『ホーキング、宇宙のすべてを語る』(スティーヴン・ホーキング、レナード・ムロディナウ/佐藤勝彦・訳/ランダムハウス講談社)
去年の秋に出た本だけど、ちびちびと半端な時間に読んで、やっと読み終えた。「宇宙のすべてを語る」とは、どえらく大きく出た邦題だが、原題は A Briefer History of Time 、つまり、十数年前のベストセラー『ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで』 A Brief History of Time を、さらに簡潔に、また、最新の知見を反映させて、一から語り直しているものである。「前のも読んだが、あれでも専門的すぎてわかりにくかった」という方にはおすすめ。今回はサイエンスライターとの共著なので、リーダビリティーはぐんと上がっている。
一般読者向けに読みやすく、しかし、深みを損ねないように(簡単に説明することで本質を曲げてしまわないように)現代物理学・宇宙論を語っているので、科学に関心のある文科系読者が自分の知識を整理するのに持ってこいである。最初のうちは、「なんだ、ほんとにほんとの初心者向けだなあ」と思っていたけれど、読み進むうち、「ああ、こういうふうにも言えるのか」と理解が深まったことがいくつかあった。
どうもスティーヴン・バクスターやらグレッグ・イーガン
やらの小説が苦手だという方も、物理や宇宙について本書程度の大枠の知識を持てば、ハードSFがぐんと面白くなるにちがいない。SFを電卓で計算しながら読むような理科系読者には、あきらかにもの足りないと思うけれど、門外漢にイメージを伝える説明のしかたの参考にはなるんじゃなかろうか。
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