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2006年1月25日 (水)

米食う人々

 例えばの話、突如、異常プリオンを含む米が出現し、あちこちで米が狂って(?)枯れてゆく“狂米病”が報告されるようになったとする。もちろん、狂米病に冒された米を食うと、そのうち変異型クロイツフェルトヤコブ病になるのである。なぜか収穫から一年以上経った米には狂米病は見られないので、一年未満の米でないと流通させてはならないということになるのだが、そこはそれ、いくら決まりを作っても破るやつがいるのは世の常であるから、当然、一年未満の米もいくらかは出回ってしまう。どうやらそれで儲けているやつらもいるらしい。その事実が発覚し世間は大騒ぎになるけれども、一年未満の米と一年以上の米を厳密に弁別する技術が、ほどなくアメリカで確立される。だが、困ったことに、いっぺんに検査する方法はなく、一粒一粒、その検査法で調べなくてはならないのだ。

 さて、こんなことになったら、日本人はどうするだろう? 政府はどうするだろう? どうも見て見ぬふりをするような気がしてならないのよな、おれは。毎日食っているあまりにも馴染み深いものに容易に避けがたい危険が潜んでいるなんてことになったら、問題のあまりの大きさに、「できるだけそれは考えないことにしよう。人間、交通事故に遭ったりもするわけだし、なにも狂米病ばかりに神経質になることはない」といった方向に世間が進んでゆくような気がする。

 諸外国は日本の輸出米にアメリカの検査法による“全粒検査”を要求してくる。日本政府は「熟練すれば、見ただけでわかる」といけしゃあしゃあとのたまい、目視による全粒検査を行なっているだけのことを大仰に「科学はわれわれの側にある」とふりかざし、諸外国に米の輸入を迫る。じつのところ、見ただけじゃおおざっぱにしかわからないうえに、検査官たちは居眠りしながら適当にやっているのだ。「安全だから食え。おれたちなんか毎日食っている」というわけのわからない理由で、日本は執拗に米の安全性を強調する。日本人が毎日米を食っているのは、絶対安全だと思って食っているのではなく、正直なところ、食わなきゃしかたないから食っているにすぎないような気もするのだが、ほんとうのところは、自分たちにもよくわからないのであった。安全だと思っている理由が自分たちにもわからないくらいだから、諸外国にわかろうはずもない。

 狂米病なんてものが出現しないことを祈るばかりだ。

 ま、おれはアメリカの牛肉食うのは厭だけどね。

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コメント

 日本は米国だから、食えといわれれば飲まざるを得ない……。

投稿: 林 譲治 | 2006年1月25日 (水) 11時13分

>林 譲治さん

 外米を食ってくれとか言ってた年がありましたよねえ。みんなあんまり食ってたようには見えませんでしたが。うちの母なんぞ、「外国の米など米じゃない」みたいな調子で、ひたすら日本の米にこだわっていました。

投稿: 冬樹蛉 | 2006年1月27日 (金) 00時04分

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