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2006年4月21日 (金)

夕暮を迎えつつあるいま

 エロ姐さん、杉本彩『エロティックス―私のカラダを熱くした官能文学名作選』というアンソロジーを出したそうなのだが、ラインナップを見てみると、おれが読んだことがあるのは、吉行淳之介『夕暮まで』と谷崎潤一郎「刺青」くらいであって、やっぱりおれはSFだよなあ、彩姐さんにはかなわんなあと思う。

 吉行淳之介ならおれは相当読んでいるぞ。最も好きな作家のひとりだ。だが、『夕暮まで』が「私のカラダを熱く」するような官能小説かどうかということになると、首を傾げざるを得ない。女性は感じかたがちがうかもしれんけどなあ。吉行淳之介は、逆立ちしても官能小説家じゃなくて、非常に緻密かつ分析的で、おれは一種の“ハードSF作家”として読んでいるくらいだ。ハードSFと言って悪ければ、“感情の実験小説”という感じだ。『夕暮まで』が、「夕暮族」という流行語まで生んだセンセーショナルなベストセラーだったということは、若い人は知らないかもしれない。今読むと新鮮かもしれない。おれ自身が、すでにそろそろ夕暮族になれる年齢になっちゃってるのは、感慨無量である。いや、ならない、というか、なれませんけどねー。

 いわゆる“エロ小説”と“官能小説”とは、似て非なるものだと思うんだよな。そういう意味で新潮社は、品格を落とさずにエロを打ち出すにあたって、杉本彩というトリックスターを持ってくるとは、なかなかに商売上手だなあと思うのである。

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