛉 | 2006年5月14日 (日) 09時52分
死海クラスの塩水であれば浮くと思いますが。
でもボールが水に浮いちゃうと、水中のボールを打ち出すのにチャレンジするというゴルフ漫画的に美味しいシチュエーションが作れなくなるので、個人的には浮くボールは却下と言うことで。
投稿: おおじじ | 2006年5月15日 (月) 00時55分
>おおじじさん
浮いてるボールを叩き出すほうが、猿も見せ場が作れますよ(;^_^)/。
投稿: 冬樹蛉 | 2006年5月16日 (火) 01時45分
遅レスですみません。
ウォーター・ハザードには池のほかにクリークというのもあります。水が流れている場合、ボールが水に浮くと相当面倒なことになるかと。
流砂でできたバンカーなんてのがあっら、さぞ面倒だろうなぁ。
投稿: 東部戦線 | 2006年5月16日 (火) 11時58分
>東部戦線さん
>ウォーター・ハザードには池のほかにクリークというのもあります
なるほど。やっぱりボールが浮くと不都合ですか。
黒いバンカーだなと思ったら、人食いアリがみっちり敷き詰められたハザードだったりして、こういうのはバイオハザードと呼ぶべきか呼ばざるべきか迷ったり。
投稿: 冬樹蛉 | 2006年5月21日 (日) 02時31分