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2006年4月20日 (木)

京都は誰が守るのか

京都中心部、建物の高さ制限45→31mに…市長方針 (YOMIURI ONLINE)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060419i116.htm

 京都市の桝本頼兼市長は19日、市中心部の建物の高さ制限を、現在の最高45メートルから、31メートルに見直す方針を明らかにした。
 三方を山に囲まれた京都の景観を守るには低層の街並みの維持が必要と判断した。
 ビルでは10階建て程度にあたり、市は「都心部でこれほど厳しい高さ制限は全国的にも珍しい」としている。
 見直すのは、中心部の中京、下京両区内にある御池、四条、五条、河原町、烏丸、堀川の6つの幹線道路沿い。これらの道路に囲まれた地域などは「木造2階建ての京町家が多く、京都の生活文化を伝える特徴的な地区」として現行の最高31メートルを15メートルに引き下げる。

 こ、これはたいへんだ! ここを読んでいるような人であれば、七人に四人くらいは、なにがたいへんなのかすでに薄々察していらっしゃるであろう。

 そう、とうとう初代ウルトラマンも京都では景観を損ねずには闘えなくなってしまうのである。

 あれやこれやと何人もいるウルトラマンたちのうち、まあ、ウルトラマンAくらいまでは、だいたい四十メートルくらいの身長だったのだが、日本の建物の高層化に伴って、徐々に大柄なウルトラマンじゃないとサマにならなくなってきて、平成ウルトラマンたちは概ね五十メートル前後である。こういう現象は、ゴジラにもガメラにもある。今回の高さ制限の見直しによって、小柄な初期のウルトラ兄弟たちも、とうとう規制に引っかかることになってしまった。

 それにしても三十一メートルというのは厳しい。これで、京都を守ってくれるヒーローの選択は、かなり難しくなったと言えよう。マジンガーZ(十八メートル)やグレートマジンガー(二十五メートル)くらいが京都では手ごろな大きさだろう。とくに厳しい地域では、マジンガーZだってダメなのだ。

 怪獣や悪玉ロボットたちのほうはコンプライアンスなどおかまいなしにちがいないが、ヒーローはそういうわけにはいかないのだ。子供たちの手本なのだ。おお、そうだ! 鉄腕アトムがおったではないか! これで京都も安泰だ。

 「しかし、なぜ三十一メートルなどという半端な数字なのであろうか」と、たいていの人は訝るであろう。べつに半端ではないのだ。この基準を定めた京都の景観を愛する人は、ほんとうは平屋建てしか許さないことにしたかったので、「1Fを限度とする」とした下書きを部下に渡して書類を作成させたのだが、たまたまコンピュータおたくだった部下が、「これでは一般の人にわかりにくいだろう」と余計な気を利かせて、十六進数を十進数に換算したのである。ゆめ疑うことなかれ。

 ちなみに、コンピュータおたくであるこの部下は、当然のように数字はゼロから数える。彼は空き地を見ると、「0メートルの建物が建っている」と考えるのである。さらに彼の頭の中には、“空き地ですらない空白の土地”という奇妙な概念が“空き地”とはまったく別に存在し、それが物理的にはいったい全体いかなる状態の土地を指すのかおれにはうまく思い描けないのだが、どうやら彼は、リンゴとミカンがちがうくらいに、それらをはっきりとちがうものと認識して生活しているらしい。世の中にはいろんな人がいるものだ。

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