遡及効果
今朝、開口一番に母が言った。
「昨日の晩、○○さんからもろうた漬けもんが冷蔵庫にあるのを、言うの忘れてたわ」
べつにおれは漬物にさほどの興味はないが、一応、訊いてみた。「なんの漬けもんや?」
「ミョウガの漬けもんや。私はミョウガ食べへんしなあ」
おれは爆笑した。おのれの存在そのものを忘れさせてしまうとは、ミョウガおそるべし。
ミョウガを食うともの忘れがひどくなるというのはあくまで俗説だろうけれども、“ものすごく強力なミョウガみたいな食いもの”ネタで小説が一本書けそうだよなあ。
じつはこの地球上には、「 」という食いものがあるのだ。ところが、そんな食いものが存在することを誰も一秒たりとも憶えていられないほど強力な催忘効果(?)があるため、そんなものは存在しないものとして世の中が回っている。といっても、それは取るに足らない食いものではなく、微量ながら人間が生きてゆくために必須の未知の栄養素を含んでいるのだった。さて、その食いものは、いったいどうやって流通し、人々の食卓に“人知れず”のぼり、口に入っているのか……みたいな、哲学的なドタバタになるかもしれないが、一念発起して書いてもすぐ忘れ去られそうな気が激しくするので、むろん書く気はない。
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コメント
実は、書く気満々だった時の記憶を忘却している?
投稿: 神北恵太 | 2006年1月13日 (金) 18時05分
>神北恵太さん
よく考えてみると(よく考えなくてもそうですが)、“忘れた(忘れている)ことを記憶していない”というのが、人間の欠点だと思いますねえ。「いや、私は幼稚園の先生の名前を忘れたことを記憶している」という人は、そりゃ、幼稚園の先生の名前に関する記憶を保持しているだけで、忘れたことを憶えているわけではない。コンピュータ(というかデータベース)なら、“忘れたことを憶えている状態”と“完全に跡形もなく忘れた状態”が区別できるのにね(^_^;)。
投稿: 冬樹蛉 | 2006年1月15日 (日) 00時52分