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2006年4月 2日 (日)

論理的な男

女性を殺人未遂容疑、出頭の男逮捕 川崎・小3転落死
http://www.asahi.com/national/update/0401/TKY200604010237.html

 「新聞を見て、捕まると思った」……妥当な推論だ。
 「殺したかったから投げ落とした」……妥当な推論だ。
 「最上階の15階から人を落とせば殺せると思って行った」……妥当な推論だ。
 (2人の被害者には)「申し訳なかった」……妥当な反応だ。

 この男は、なにもおかしなことを言ってはいない。おれたちSFファンにとっては、この男の反応は、じつに馴染み深いものである。ステロタイプの人工知能の受け答えにそっくりだ。推論自体はまちがっていないのだ。唯一、おれたちと前提条件を共有していないだけである。動機については、本人が「私もよく分からない」と話しているそうだが、あんたにわからんものはおれたちにもわからないよ。

 おれは、生物というものを、人間も含めて、とてもよくできた貴重な機械だと思っているが、この男は、日常会話に於ける慣用表現的な意味で、まるで機械のようだ。お粗末な機械である。どういうプログラミングを施されるとこういうふうになるのか、非常に興味が湧く。

 息子を機械に殺された両親は、こうした供述(というか、音声出力)を聞いて、どんな思いをしていることであろうか? いまこうしているあいだにも、こんなプログラムを内蔵したロボットたちがどこかで大量に生産され、ザッザッザッと足並みを揃えておれたちの社会へ続々と“出荷”されている不気味な光景が、とてもリアルに浮かばないか?

 もっとも、おれ自身がそうしたロボットたちの一体であることが、おれにはわかっていないだけなのかもしれないのだが……。

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コメント

この男性は昨年、店長を務めていたカーテン販売店の店内で感電し、それ以来、折に触れて「ヴォミーサ」とつぶやくようになっていたとか…。

投稿: いかなご太郎 | 2006年4月 2日 (日) 03時12分

 じつは高校3年間クラスが同じだった友人で、同じ同姓同名の奴がいて、そいつだったらどうしようかと思ってました。結局別人でしたが。卒業から20数年、何かのボタンのかけ違いで人が機械になってしまったのかという、恐怖をちょっと感じてました。

投稿: 林 譲治 | 2006年4月 2日 (日) 15時00分

実はこういうやりとりだった可能性はないのでしょうか。
取調官:「新聞を見て、もう逃げられない、捕まると思ったから出頭したのだな」
容疑者:「はい」
取調官:「被害者に面識がなかったということは、単に人を殺したかったから投げ落としたということになるが」
容疑者:「はい」
取調官:「最上階の15階から人を落とせば当然その人は死ぬはずだが」
容疑者:「はい」
取調官:「被害者には申し訳ないと思っているのかね」
容疑者:「はい」
まさか先進国の治安をつかさどる官僚組織が、そのような意味のないことはしないと思いますが。

投稿: いかなご太郎 | 2006年4月 2日 (日) 20時39分

 あ、いけね、上の記事で「私もよく分からない」と言っているのは、警察の人ですね。あまりのことに目が滑ってしまいました。

>いかなご太郎さん
>ヴォミーサ

 三原則が裏返っているとしても、この男はちょっとおかしいですね。三原則がねじれてしまったのか……。

>まさか先進国の治安をつかさどる官僚組織が、そのような意味のないことはしないと思いますが

 ないとは言えないところが、なんともですねえ。それにしても、そんなにある名前じゃないと思うんですが、確率というのは面白いものです。

>林譲治さん

 別人でよかったですね。

投稿: 冬樹蛉 | 2006年4月 3日 (月) 02時15分

>>ヴォミーサ
>
> 三原則が裏返っているとしても、この男はちょっとおかしいですね。三原則がねじれてしまったのか……。

ご指摘どおり、たしかに裏返った第3条に違反しています。
きれいに裏返っていたならば、女性を投げ落とすことに失敗した時点で、彼は15階から飛び降りていなければなりませんね。

投稿: いかなご太郎 | 2006年4月 3日 (月) 11時24分

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